サヨナラは突然で。


朝6時半過ぎのことだった。
院長先生から電話が入る。

「マコちゃんが呼吸停止しました。
極めて危険な状態です」

慌てて、病院に迎えに行った。
病室に入ると、マコは今までに見たことがないくらい苦しそうで、
もう駄目だ、と私でも悟った。

姉と母は激しく号泣して、私は自宅に連れて帰る準備をした。
命綱とも言える、酸素を吸入する管を抜いてからは、
苦しそうな顔も見せなかった。

自宅に連れ帰ってからは、最後の時を過ごした。
自分達の吐息が騒音になる位、部屋は静寂だった。
意識を集中すると、マコの心臓の音が僅かに感じるくらい。
マコの顔は、苦悶の顔から開放されて、優しい顔に戻っていった。
父親は休日出勤で、電話をかけても中々捕まらなくて、
9時前にようやく捕まった。
父が「マコ、急いで帰るからね」と言い残し、父の帰りを待つ。

9時45分くらいだろうか。
マコが硬直したのに気付く。
死後硬直だ。

マコハシンデシマッタ―

1番大好きだった、父親に会えずに。
今までの苦しみのカルマが取れたのか、マコはとても安らかな、
家族の大好きだった、可愛らしい顔をしていた。

信じられなかった。
昨日は、真面目に信じて疑わなかった。
3月になったら、偕楽園に梅を見に行こうね。
4月は桜を見て、チューリップ祭りにも行くよ。
5月はレンゲ畑にも行くね。そろそろ菖蒲が咲き出すね。
6月は紫陽花かな。梅雨だから車でお出掛けだけだね。
7月は向日葵を見に行こうね。
8月は早起きして蓮だよ。
9月は海かな。私も頑張って早起きするよ。
10月はコスモス。お花畑だね。
11月は紅葉。散歩シーズンもこれで一休みだね。

愚痴も一つもこぼさずに、あんなに強かった姉が、子供のように
大声で泣いてる。
親も、無力感と悲しみの両方を味わっているようだった。
私は訳が分からなくて、マコに会えない寂しさとマコがもう苦しまなくていい、という二つの感情が入り混じって、ただ、呆然としていた。

その後は、どう過ごしたのか覚えていない。

でも、夕方、いつものように、おでこをくっつけて、血の通っていない
マコの前足を握ったら、自然と涙が溢れてきた。


マコ、今まで本当にありがとう。
マコのいた生活は、毎日が幸せだったよ。

天国で家族を見守っててね。

2004年02月11日(水)