| 2003年05月30日(金) |
小説 中上健次 を読む |
図書館で、ふっと目についた「時の肖像 小説・中上健次」借りてきて一気に読んでしまった。 あの作品に見られるエネルギッシュで濃厚な性描写とは裏腹な、中上の可愛い性格(女性にはトコトンうぶであった、という面が活写されていて)がおもしろかった。 中上と同世代だった担当編集者が書いた本なのだが、編集者と作家の実に幸福な関係がよく描き出されている。 又、作者(元編集者)は、中上の担当として濃い関係(もちろん文学において)の時代、子どもの抱えている障害によって、まるで家庭から逃げ出すように仕事にのめり込み、それによって奥さんとの関係が冷え切っていく時間でもあって、それが、裏腹のように描写されていて、この、小説・中上健次という作品に陰影を与えている。
熊野を歩くと、ふっと思い出すのはやはり中上の「熊野集」の熊野の描写だったりする。 改めて、生きていたら、この時代、どんなものを書いているだろう、と思う。 あの熱さ、行間に孕む熱気が今必要な時代かも知れない。 寒い時代だ。 外国で、日本人の心の体温、低いなあと感じることがよくある。
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