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●真っ直ぐな人に出会うと、わたしのように屈折した嘘つき人間は、皮をはがれた赤剥けのウサギのようになってしまう。目に留まらないくらい小刻みにぶるぶる震えて、逃げられないくらいに怯えてしまう。そして、仮死状態を経た後で、あらん限りの力を振り絞り、その真っ直ぐさから一目散に逃げていく。脱兎の如く。
●今、わたしを大事に思ってくれている男性は、とにかく真っ直ぐな人だ。真っ直ぐに見られるだけで、わたしを覆い尽くしていた体のよい皮はずるずると剥けていく。それでも愛されると、このようなわたしの中に、何かわたしの中に美しいものが潜んでいたのかもしれない、と、怯えの中から淡い希望さえ湧いてくる。
●歳をとってから恋をするということは、自分と出会う作業であるらしい。落胆したり、見いだしたり、大いなる精神の冒険が始まっている。
●新聞を見ても、旅をしても、他者と知り合っても、この今にどれだけの人生が蠢き哀しみ喜んでいるかを知ることはできる。知って、それらのの人生に「感じる」から、このような表現の仕事を選んでいる。
●忌まわしい戦争でもなく、死に至る病でもなく、絶望的な飢えや貧困でもなく、不慮の事故でもなく、恋で自分と向き合おうとするわたしは、甘いのか? 世に言う不倫で苦しみを知るわたしは甘いのか?
●忙しく仕事を続けながらも、そんなこんなの心の動きを抱えている。人生を2倍3倍にも生きているような気がする。
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