世界お遍路 千夜一夜旅日記

2002年02月26日(火) 第63夜  お待ちかね!月面によく似たアスキャ・ツアー

7/25<火 晴れ>    ヴォルゲルキャンプサイト2泊め   

今日の予定
7時30分  アスキャツアーのバスが、キャンプ前に来る。ピックアップ。
8時     他のお客と合流、アスキャへ 
夕方8時から9時に帰ってくる。

7時前、隣の棟のキッチンで朝食をとり、サンドイッチづくりをする。
棟内も外のキャンプサイトをまだシンとしている。
私がキッチンを出ようとしたら、シャワーを浴びに若い男が一人入ってきた。
「おはよう」だ。
欧米人は「朝シャワー」が習慣なので、私はあえて「夜シャワー」を採用している。だって、彼らとかち合わないから、ね。

 7時20分過ぎ外の道路沿いで待つ。
どんなバスが来るのかしらんが、昨日事務所にいた若い女の子たちに確認してもらっているから、来ることは確か。
アイスランド人の性格からして、早めに来ることはまずない。
全然人気のない道路だが、マア、安心して待とう。

 ミーバートン湖は、湖面から湯気のようなものが上がってガスっている。
 

☆★★〜 アスキャツアーレポート 〜★★☆

 アスキャは、活火山。1969年、アポロ11号で月面に降り立ったアームストロング船長が訓練したところとして知られている。
つまり地球上でもっとも月に似た場所なのだ。

8時過ぎ、レイニフリースで15,6人の客を乗せると、大型バスは走り出した。えんじの半袖シャツ、短パンの女性ガイドが切符を切り始めた。
20代後半くらいかな。
がっしりとした体格で、短パンからでた足の真っ白さがまぶしい。まさに「ホワイト」。
冬にお日様がほとんど出ない環境で育つとこんな白さになるのか、って感じだ。
このツアーのお値段6000クローネ。朝から、晩までのツアーだしこれは妥当な価格だろう。


昨日見学した「箱根大湧谷」<ほら、温泉タマゴのできそうな・・>を過ぎて、道はリングロード1から右折した。
とたんに、道はでこぼこ、砂漠地帯のようなすごい景色が広がりはじめた。

リングロードからはずれる前、自転車の若者が手を挙げてバスを止めた。日本的に考えるとバス停でもないところで、となるが、この国では、手を挙げたところが停留所となる。
こういう光景に慣れた。


滝や川の豊かな水量、氷河は「アイスランドは水の国」という印象を作り上げている。
しかしこの乾いた不毛的景色は何だ、である。
これぞアメリカNASAが求めた月にもっとも似た景観だったのか。
なにも生えない平原、茶色い地平線。
溶岩がそのまま固まった岩が転がる。
羊も見えない。この国で羊のいない景色は初めてだ。時折岩陰にささやかな草が見えるが、それ以外は岩と砂の世界だ。
シロ足ガイドさんが言うには、あのネコジャラシを貧相にしたような草も「輸入もの」らしい。

右手前方に帽子型のでかい山が見える。
いわゆる「テーブルマウンテン」だ。氷河地形の典型。それがバスの進行に従って近づいてくる。
「ハルドブレイ山」という名前を前の席に座っていたガイドさんが教えてくれた。

走り初めて1時間半、渡河だ。
渡りきった後、バスが止まった。
こんな何もないところで休憩?と思ったら後輪にもう一つタイヤをつけ始めた。この先、けっこう悪路みたい。


川の水はきれいだ。さすがに川周辺は、水のおかげで草や花が咲く。空気はきりりと澄み切っている。お客たちは、そんな中を散歩したりひっくりかえたりしてリラックスしている。
私は水を口に入れた。
冷たい。
「これは氷河の水?」とガイドさんにきくと「氷河の川は濁っている、この川は違う」という。
なるほど、一つお勉強をした。
「今日は水が多い、この前に来たときはこんなではなかった」と彼女。
「どうして?雨?」ときいたら「雨は、この3ヶ月近くあまり降ってないのよ。降って欲しいくらい」
「南アイスランドでは、よく降っていたけど」といったら「この辺と、南の天気はずいぶん違う、夏は北アイスランドの方が晴れが続くし、気温も高い」という返事。
またまたなるほど、である。

バスが走り出す。茶色い平原の上に白い月が浮いている。ペーパームーンだ。変な感じ。
突然、人類が滅びてもこの荒涼とした景色は人間なんかと関係なく残る、と思った。
そんな日があまり遠くない気もしたりして・・・などという怖いインスピレーションがわいてくる。

11時近く、帽子型のハルドブレイ山ふもとにあるキャンプサイトに着いた。澄んだ川のほとりに、ピンク色のかわいい花が咲き乱れる。
しかし、でこぼこした小道を少し行くと黒い溶岩台地が広がる。
もこもこと吹き出してきたマグマがそのまま固まった感じのうねりが、ハルドブレイ山の周りに広がっている。
うーん、すごい。
こんなところでキャンプして、夜、星を眺めていたらどんな気持ちになるんだろう。
トイレ、シャワー、キッチンなどのシンプルな設備はある。
してみたいもんだ。ここで飲んだ水はうまかった。

やがてバスは、モコ、ムク溶岩の波が続くまさに不毛地帯に突入。
よいっしょ、どっこいしょと進む。
耳がツーンとしているところをみると高度が上がっているのだろうが、外の景色を見る限りではそんな・・・である。高度感はない。


「1970年、まだこの一帯が観光などでの立ち入りが禁止されていた頃、研究のためにアスキャに来たドイツ人が2人行方不明になった。彼らを捜しに来た人たちもいなくなった」

道とも思えぬ溶岩波の中を走る車中、シロ足ガイドさんに、そんな話を聞いた。あちこちに見えているクレーターにはまったら、そんなこともありそう。

12時半過ぎついに到着。30分ほど歩いて、レヴィーテ、アスキュウバ、という湖へ行った。
 
何も生えていない赤黒い山が周囲を囲む。道はポッコ、ポコという奇妙な音がする。ガイドさんにきいたら、一見黒くなっているのでわかりにくいが、下は氷、「永久凍土」らしい。

レヴィーテは、火口湖。すり鉢状の底はイオウで白い。水温25度ほど、泳げる。
なんと同じバスの面々はレヴィーテが見えたとたん、河口へ走り降りていく。
そして服を脱いで水着、半裸状態だ。
いくらお天気はよくても、周囲は氷河、不毛の山峰、涼しいどころか寒い。
私はセーターでちょうどいい。
とてもじゃないが水温25度のイオウくさい天然プールなんかで泳ぎたくはない。
それにすり鉢状の底で泳ぐというのは怖い気がする。
「あなたは泳がないの、臭いがいやなの?」
私があきれて眺めていたら、ガイドさんがそばにきて言った。 
「寒いし、そう、臭いもいやね。それに私の国も火山がたくさんあるから、あれは珍しくはないわ」
「そうね、日本も火山が多いのね」
 そんなことから話が始まった。 

彼女は、なんと小学校の先生だった。6,7,8,の3ヶ月、夏休みなのでその間このアスキャツアーのガイドをするのだという。
あなたはいつ休むの、ときいたらクリスマスにねと笑った。
やはり物価と税金が高いことが、彼女に第二の仕事として観光ガイドをさせているのだろう。
「私、この仕事好きよ」とはいっていたが・・・ それにしてもアイスランド人は働き者だ。
私だったら、休みに働こうなんて思わない。
でもオフに別の仕事ができるくらい疲れず、ストレスためずに働けるアイスランドの仕事時間の流れっていい。
余力を残しているということなんだから。

レヴィーテの隣りに広がるアスキュウバは、大きい。深々とした青さが印象的な湖だ。湖面には、日の光が映って輝いているが、しんと静まり返っている。
「魚はいないの」
「いない、冷たすぎて」
きれいではあるが恐いような気配もあるのは、生き物が棲めない低温のせいか。なんか「これぞアイスランド」だ。
深さは220メートルもある。
行方知れずのドイツ人たちが、たとえばこの湖に沈んだのだとしたら、今も水底で腐敗もせずに横たわっているのではないかと思う。
ここもまた、人類が滅んでも関係なく、地球の終末まで、ただ存在し続けるだろう。

 アームストロング船長はいったという。
「月面は、本当にアスキャそっくりだった」 
 3時過ぎ、帰路についた。
自転車旅の若者は30分ほど走った先にあるキャンプ地で降りた。
そこから乗ってきた人たちもいる。
このバスは、観光と、定期運行の両面を持っているみたい。

途中、馬で移動する集団に出会った。
もしかして「乗馬」でのアスキャツアー? まさかね。
でも、月面的景色に馬はよく似合う。

リングロード1に戻ってしばらくしたら「あそこが、ヨーロッパプレートと、北アメリカプレートの裂け目です」とガイドさんが指した。
一見、この辺によくあるマグマが吹き出して固まった割れ目なんだけれど、フーンである。
 

帰着は9時近かった。
でもお日様は、ミーバートン湖の上に輝いていた。


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昨日、一昨日と深夜2時過ぎに就寝なので8時前に起きるのはつらい。しかし、だらしなくなると、とことん・・なのでとりあえずは規則正しく、だ。

スヌちゃんと電話で話す。今日は関帝さんの日なので横浜の中華街に行くのだという。一緒に行かない、といわれたがやることありで、お断りする。その代わり、明日に会う約束。
やることあり、というわりには、ハワイアンをきいて洗濯物たたみなんかを優雅にしている私ってなんでしょう。

愛知のM氏、千葉のKさんより来信。
徳島でお訪ねしたい方々に送信。

y子さんに離婚後の保険のことをメールで訪ねたらすばやい返信。感動だ。

どうも身体がダリい・・です。
仕事が・・進まぬ。

カレーをしようと思ったら、台所の流しの下で、オジャガの芽がすくすくと伸びていた。春だあ、北海道のyくんにいただいたイモ、元気だねえ。

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