2002年02月15日(金) |
第52夜 野っぱらのまん中にユースホステル・・ |
7/14<金・晴れ> 移動日 ヴァグストアYH泊
快晴だ。レイキャビク市内から見えるエーシャ山<MT.Esja>が頂上まで見えている。いつもガスっていたのに、初めてのことだ。この山には13人のサンタクロースが住んでいて12月12日になると順番におりてきて、子どもたちにプレゼントをおいていくのだとか。 バスはターミナルより、八時三十分「リングロード1でヘーフン<Hofn>行き」だ。リングロードというのはアイスランドの国道1号線。 バスのヨコの荷物入れには、お客の荷物のほかにいろいろな箱が入った。どうやら、バスが宅急便もかねているようだ。フィンランドやノルウェーでも見た。人口の少ない国の工夫だろう。あっ、高知の室戸当たりでもバスが荷物運びしているの、見たなー。なんて「里心」がついてしまった。
走り出して一時間、周囲の景色が変化した。草も生えていない濃い茶の溶岩台地と山が続く。時々白い煙があがっている。温泉だ。地熱発電所もあった。バスはほぼ満席、ヨーロッパの、火山にはエンなしの国からの旅行者には「神秘の景観」だろう。火山と地震の日本からの私でさえ荒々しい景色に釘付けになるのだから。 10時半過ぎ、隣のドイツ人らしき人たちが「あれ、ヘックラ<MT.Hekla>?」と運転手に聞いている。おっ。富士山型のかっこいい山が大地から、すくとそびえ立っている。標高一四九二メートル、去年爆発した山だ。
セリャランスの滝<Seljalandsfoss>で一休み、というか写真タイム。すごい水量、だがすんでいる。一口飲んだ。うまい。何しろこの水は、ずっとてっぺんにあるミールダス氷河<Myrdalsjokull>が溶けてしみこんでいるはずだからね。やがて見えてきた。雪をかぶった白い山並み。氷河だー。
書けない、読めない、話せないの三重苦状態にある私はバスドライバーの真後ろの席に座って、私のこと忘れないでねをアピールしている。ドライバー氏も心得たもので「心配するな、おまえさんのYHの前でバスを止めておろしてやるよ」という。しかし、このバイキングの親戚みたいなひげを蓄えたお人、馴れ馴れしくて、肩に手なんか回してきて「なんか聞きたいことないかい」とのたまう。セクハラだっつーの。手をパッパと払いのけて「なーいよ」。ったくなあ、日本のおばさんアマクみるんじゃねーのよ。(>_<)
ヴイーク<Vik>を過ぎてしばらくすると真っ黒い砂と岩の大平原が続く。その間を無数の川。あっちにごろごろ、こっちにごろりといた羊の数も少なくなったような・・・すごい景色だ。そんな中、バスが止まった。前にレイキャビクへ帰るバス。 今まで車掌だった女の子が降りていく。あちらのバスからも女の子が一人こちらにやってくる。こんななーんにもないとこで車掌交代、で、それぞれの町に帰るということらしい。
私がYHもゲストハウスもとれなかったスカフタフェルでかなりの乗客が降りた。
途中、ヨールクスアゥロゥン<Jokulsrlon>という水色の氷河の切れはしが浮かんだ幻想的な湖を通過して「私のYH、ヴァグストア<Vagnsstdir>到着。「ほれ、ここだ」とおろされたものの、はっきりいって、途方に暮れた。だって、野原の真ん中。YHの旗が立っているからわかるという感じなんだもんね。あせったのは、レストランどころか、スーパーも近くにないみたいだってこと。食べ物どないしょう。
YHは、リングロードから、溶岩を砕いて固めたほこりっぽい小道を数百メートル 歩く。木造二階建ての建物はさして大きくない。留守と見えたが男が一人出てきた。ここの主人らしい。初めから宿泊代でもめてしまった。彼は「一泊1250」といい、私は「1200だと聞いている<ツーリストインフォの予約用紙にもそう書いてある>」。結局、彼がインフォへ電話をして私が昨日書いてくれた女の子と話して、落着となった。100円ほどといってもぼられるのはやだもんね。
ここだと案内された2階の部屋は2段ベッドが二つあって、窓辺には作りつけ机がある。まだ誰も着いてない。そもそも、こんな野中の一軒家に泊まるお客なんかあるのか。という私の考えは、甘かったことがわかった。6時近くなって、くるわ、くるわ、たちまち6部屋30人くらい泊まれるこのYHはいっぱいとなった。
窓からみていると、予約なしの客をあのだんな、断っているではないか・・・・そしてな、なんと、その中に日本人らしき姿。マウンテンバイクを引きずって「疲れた果てた」の風情。 私は2階から飛んで降りていって「もしかして日本人ですか」と声をかけてみた。「そうです、何とかここに泊めてくれませんかね、雨と霧でもう前に進めません」。 私が着いた4時過ぎから、天気は崩れて小雨模様。 窓から見える氷河から大量のガスが降りてきていた。そうすると、道路もたちまち白くけむる。視界がきかなくなる。 車は走行中24時間ライトつけ放しというルールが納得できる状況だ。
私は、できない英語で「彼はとても疲れている、車ではないし天気も悪い。泊めてやって」とだんなに頼んでみた。 だんなは「わかっている、もう少しまて」。どうやらキャンセル待ちをせよということらしい。 しかし、みんなきたらどうするの?
7時過ぎ、自転車野郎の彼は、私の上のベッド、もう一つの2段ベッドは50代くらいのドイツ人夫婦となった。 仕切ったのは、だんなの奥さんだ。 「待て」というのは「うちの奥さんが帰ってくるまで待て」ということだった・・・のだ。 だんなは、氷河ガイドをしているらしいが、彼女は50キロ以上先にある銀行勤めらしい。てきぱきしたかんじのいいママだ。京塚昌子さん<知っている人は、中高年?>みたい。
{自転車野郎の清水優さんと話す} どちらからですか。
埼玉です。パリから乗り換えてきました。
どうしてまた、アイスランドへ?
以前、商社の人からいいところだと聞いたものですから。
ずっと自転車ですか。天気は変わりやすいし、寒いし、大変でしょ。
ええ、それと、道路もちょっと幹線を離れると未舗装だらけで大変なんです。
宿は?うまくとれますか。
ケフラビック空港について、一日目はYHにうまく泊まれたんですが、二日目は、幹線道路からはずれたら全然なくて、ふつうの農家に頼んで泊めてもらいました。ご飯まで食べさせてもらって、お金は、受け取ってもらえなくて。 でも昨日は、本当になくて、頼んでもだめで、作業小屋のようなところで野宿でした。
野宿は寒いでしょ?
ええ。とても熟睡なんてできません。つらいですよ。
いつまで?
17日には帰ります。
失礼ですが、お仕事は?
酪農やっています。こちらの牛乳は脂肪が多くて濃いと思いますよ。
いつも自転車で旅をするんですか。
ええ。いいですよ、自転車は。風や光、土地のにおいとか、みんな肌で感じること ができますから。旅は自転車以外に考えられません。今回も、氷河の真下を走るなんて贅沢です、いいですよ。
>>>>>>>2月15日 本日のできごと >>>>>>>>>>
ただいま、夜9時近く。 よっぱっらていますね。友人たち、Mさん、Kさん、Tさん、Oさんがお祝いをしてくれました。近所の美味しい居酒屋サン。お酒もお料理も美味しかったです。ありがとうさんでした、持つべきものは優しき友です。 酒がうまかった。いただいたお花が優しく香っています。今日も私の大事な人生の一日。忘れられない一日、感謝。
昼はスヌちゃんとあってランチ。れいの渋谷のみちのく。アコウダイの焼き魚定食がおいしかったです。 その後出版社の担当の方と最終校正の打ち合わせ。 これを終えると少しほっとする感じ。
終わって、おいしいコーヒーをごちそうになり、谷師という沢釣りの話を聞いた。 面白かった。
夕方、いったん家に帰るとお遍路であったFくんのおうちの方からの留守電。かけ直してお母さんとお話しする。 私がたくさんの経験を積んで逞しくなって帰ってきますよ、といったら、無事に帰ってきてくれたら・・という言葉。親心だ。
寒い日だったが、空も夕焼けの美しい日だった。
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