2003年10月22日(水) |
【決断】−The another side of 『The diary of Sonoka』− |
『・・・・姉さんがこんなになってるっていうのに、おっさんは何処に・・・』
理人から少し怒りにも似たような声が漏れる。
ここはわしの家。
黄泉の国から帰ってきた理人は、ルナの傍を離れないで居る。
『姉さん・・・・』
理人は、今まで起きた黄泉の国での出来事をよく覚えていない。
無論、わしはそれを「見ていた」ので良く判っている。
「あの日の少年は元気かね?」
ふっと姿を現す。
『おっさん・・・自分の奥さんが・・・姉さんがこんな時に何処をほっつき歩いてるんだ!?』 理人は胸ぐらを掴まんばかりの勢いでわしに突っかかってくるが、わしの向こう側へ擦り抜けてしまった。
『なっ?なんでだ?』
「姉さん思いの少年の見学に行くのに少々疲れただけだ」
『・・・』
「まぁ、そこに倒れているのは、疏埜馥でもなければルナでもない。姉さんでもないんだな」
『えっ!?』
「二人揃って疏埜馥でありルナであるんだ。片方だけでは不完全なモンだ」
理人は、見た目がルナの、寝ている女性が「姉さんではない」という現実を直視出来ないで居る。
当然だ、わしも最初は判らなかった。
「姉さんに戻ってきて欲しいだろう?」
『・・・』
理人は黙って頷く。
「じゃ、姉さん思いの少年に、ひとつ手伝って貰おうか?」
『いちいち「姉さん思い」とか言ってんじゃねぇ・・・』
わざと焚き付けるわし。
「まぁ、いい。で、だ。」
勿体ぶるのも性に合わないのだが、敢えて。
「少年よ、ルナを殺せと言われたらどうするよ?」
『なっ!?・・・貴様、姉さんを殺してどうするつもりだ!』
またしても突っかかってきた理人は、わしを擦り抜ける。 余計に苛ついてきたことだろう。
「まぁ、聞け。所詮疏埜馥でもルナでもない、この女を殺せと言っているだけだ」
嘯くわし。 本当ならこんなことは考えたくもなかった手ではある。
『・・・出来ない』
それはそうだろう、と思った。 ただ、今の魔力なら、理人の攻撃力が勝つ。 なんと言っても、月の魔力がない昼間だからな・・・。
「なるほど、口で言うほど、姉さんを思ってない・・・・そういうことだな?」
『なんだと!?』 いきり立つ理人は、三度わしの身体を擦り抜けていった。
「いいか、少年。わしの話を最後まで聞け。 疏埜馥は黄泉からこっちに向かっているというか、この辺に漂っているだろう。 だが、疏埜馥はそこに寝ている女の身体には戻れない。 そりゃそうだ、霊は生きているモノに憑り付くのにもの凄いエネルギーが必要だからだ。 ただ、疏埜馥にはそんなもんはない。
元々ルナの魔力で疏埜馥は魔力を使えていただけだしな。 だから、ルナも身体から追い出して、黄泉の世界で融合させる。 そのためには、そこに寝ている女にも死んで貰わないとならん。
いいか?よく聞けよ。
そこに居る女に、容赦なく攻撃して、殺せ。」
『・・・』
理人は返事を躊躇している。
「いいか?時間は後1日半だ。月が出たら、お前も死ぬぞ?」
『・・・わかった。』
「おい、ルナ、起きろ・・・ルナ・・・・」
完全に意識の飛んでいるルナに魔力を注入して気付けする。
「あ・・・ルシフェル・・・。今まで何処行ってたのよ・・・。 疏埜馥が・・・居なくなっちゃった・・・・。」
「ん、知ってる。だからどうした?」
「・・・・私・・・どうしたら・・・」
何気ない会話の中で、理人に目で合図をした。
理人は壁際まで飛び、銃口をルナに向けた。
『姉さん・・・いや、ルナ!!こっちを向け!!』
ルナが振り返った瞬間、理人の向けた銃弾が、ルナとわしの身体を貫通した・・・。 ・ ・ ・ (【融合】へ続く) ・ ・ ・ 次の瞬間、何事もなかったかのように、疏埜馥は起きあがった。
「旦那様・・・・ただいま・・・」 「ああ、おかえり、疏埜馥・・・」 『・・・姉さん?』 呆気にとられている理人にはもちろん、疏埜馥にもわからないトリック。
ただ・・・もう二度と疏埜馥とルナは離れることはない。 二人は完全に一つになったのだから。
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