酔っ払い


慕っている人の腕を掴む。
歩き遅れないように、離れないように。
掴んでいただけだったのに、
気がついたら、手を握っていたみたい。
おっきな手。

向こうも酔っているせいか、そのままずっと繋いでいてくれて、
自分のことを話していてくれる姿が、子供みたい。

別れる時に酔っ払い加減が本当に心配で、
家まで送りたくなる。
・・・一緒にもいたかったし。

「次に会えるのは5月ですね。寂しいな」
「もう1回くらいは時間作るから」
「ほんと?」

初めて手を握り返された。

私は、20センチ以上背の離れたあの人に、
ちゅってキスをした。

「もう1回して下さい」
「やっぱりあともう1回だけ」

おねだりする度に彼はちゅって、私の唇に触れた。

終電で、お別れ。

朝起きたら、酔っ払いの恥ずかしい記憶が蘇る。

唇の感触なんて全く覚えていないのに、
手の感触だけは、しっかり記憶にある。

2006年03月24日(金)