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2001年10月27日(土) 「逃げてゆく愛」Bernhard Schlink

 わたしは今久々の連続OFF中なのである。今年初めて、2週間も休める。もちろん、その間、ちょこちょこ次の仕事の準備に出かけるので、遠出とか、そういうことは出来ない。また、先立つものもない。(先月、狂ったように、食事と、酒と、タクシーに浪費した。この人生で最も激しい金遣いだった。)

 目が覚めて、コーヒーをいれて、すぐにベルンハルト・シュリンクを読み始めた。ひとつ短篇を読み終える毎に、遅い朝食をとったり、メールチェックしてみたり、ぼうっとしてみたり、間隙をはさみながら、読み終えたら午後7時をまわっていた。

 わたしは40歳になったばっかりで、まだまだ若い。それでも、もうターニングポイントは越えている。すでに、誕生から伸びるベクトルとは180度違うベクトル上にいるわけだ。終わりに向かうベクトル。
 シュリンク氏の短篇は、警告に溢れている。終わる時を迎えるための、警告。氏の短篇は、痛みに溢れている。終わったことに苛まれての痛み。氏の短篇は、悔いに溢れている。取り戻せないことへの悔い。
 どうしようもない、逃げようもない現実に、登場人物は、ある時は汲々として、ある時は存在をかけて、対峙する。結果はいつも芳しくないが、読者であるわたしの中には
紛れもなく誰かが生きていたことの実感が残る。そして、つい我が身を思う。

 ***

 読み終えて、我が身を思ううち、知らず知らず時間が過ぎていった。
 よいのだ。休日なのだから。

 でも、気が小さいものだから、これから仕事を始めようとしている。
 でも、読書の余韻はまだ続いているので、一人でお酒を飲んでいる。
 本当は白ワインの気持ちなのに、なかったものだから、日本酒である。
 休日なのに、ここらへんが、ちょっと淋しかったりする。


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