キ ミ に 傘 を 貸 そ う 。
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2006年09月30日(土) |
守りの体勢に入らない。 |
Jの進もうとしている道は、おそらくとても険しくて 将来成功できる保障なんてどこにも無い。
でもお金なんて要らないから、 なんでもいいから作品が作れればそれで良いって、 彼はそんな風に言っている。 そんなJが私はずっと好きだったし、 彼が作る芸術作品をずっと見守り続けたいと思ってる。
この先どんな事が起こっても もし私がJの彼女じゃなくなっても Jの1ファンとして、Jを見守りたい。 こんなこと、もう何年も言っているんだろうか。 私の願いは変わらない。
どうか私だけではなく、Jの作品を愛してくれる人がたくさん居ますように。 明るい未来が待っていますように。
今まではどんなに辛くても一人で、それが普通で 疲れた日にはどんな風に過ごしていたんだっけ。 もうあまり思い出せない。 きっとつまらない消化日記(ここではないけど)ばかり書いて、 その日の苦しさを発散させていたのだと思う。
ここ連日、自分のペースを守れなくて、 自分の領域を他人に壊されて、でもそれが仕事なのだと自分で消化して 次の日の研究会や会議の予定を見るだけで 苦しくてしょうがなかった。
毎日誰かに試験されているような気分だ。 社会人になれば、きっとこれが普通なのだと思う。 そう思うと余計に不安が目に見えるように大きくなって 一人では抱えきれなくなる。 「甘ったれ大学生」なのだと自分を責めるけど どんなに責めても自分を許せない。
ふとPCを繋いで、いつものようにJに電話をかける 「はる。」と名前を呼ばれた瞬間に、私は泣きそうになる。
私も君の名前を呼んで、呼んで、呼んで、 でも今日の嫌な事も昨日の嫌なことも、明日の嫌なことも 具体的には話さない。
私の嫌なこと 君にまで押し付けたくない
君は君の明日を、どうか生きて欲しい。
君の作品達が、世界中の人に愛してもらえる日を 私は心の音が聞こえなくなるまで、ずっとずっと待っているから。
Jを束縛したいとは思わない。 それは、私が束縛されたくないからだろうか。 深い理由などそれほど考えない。
私があまりにも縛らないので、Jは 「放し飼いにされている気分。もう少し束縛してもらいたいくらい。笑」 と言う。 「束縛したくないから。」 と正直に答える。 彼は彼の時間の中で生きて欲しい。
ちょうど良い機会があって、一昨日、昨日はJと会うことができた。 よく、恋人達は「一分一秒でも彼と長く居たい。離れたくない」と思うみたいだけど 私はJに対して、そこまで熱く思わない。 (もちろん、Jの事は大好きなのだけれど)
わざと、そういう事を考えないようにしている。 駅のホームで別れるのが辛いから。 感情を押し殺しているのか、本当に哀しくないのか自分でも分からない。
「ばいばい、またね。」 とまた握手をする。 手を離したあとも、ずっと繋いでいた手の感触が残る。
電車が発車する。 二日間一緒に居たことを思い出す。 彼はずっと笑っていた。 彼はよく私の名前を呼んだ。 私を呼ぶ声が頭の中を駆け巡る。
私のことを、あんなに想ってくれる人は居るだろうか。 今まで居たのだろうか。 これからもそんな人が現れるのだろうか。
未来はどんな未来だろう。 私は誰と居るのだろう。
Jが過去になることはあるのだろうか。 Jが私を振ることはあるだろうか。 私がJを振ることはあるだろうか。
いくつもの道。 いくつもの不安な道。 いくつもの幸福な道。 私はどこに行き着くのだろう。
今分かることは Jの代わりはどこにも居なくて こうやって駅で別れると哀しくて 結局哀しくて少し泣いてしまうということだ。
『好きだよ。』より 『好きやで。』って言って欲しい。 単なる私のわがままだけれど。 久しぶりに『好きやで。』を聴けた気がする。
ごめん。私は悪い女だから、君の顔より声が好き。 声を聴いてる時が幸福。 でも電話じゃ物足りない。逢いたいと思ってしまう。 罪深い、嫌な女なのだ、私は。
Jが私に抱く想いは、私がJに抱く想いと違う。 そんなことは当たり前。 私はそれで良いと思う。
物事に対する感じ方が、私とJはまるで違って きっと世間はそれを「価値観の違い」と呼ぶのだろう。 でも今はそれが愛しい。 私が「嫌だ」と感じることも、Jの目を通すと「優しい」ものになったりする。 全てを浄化してくれる。 何故? 私の悪いところも、Jを通せば「好き」になってしまう。 これは恋なのか、愛なのか。 もしかしたら病気なのか。
何故かJと鬼ごっこの話になった。 私が『私は絶対に鬼がいい。』というと、Jは『はるは優しいなぁ。』と言うのだった。 最初は意味が分からなくて「?」だった。 Jは、『俺は、鬼は絶対に孤独だと思う。』と言った。 Jは私を勘違いした。 私が、他の誰をも孤独にしないように、自分から鬼になると言ったのだと思ったのだった。 私は、「そんな綺麗な感情で『鬼になりたい』なんていったんじゃないよ」と訂正した。 それでも彼は私に幻滅なんかしない。 のろけている訳でもなく、なんだかこういう状況がとても不思議に思えた。
無理な話だけど。 一回、君の目になって世界を見てみたいよ。
『アホか。』
『なんやねん。』
『こいつ。』
Jが笑いながらそう言う。 その言葉全てが好きだ。 一時的に熱が高まっているのではなく、冷静に彼が好きだ。
Jと付き合い始めて、まだ1ヶ月と少ししか経っていないのに 何だかもう1年以上も付き合っているような気がしてしまう。
「いつから彼のことが好きなの?」 と言われたら、
「5年前から。」 と私は答えたいに違いない。 彼の言葉を初めて聴いたその瞬間から、私は彼が好きだった。 きっと。あの頃の私を、まだ私は少し覚えている。
ときどき、思う。 もしかしたら、私は「初めての恋人」という存在に酔っているのではないだろうか?と。 だから、Jじゃなくても、私を抱きしめてキスしてくれる人が現れたらそれで満足してしまうのではないか?と。 そんな愚かなことを考える。
でも冷静に考えても、やっぱり彼が好きだった。 良かった。私は彼以外に抱きしめられても、きっと胸が苦しくなったりしないし、彼以外のキスはきっと嫌なのだ。 「きっと」が多いけれど。 人間の感情なんて曖昧なものばかりだと思うから。 思い込むか思い込まないか、ただそれだけの気がする。
Jと話すと落ち着く。 私はJを5年前から知っているけれど、それは彼のほんの一部でしかなく 今でもきっと、Jをあまり知らないのかもしれないけれど。 本当の私をJはずっと見て来たと思うし、J以上に私を知っている男の人なんて居るのかな。
蓮は元気にしてるだろうか。 蓮の前で私は、どんな女の子だったんだろう。
ねぇ蓮、私は今、あの頃蓮が感じていた幸せを理解できるのかな。 君はまだ傷ついたまま、そこに居るんだろうか。
何故だろうか、パスタには不思議な思い出が沢山ある。 そしてそれはいつも、クリームパスタなのだ。
食事に誘われて、行くのが嫌で仕方なかった畑先輩とのデートでの夕食はクリームパスタだった。 苦しくてあまり食べられなかった。
高校時代のクラスメイトの裕君とデートしたときも、昼食はパスタだった。 サーモンのクリームパスタ。 結局裕君とは、あれから何も無い。 同級会で会ったとき、少し話した。 もしかしたらまだ裕君は私のことを気にしているかもしれないけれど、Jの存在を教えることは無かった。
Jと初めて会って「お昼を食べよう」ってなったときも、 なんとサーモンのクリームパスタだった。 私はとても一生懸命喋って、もうエネルギーが無くて、食べる元気もあまりなかった。 食べ切れなかったパスタを、Jが食べてくれた。
そしてつい先日も、Jと映画デートをしたあとにはサーモンのクリームパスタを食べた。
『男の子とデートをするとき、いつもクリームパスタだなぁ。』 なんて心の中で少し笑った。
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