るしふぇるの日記風味
日記だかなんだかわからんけど(ぉ

2002年10月28日(月) 王宮日誌6(回想)

暗がりから朝日が立ちこめ、にわかに部屋が暖まり始めた頃、わしは疏埜馥に起こされた。

『旦那様・・・どうしてこんなところで寝ているの?』

「あ、ああ・・・考え事をしてたからかな・・・・。疏埜馥、珈琲を入れてくれるか・・・」

『うん・・・朝食の用意をするから、飲んで待っててね・・・』



疏埜馥の入れてくれた珈琲を飲みながら、また考えていた。

「今のわしに出来ること・・・」
「約束か・・・」
「疏埜馥はどう思うだろうか・・・アルティは・・・」

思い耽っていると、疏埜馥が朝食を用意した。

二人で何を話しながら食べたか覚えてないくらい、考え込んでいた。

怪訝そうな眼差しを向ける疏埜馥に、わしは作り笑いを見せるのが精一杯だった。



朝食を摂り、王宮に出掛ける。

今日は選管と王位の譲位についての打ち合わせだ。

王室に入り、溜まっている案件に目を通しながらも、やはり考えていた。



考えすぎることはよくない。

そう思いついたわしは、「約束」の待つ執務室へ向かった。



「やれやれ、ようやく革命も終わって・・・入国者もやって来るわね」

革命が終わり、いつもの主が独り言を呟きながら書類に目を通しているようだった。



わしはその外で、態度を決めかねていたのを「らしくない」と思っていた。

「今、何を話すことが出来るんだろうか?
きっと、いろんな意味で理解しているだろ者に、納得のいく一言が話せるのだろうか・・・」

腹は、決まっていた。

それを表す言葉を探していた。

そして。



こつっ・・・

いつもはしないノック。

改まった声で「どなたです?」と言ってきた。

今までに聞いたことがあまり無い声の調子に、少し驚きもしたが、ドアの前で一言だけ言った。


「・・・死ぬ気でついてこい」


中では、なんとも言えない空気が漂ったに違いない。

ただの来訪者と思っていたはずだろうし、決意を伝えるのも初めてだったからだ。


「・・・命を懸けるよ」


そう、返事が返ってきた。

それだけで十分だった。


会議室への階段を下り、掲示板に立候補をすると張り出す。

外は、いろいろな議論が飛び交っていた。

が、そんなものはどうでもよかった。

「わしは、わしが信じた道を進んでいくしか出来ないしな・・・」



夕刻。

疏埜馥を迎えに行き、自宅へと帰り着いた。

夕食前に、疏埜馥に全てを伝えた。

『やっと決断したんだね・・・』

「ああ・・・立候補してきたから・・・・」

『新婚旅行・・・延びちゃったね・・・』

「すまん・・・」

『良いのよ、私は貴方を信じて着いていくだけだから・・・・』

「そう言ってくれると・・・わしも救われるから・・・」


疏埜馥は、話しながら泣いていた。

立候補を決断したことに対する不安、あるいは意気を感じて・・・・

楽しみにしていた新婚旅行が延びてしまうこと、二人でゆっくり暮らすこと・・・・

疏埜馥の夢をわしは叶えてやることは出来なかった。

ただ、傍に居てあげることも出来にくい世界に、また踏み出すことを告げた。

疏埜馥は、わしがそう言った男で有ることはわかっている。

わかっているから感じるものが多かったのだと思う。


「残りは後6日・・・・さて、行こうか?」

『うん・・・ずっと傍に居るから・・・・頑張ってね・・・・』

「ああ・・・・」


再び夜が訪れるが、その日はゆっくりと休んだ。

次の日から訪れるであろう、人々の意思表示を受け止める鋭気を得るために・・・・


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