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■本番中で、本来は楽な時期のはずなのだけれど、次の仕事の準備に追われていて、自分の時間がなかなか持てない。その中でも、最近、またひたすらに本を読んでいる。 昨夜は、わたしのお気に入り作家、いしいしんじ氏の「ポーの話」を、寝不足承知で読み切る。って言うか、読み切るまで眠れなかった。力の強い物語だったので。 作者の祈るような気持ちが、ひしひしと伝わってくる。思いの強さが物語を運び、求心力が強い、とても強い。
■昨夏、忙しい時期にエアコンが壊れて、自分の家がサウナ状態になり、結果、ひと夏で10キロ痩せていた。筋肉量が人より多分にあるので、情けない体にはならなかったが、久しぶりに会った人が、小声で、「病気したの?」と聞いてくることもしばしばだった。このところ、そこから3キロほど増えた。食欲もあるし、恋人と美味しいお酒もたくさん飲んでいる。 すると。 最近、どうも人に「きれいになった」と言われる。そう言われて、嫌な気分になる女はいないわけで、わたしは、現在のちょっとふっくらしかかった感じが、自分にあっているのではないかと分析し、キープにつとめている。きれいだと言われたら、もっともっときれいになりたい。きれいであるには、心が健康でなきゃと思うし、お肌の毎日のお手入れにも気が入る。「きれいだ」という、ちょっとした言葉の力はすごい。 恋人は、わたしが落ち込んでいる時、自分に自信を失っている時、そんなよくない時に、わたしに、ふと、「きれいだね」と言ってくれることが多い。 そして。逆にわたしは、この人に、どんな力のあることばを投げてあげられるだろう? と、考えてやめたりする。考えて出したことばに力のあることなんて、それほどない。愛している心から自然に出たことばこそ、力を持つのだと信じて、ただひたすらに愛していればいいんだと、そう思ったりする。
■今、とっても才能のある若者と一緒に仕事している。長らくこの仕事をしているが、滅多に出会えない、本当に素晴らしい才能なのだ。才能とは、持って生まれたものだけじゃあ、もちろん、ない。その能力を活かし伸ばす自己を保つ努力が出来る人だということだ。 持てる心と体のすべてを役に集中する準備をして舞台に出ていき、燃焼しきって帰ってくるその姿を見ていると……その日その日の出来だけが自分の生活のすべてとして生きてる彼を見ていると……自分の暮らしの生ぬるさを、思う。確かに、そんな才能ある俳優を支えている人間のひとりで、わたしは在るのだけれど、自分の心と体を切り売りしない、ぬるさを、思う。 独りで歩き始めなければと、ずっとずっと思いつつ、それが出来ないでいる。流れに乗って、暮らしている。
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