五行日記
ガム



 感情の雫。

大きく口を開けて胸一杯に息を吸う。

わだかまりのようにうねる『あくび』をするために。

ため息よりもゆっくりと吐く息は

感情のない涙を伴って世界をぼやけさせる。

そこに感情を一滴垂らしたら、どんな波紋が広がるのだろう。

2005年06月30日(木)



 8時15分の真奈美。

その時間、彼女はいつも決まってそこでバスを待つ。

名前も行き先も知らない彼女に、僕は勝手に名前を付けた。

そして彼女の生い立ちについて、あれこれと想像してみた。

様々な物語がそこにはあって、職場に着くまでそれは続く。

僕的朝の連続テレビ小説。主人公は紛れもなく彼女だ。

2005年06月29日(水)



 焼肉シュノーケル。

肉の日には1日早いけど有志で焼肉を食べた。

なんだかんだ言っても仲間で囲むテーブルは楽しい。

少し自分を解放してふざけてみる。歌ってみる。

息苦しさを感じ始めていた環境に小休止。

明日からまた深く潜ることができそうだ。

2005年06月28日(火)



 ミルフィーユ・ライフ。

未来を食いつぶして今を生きる。

将来の後悔まで飲み込んだらもう怖いものはない。

守るべきものも置き去りにしたら一瞬にして過去のもの。

甘い考えという名のクリームを挟んで

積み重ねてきた辛酸が絶妙なバランスを保つ。

2005年06月27日(月)



 跳躍のための準備。

ブラインドから差し込む光で目が覚めた。

いつも同じようにやってくる朝なのに

目覚めるときに思うことは様々だ。

湿っぽい空気がまとわりついたように体が重い。

昨日の帰り際の会話が胸の中で暴れ回ってる。

2005年06月26日(日)



 あとひと味。

大根、牛蒡、人参、玉葱。

有り合わせの野菜で作った根菜スープ。

まあまあの出来だけど、何かあとひと味足りない気がした。

それが何かは分からずに最後まで飲みきったけど、

そんなふうな物足りなさは毎日のように感じている。

2005年06月25日(土)



 晴れたらいいね。

2〜3日出張しただけで机の上が書類で山積み。

ため息で全て吹き飛んでくれたらいいのにって。

でももし本当にそうなったら却って大変だなって。

何だかよく分からないこと考えてるな。

明日天気になれ。せめて頭の中だけでも。

2005年06月24日(金)



 ホームシックエイリアン。

こんなとこ住むとこじゃないと思った。

こんなとこで暮らせるほど強くないとも思った。

東京には来るたびそう思わせられる。

向かいに座った知らない誰かの背中を

色のない冷たい景色が流れていく。

2005年06月23日(木)



 抱えきれない夜。

独りで食事するには、その店は余りに賑やか過ぎた。

急かされるように食べ物を口に運んだ。

慣れない街で自分の場所を見付けられずにいる。

満たされたような腹と、穴が空いたような胸。

抱えきれない思いが東京の夜に溢れた。

2005年06月22日(水)



 旅で心の垢を落とす。

負荷のかかった筋肉が、

痛みを伴って一回り大きくなるように、

刺激を受けた心が、傷付きながら成長する。

そんな効果が旅にはあるようだ。

新陳代謝で剥げ落ちた心の垢が言葉になる。

2005年06月21日(火)



 時々。

自分に求められているものは何だろう。

時々わからなくなる。

時々そんなことを考えて答えを出せずにいる。

考えないのが一番なのかもしれないけど

僕でいる以上どうしても考えてしまうことだ。

2005年06月20日(月)



 太陽のせいじゃなく。

怖いくらいに天気がいい。

強い日差しに噴き出す汗。

当然のように焼ける額、首、腕、膝。

楽しんでもらえたのなら嬉しいけど

焼けた躰以上に心がヒリヒリしてる。

2005年06月19日(日)



 今宵の月のように。

のどが渇いて近くのコンビニまで散歩。

夜の散歩には今ぐらいの気温が丁度いいなと感じる。

帰り道でときどき顔を出す月を見上げながら電話をした。

近況報告、これからの予定、明日の約束。

よく分からない照れくささがドキドキ顔を出した。

2005年06月18日(土)



 賞賛の嵐。

足りないと思っていたリスペクトを手に入れた試合。

試合後は相手チームの監督からも握手を求められた。

「今日のゲームは全部君にやられたよ」と。

勝つことはできなかったけどゴールは許さなかった。

全てのシュートを弾いた掌に勝ち点1をしっかりと握った。

2005年06月17日(金)



 我慢のとき。

仕事関係の飲み会で上司から指摘される。

「お前、短気だろ?」って。

こっちに来てからおくびにも出してないつもりだったけど

時々表情に表れるらしい。

我慢我慢。今はまだ我慢のとき。

2005年06月16日(木)



 シングルライフ。

独りの部屋に戻ってシングルCDを聴く。

シングルのスーツを脱いでリラックスする。

買い置きのトイレットペーパーもシングルだ。

シングルベッドに仰向けになって明日を考える。

嗚呼なんて素晴らしいシングルライフ。

2005年06月15日(水)



 あばたもえくぼも。

確かにね、その時はそうだったよ。

その時は、そのあばたがえくぼに見えてたんだ。

でも今は違う。えくぼだってあばたに見えるんだ。

いや。正確に言えば、あばたもえくぼも見えない。

興味がないから何も見えてこないんだ。

2005年06月14日(火)



 数字の迷路。

「無理はするなよ」って言葉だけで手伝ってはくれない。

時間どおりに帰るみんなを尻目に数字の迷路に入り込む。

出口を探しながら、ふと前任者のことを考えた。

こんなことが続いたからいなくなったのかもしれない。

出口が見えてきたけど、もう少しここにいよう。

2005年06月13日(月)



 空に掲げる勲章。

試合毎に1本ずつ増えていく突き指。

無失点に抑えた試合はそれが勲章になる。

箸が巧く使えないことを除けば問題はない。

雨に打たれて熱も下がった。

雲の向こうの青空が見えた気がした。

2005年06月12日(日)



 熱が下がってからにしよう。

「きっといい人が現れるよ」と何の慰めにもならない言葉。

その言葉をくれた彼女も十分にいい人だけど。

そうなんだ。いい人は現れるけど、いい人は僕を選ばない。

その彼女を遊びに誘ってみたけどやっぱり空振り。

んー。今考えるのは止めよう。余計に熱が上がりそうだ。

2005年06月11日(土)



 何かの病気かもね。

喉が痛いわけでも、鼻が詰まるわけでもなく、

ただ昨日からなんだか体がだるい。

計ったら38℃の熱。だるいわけだ。

そういえばもう2週間続いてる腹痛はこの伏線だったのか。

医者に行くのはある意味怖いし、何より面倒で。

2005年06月10日(金)



 雲運ぶ微風、想い零す微熱。

今僕が見上げているこの雲が形を変えることなく

遠く離れた君のもとまで流れていけばいいと思うように

今僕が抱いているこの想いが誤解を受けることなく

実は近くにいる君に伝わってくれたらいいなと思う。

少し熱っぽかった頭の隅から零れた想い。

2005年06月09日(木)



 雲雀風船。

ときどき糸が切れた風船みたいに

ふわーっとどこかに飛んでいってしまいそうな自分がいる。

そこに留まりたいと思う気持ちとの綱引き。

宙ぶらりんの僕は空を舞う雲雀と同じ目線で考える。

彼らは何を見て何を訴えのるか、なんてことを漠然と。

2005年06月08日(水)



 呟きを閉じこめろ。

心の隅っこにある日の当たらない場所。

そのジメジメとした場所にそいつは住んでる。

そいつは僕にしか聞こえないような声で

僕が口にできないような酷く汚い言葉を呟く。

誰かに聞かれたらどうすんだって何故か僕が緊張する。

2005年06月07日(火)



 チーム1の葛藤と憂鬱。

さっきと同じ、指先に感触を残してネットを揺らすボール。

煮えくりかえるような悔しさが毛穴から吹き出す。

触ったのに止められなかったこと、3点とられたこと、

チーム1の走力とスタミナがあるのにキーパーをしてること、

頑張れば頑張るほど馴染んでしまうこと。

2005年06月06日(月)



 君のいる場所。

少し大袈裟に言えば、作りかけのジグソーパズルに

別のパズルのピースをぶちまけたような混乱。

僕は誰を想って、誰を想い続けるのか。

窓の外、パソコン、携帯、時計を何度も繰り返し見る。

辿り着いたのは一冊の絵本。

2005年06月05日(日)



 繋がり。

楽しかった昨日と今日を振り返る。

久しぶりに会った仲間たちと初めて会う人たち。

こういうのが繋がりになって僕らは大きくなる。

時にこんがらがりそうになるその繋がりに

期待したり不安になったり。

2005年06月04日(土)



 指定席。

こまちの隣の座席に座った人が誰であるか、僕は知らない。

アパートの隣人がどんな人であるかも同様に。

他人とはある程度の距離を保っていたいと思うけど

隣にいてくれる人も必要かなとも思える。

僕の隣の指定席は誰のために用意すればいいんだろう。

2005年06月03日(金)



 鉄橋の先の世界。

いつもはその橋の上から眺めるこまちに乗って

逆にその橋を見ようとするけど生憎座席は反対側。

普段見ることのない鉄橋の向こう側に目をやる。

子供の頃に冒険をした堤防も少し小さく感じたけど

そこに入りさえしなければあの時の世界のまま。

2005年06月02日(木)



 クールビズ?

衣替えを忘れて昨日までの僕のまま。

ネクタイを外すだけでもだいぶ違うんだろうけど

絶対に外さないなんて意味のない意地を張る。

あと何日かで冷房に凍える日々が続くかと思うと

今から寒気がしてしょうがない。

2005年06月01日(水)
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