2002年01月03日(木) |
第11夜 アブ・シンベル行き 女王様フライト |
アブ・シンベルの位置についてまず説明しましょう。縦軸はナイル川、横軸はエジプトとスーダンの国境ライン、この二本線が交わったあたりに見つけることができます。 なにしに行くのか、といえば砂漠まっただ中のアブ・シンベル宮殿見物。この宮殿、1970年に完成したアスワンハイダムとナセル胡の湖底に沈む運命にあったのですが、ユネスコが国際キャンペーンによって救ったのです。 四年をかけて、とてつもなくでかい2つの宮殿をブロックに分けて元の位置より60メートル上、ナセル胡のほとりに移築したのです。こんなドラマを持った宮殿ですから、やっぱり行ってみたい、と思うわけです。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ アスワン→アブ・シンベルのフライトは、12時10分。 2時間前にホテルでタクシーを頼んだら「30エジプシャンポンド」高いぞな。 「我が、日本のガイドブックには、15ポンドと書いてあるが」 「それは安すぎますが、あなたは安く乗りたかったら、駅に行って交渉しなさい」 OK。ホテルを出ようとすると、レセプションにいた男は追いかけてきて「だいたい22ポンド、これより安くはなりません」と教えてくれました。 オオ、ありがたい、だいたいの目安がわかったぞ。 荷物をズリズリして駅近くに行くと、建国記念イヴェントの旗や飾り。そして、わたしには、「おまえはどこに行く?」「ランチははどうですか?」「タクシーは要らないか?」「観光をしないか?」「ホテルは必要ないか?」。あやしい男たち<あやしくはないのだが、わたしにはそう 見えてしまう >が群がってきます。 「わたしは空港まで行く。タクシーが必要である」 「30エジプシャンポンド」「ノウ、20」タクシードライバーらしい若い男へ、即座に言い返すと男、しばらく考えて「OK、しかし、空港まで通行料が必要だ、22」「2はチップとしてつける、それでどうか?」男は渋々顔でうなずきます。「空港まで20エジプシャンポンド,プラスチップ2、イッツOK?」とみんなの見ている前で念押し。 例ごとくのボロ車ですが、メンテナンスがいいのでしょう。よく走ります。市街を抜けて、アスワンダムの土手ロードを走りながら「エルボルト、エルボルトロード」と若いドライバー氏は口走ります。 「エルボルト? はあ? アイ ウオント トウ ゴウ トウ エアポート!ユー アンダスタンド?」とんでもないとこに連れて行かれたら大変です。 「オフコウース、トウ エルボルト」。ひらめきました。エジプシャン英語ではエルボルト=エアポートなんだワ、きっと。 確かめました。そうでした・・ああ、疲れるわ。
★ ☆★ ☆ ★
こうして10時30分空港着。大きくて、立派な施設ですが、人影まばらです。なんと、磨かれた床では、雀たちが落ちているパンくずをついばんでいます。まさか、雀に床掃除を頼んでテマ省いてンじゃないよね。 チェックイン。そして待合室へ。ここにも数人のビジネスマンふうのエジプト顔の男以外には観光客らしい姿なし。どうなってんの? まさか飛ばない? 心配になって、荷物チェックエリアにいた男たちに「アブ・シンベル行きフライトはあるのか」と訊いてみました。 「あるよ、」「でも、誰も乗る人がいない」「今に来るよ、心配ない」 やがて、ヒマしていた男たちと空港内をパトロールしているソルジャーたちがわたしのところに集まってきました。「どこから来たの?」「名前は?」「結婚しているの?」「歳は?」「子どもはいないの?」「エジプトは初めて?」・・とまあ、定番の質問責めです。 彼らと楽しく過ごしているうちに時間は過ぎて12時になってしまいました。しかし、他のお客は来ませんし、雀は遊んでいますし、出発の案内もありません。 のどかすぎる・・いいのか。 「時間になったのに飛行機はでないの?」 「大丈夫だよ、問題ない」 男たちは明るくいいます。でもなあ・・・。 12時50分、やっと案内が入りました。しかし、お客は誰もいない・・もしかしてわたしひとりなの??? 「ショクラン、マッサラーム」<ありがとう、さようなら> セキュリティエリアにもどったかれらに、今習ったばかりのアラビア語で挨拶すると「乗客はきみひとりだね」とニコニコ。やっぱり・・の・・女王様フライト。テロの影響かねえ。
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タラップの前で、厳しい目視荷物検査を受けて機内に入って見渡してもわたしひとり・・このアブ・シンベルフライト、一生の語りぐさ、老後の話の種。ワッハッハ。 スチワーデスさんも笑いながら空席に向かって緊急時の案内をします。 「わたしは知っているし、必要ない」といったら、彼女、笑って首を振ります。まあ、規定なんでしょう。 それが終わったら、スチュワードくんもやって来て「今日はあなたひとりのためのスペシャルフライトです、あなたはどこの席に座ってもいいです」。 「ありがとう、わたしはアブシンベル宮殿が空から見える左側、がいいです」 彼は「どうぞ」と笑いながらシートを示します。 と、ここまでよかったのですが、いつまで立っても出ない、飛び立たない・・のです。 「この飛行機はトラブルがある、降りて下さい」 ついにまた下ろされることになりました。 待合室に戻ると、「マッサラーム」と別れたばかりの男たちが「どうしたんだ?」と寄ってきます。「エンジンの技術的なトラブル・・・」と、エジプトエアの職員が言ったように彼らに伝えるとみんなうなずいて「大丈夫、飛ぶよ」といって慰めてくれました。 そう、飛ぶことは確かなのです。エジプトエアのお人は、謝った後にいたのです。 「フライトはキャンセルにならない。なぜなら、この飛行機はアブ・シンベルにアスワンに帰ってくる100人のお客を待たせている。心配するな」。 待つこと30分あまり。2時になってやっとまた跳べることになりました。ヤレヤレ。乗ってしまえば40分ほどのフライトですから、飛べばこっちのモン、です。 高度を上げる飛行機の窓からは、白というより赤い色をした砂漠、砂というより岩山だらけの不毛の大地、時々ナセル湖の水と、オアシスのような緑の固まりが蜃気楼の見えます。圧巻は、着陸間際、ナセル湖のほとりに見えたアブ・シンベル宮殿の姿でした。
>>>>>>>>>>1月3日 本日のできごと>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
ただ黙々と仕事しました。
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