五行日記
ガム



 背中の羽。

自転車での帰り道。

スピードに乗った下り坂で向かい風を受け

スーツの上着がパラシュートのように膨らむ。

ほんの一瞬感じた浮遊感。

背中に羽がはえるってこんな感じなのかな。

2005年05月31日(火)



 ステイ・ゴールド。

今日、青が金に変わった。

初めて手にする金の重み。

オリンピック選手なら4年先を考えるのだろうけど

僕が考えるのは5年先のこと。

次も金を取れるよう安全運転を心がけよう。

2005年05月30日(月)



 不安な光。

何だか最近おかしなものが見える。

左側の視野いっぱいのところに不意に現れる白い光。

寝不足でもないのに痙攣する左目の周りのせいだろうか。

思えばこめかみを強打してからのような気もする。

何か特別な力にでも目覚めたのなら嬉しいけど。

2005年05月29日(日)



 キラー・D。

鉄の鎧を纏った途端、無防備な人間を見下したように走る。

その無謀な運転に、これまで何度轢かれそうになったか。

時々思う。命を捨ててでも、敢えて轢かれてみようかと。

そうやってDの人生を壊してやろうかと。簡単なことだ。

その時初めてDは気付くだろう。自分の犯した過ちを。

2005年05月28日(土)



 やわらかな日。

先週観たつまらない映画の口直し。

自分ひとりでは多分選ばなかった映画をふたりで選んだ。

期待していなかった映画に良い意味で裏切られた。

帰り道を照らす少し欠けた黄金の月。

その優しい光が僕らをやわらかく包んだ。

2005年05月27日(金)



 カールスバーグで祝杯を。

何かに呼ばれるようにして目が覚めた。

時間を確認するためにつけたテレビでCLの決勝戦。

その時点で3−0でミランがリードしたままハーフタイム。

まさかの試合展開に朝っぱらから興奮した。

好きなチームではないけど両チームを祝福したい。

2005年05月26日(木)



 深く寝入る。

生活が変わってからはよく眠れるし泣くこともない。

だけど何だかスッキリしない。

気付いたらまただいぶ爪が伸びてる。

爪の先の白い部分が許せない。

多少痛くても深爪くらいがちょうどいいんだ。

2005年05月25日(水)



 端っこボタン。

途中まではちゃんとしてたんだ。

でもいつの間にかボタンをひとつ掛け違ってた。

僕は端っこにひとつ余ったボタンのように

在るべき場所について考えてみる。

今まで無かった切なさが僕を覆った。

2005年05月24日(火)



 何気ない朝。

朝、早めに起きてアイロンをかける。

スチームのにおいに懐かしさを感じた。

伸ばされた繊維から湯気が立ち上る。

日だまりにも似た暖かさ。

また一つ幸せを憶えた何気ない朝。

2005年05月23日(月)



 つくしんぼとかくれんぼ。

行きたかったライブのチケットはソールドアウト。

持て余した時間で映画を観る。

この映画がハズレで踏んだり蹴ったり。

そこへ追い打ちをかけるような雨。

口直しというか仕切直しというか、来週も映画を観よう。

2005年05月22日(日)



 軽くなった頭で。

伸びた髪の身分証明書。眼鏡までかけてる。

こんなんで自分を証明できるんだろうかって

ずっと行きたいと思っていた散髪へ。

ギュウギュウだった帽子がブカブカになった。

帽子に詰まっていたのは迷いとかそんなもんだったのかな。

2005年05月21日(土)



 垂れ下がる糸の先に。

どこから迷い込んだのか、部屋の中に一匹の蜘蛛。

ここに巣を張っても食事にはありつけないだろう。

ここは僕だけの部屋だから共存は難しいよって、

窓を開けて部屋から蜘蛛を追い出す。

たかが一匹の虫の何に僕は怯えているんだろう。

2005年05月20日(金)



 悲しみスパイラル。

そこの社員への暴力や嫌がらせが相次いでいるらしい。

その暴力で誰かが救われるというのか?

その嫌がらせで何かが解決するというのか?

その行為こそが脱線しているとは思わないのか?

悲しみが新たな悲しみを生む悲しい世の中だね。

2005年05月19日(木)



 あきらめの温度差。

あきらめたフリをしても頭の中では狙っていたり、

あきらめてないつもりでも心はとっくに折れていたり。

その温度差に凍えてみたり、火傷してみたり。

その度に自らに言い聞かせる。

『あきらめが肝心だ』『絶対にあきらめるな』って。

2005年05月18日(水)



 ガラスの靴。

失ったものを再び手にすることは一度目よりも難しい。

僕らに掛かっていた魔法が解けてしまったのは

もう誰の目にも明らかだけど、

もし解け残った魔法があるのなら

元通りとはいかなくても普通に話せるようになれたらと思う。

2005年05月17日(火)



 ぎくしゃくロボットマン。

道路脇の歩道ほど起伏のない生活。

感情のないロボットのように同じことの繰り返し。

川面に映る月を見ても揺れる月に揺らされる心がない。

期待していたのはこんなんじゃなかったよな。

油を差したい衝動に水を差してスイッチを切る。

2005年05月16日(月)



 ハレ、クモリ、アメ。明日は?

相手選手の膝を左のこめかみに受け、しばらくうずくまる。

強烈なシュートを顔面で受け、右目のまぶたがハレる。

両目がうまく開かずに視界がボンヤリと曇る。

後を引く痛みに潤んだ目から雨のように涙が零れる。

勝ったから良かったけど、明日はどんな顔になってるかな?

2005年05月15日(日)



 あれもこれもどれも。

何かこう、頭ん中があれもこれもで

何から手を着けていいのやら。

結局、何にも手を着けられずに

ボンヤリと終わってしまう一日。

どれもこれもうまくいかないなって。

2005年05月14日(土)



 ディーン。

そうなってから、もうどれくらいになるだろう?

昔観た映画の主人公を意識して肩をすくめて歩いていたら

そのまま猫背になってしまったっけ。

そういえば最近映画を観ていない。

胸張って帰れるような映画ってあったっけな?

2005年05月13日(金)



 幾万の雨粒。

天気予報を確認しないで出かけたせいで

傘のない帰り道、雨に濡れることになった。

僕に落ちる雨粒は幾万と降る雨粒のうちのほんの僅か。

なのにまるで初めから僕を狙っているかのように正確だ。

今は雨で隠したいような涙も流すことはない。

2005年05月12日(木)



 悔しさの尺度。

試合に負けたら悔しいのは当然だけど

FWとして出場して点も取れずに負けた試合は

GKとして出場して点を取られて負けた試合より

何倍も悔しいってことを思い知った。

もう一回チャンスをくれないかな。

2005年05月11日(水)



 当たり前の世界。

当たり前だったことが当たり前じゃなくなると

急に不安になったり弱気になったり。

でもようやく当たり前だった世界に戻ってきた。

香りのある世界、味のある世界。

声さえ取り戻せたら完全に元の世界。

2005年05月10日(火)



 掛布Day、バースDay。

ミスタータイガース掛布雅之さんの誕生日である今日、

僕は掛布さんの背番号と同じ歳になった。

彼がプロ野球選手として登場した1974年に

僕が生まれたのも何かの縁だろうか。

別に阪神ファンじゃないんだけど、おめでとう掛布さん。

2005年05月09日(月)



 喜びを見いだす。

決断のスピード、飛び出しのタイミング、声の指示。

ゲームを重ねるたびに上達しているような気がする。

ゲームの結果とは別に1対1の緊張感も楽しめる。

これでPKを防いだりしたら、どれだけ興奮するだろう。

今年はキーパー一本で頑張ってみようかな。

2005年05月08日(日)



 フラジャイル。

風邪はもうだいぶ良くなったけど、

今度は彼女が風邪をひいてしまった。

ドライブの時、うつしてしまったんだろうか。

生憎僕は持ち合わせてない。

風邪に効く薬と、壊れやすいものを扱えるほどの優しさは。

2005年05月07日(土)



 5月にMayる。

テレビは毎日悲しいニュースばかり垂れ流す。

乗り物の事故、殺人事件、反日デモ、ミサイル発射…。

沢山の人が傷ついて、大勢の人が亡くなった。

最近まで浮かれていた自分は、もう何処かへ消えた。

弱ってる躰も手伝って、5月だってのに妙に気が滅入る。

2005年05月06日(金)



 後付けの切なさ。

特別切ない想いをしている訳じゃないのに、

嘗て無いほど胸が張り裂けそうだ。

風邪とはいえこれほど咳をしたことはない。

ふと尾崎放哉の句を思い出した。

その後で切なさがやって来たよ。

2005年05月05日(木)



 鼻声ドライブ。

天気が良いからどっか連れてってとのメール。

風邪は昨日よりだいぶ良いけどまだちょっと辛い。

鼻声で良ければってことで出かけることに。

辿り着いた公園の桜は殆ど散ってしまっていたけど

そこには何かが咲いたのかもしれない。

2005年05月04日(水)



 寝込むGW。

前半飛ばしすぎたツケが回ってきた。

叫びすぎたノドの痛みは風邪による痛みに変わってしまった。

布団に入り、一日中天井を見ながら過ごす。

図らずものんびり過ごすことになってしまった。

昨日までの錯覚は、もうどこかへ消えてしまったな。

2005年05月03日(火)



 日常のスピード。

高速道路を降りた後の世界がゆるやかに感じるように、

昨日までの駆け抜けた3日間の後では、

いつもの日常が非常にゆっくり流れているように感じる。

今までとは違った流の中で見付けられるものもあるのかな。

もしそうだとしたら、この錯覚が終わる前に見付けたい。

2005年05月02日(月)



 胸キュンのスイッチ。

GOING UNDER GROUNDのライブに参戦。

昨日と一昨日で潰した喉を酷使して今日も叫ぶ。

振り上げた拳の先と繋いだ手の掌には

胸をキュンとさせるスイッチがあるみたいだ。

またしても日常と夢の間を彷徨う迷子になりそうで。

2005年05月01日(日)
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