世界お遍路 千夜一夜旅日記

2002年01月02日(水) 第十夜 アスワンウオッチング  

むらがる客引きをけちらして予約のホテルに入ったら、フロントのおじさんが「明日はわたし達の国の記念日なんです」といいました。
「何の記念日なるや」
「建国記念日である」
ほう、ほう、ほう。
トイレ、シャワーを浴びて朝食兼昼食代わりにバナナとパンを食べてミネラルウオーターを飲んだらモーレツに眠くなりました。でも、眠ったら、いけんのです。明日のアブシンベル行きの飛行機の予約確認をしにエジプト航空にいかねば・・。お客が少ないと突然飛ばすのを中止したりするから、気をつけてくれと言われているのです、ハイ。
 そんで、ナイル川に浮かぶエレファンチネ島に行きたい・・何しろ明日はアブシンベルなんだから、。突然団体旅行みたいに張り切るわたしでありました。

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 ホテルの中はクーラーが聞いて涼しいのですが、外に出たとたんに真昼の太陽、タクシー運転手、何だかよくワカラン男、すぐ近くの水タバコ屋の店先のオッさんたちの「おいで、おいで」。とさまざまな攻撃<アプローチと言い直しても、同じか?>が、襲ってきます。
「アイ ドント ニード ユー」「アイ ウオント ウオーキング」「ジャスト ナウ、アイム ビズイ」等々と、攻撃をかわし・・・エジプトエアに向かうべくナイル川沿いの通りを南下します。今度は、馬車タクシー、ナイル川をセーリングしないかと帆掛け船<フルーカといいます>の船長が言い寄ってきます。「アイ ウオント ウオーキング」「ジャスト ナウ、アイム ビズイ」。
頼むから、わたしの行く手にたちふさがらんといて。

☆ ★ ☆ ★ ☆
 
宝石屋の店先では小僧さんが声をかけてきました。
「アイム ビズイ」
「ホワイ アー ユー ビズイ?」
「アイ マスト ゴツー エジプトエアオフィス」
 そしたら、小僧さん、「やっていないよ」
「はあ? どうして」わたしは、思わず足を止めてしまったのでした。こういう人たちの情報はあなどれないのです。
「今日は金曜だし、午前はやっていた」
 そうか・・。モスレムの金曜礼拝は、キリスト教の「日曜に教会へ行く」と同じ意味を持つと、本で読んだことがあります。
「だから、うちの店でシャーイを飲んでいけ」
 もしかして、それがやっぱりそれが目的、きみも客引きか・・むむむ。
「行ってみる、もし、やってなかったら戻るであろう」
 わたしは、水がほしい犬のように、暑さでハアハアいいながら、再びエジプトエアに急いだのでした。
 途中のモスクの前では、大勢の白や水色のガラペーヤの男たちが例の五体倒地的姿勢で今しもお祈りのまっ最中。女の姿が見えないのは、何とも異様でした。
 さてエジプトエアは・・やっていました。
「我々のスケジュールに変更はない」
 窓口にいたチョウがつくほどハンサムな男は、断言しました。こんだけいい男のいうことは、思わず信じます、です。
 小僧のいうこと聞いてエライめにあうとこでした。

☆ ★ ☆ ★ ☆

トーマスクックで、TCを現金化してお次はエレファンチネ島です。
「トーマスクックのオフィスのお兄さんたちが教えてくれたローカルフェリー<公共のボートバス>乗り場の階段を降りるところで、フルーカ船長共にまたしても囲まれてしまいました。
 市中を歩いた感じでは観光客は少ないし、お客をゲットせんとする情熱はわかるけど、囲んでと通せんぼするヤツの船なんかには怖くて乗れんぜよ。
 船上はいわば密室ですし、わたしは今回はフルーカには乗るまいと決めていましたから、敵陣突破をしなくては・・とそこに欧米系のおじさんが「エレファンチネ島に行くのですか。わたしが送りましょう」と助け船。<サブーイシャレのつもりはありません>
 フルーカの船長たちも突然現れたおじさんの言葉にひきました。
 アメリカ人おじさんは「イシスアイランド」という中州の島にある高級ホテルのお客。ホテル専用ボートを寄り道で、エレファンチネ島につけてくれるというのです。
「今度のテロ事件であなたのお国は大変でしたね」
「いえ、あなたの国の人も亡くなったでしょう。いろいろの国の人が亡くなりました、本当に悲しいことです」
 そんな言葉を交わししているうちに着ました。
エレファンチネ島ではアスワン博物館とナイロメーターを見ました。
 博物館の裏にある「クヌム宮殿」遺跡も回りました。修復していない遺跡はほとんどがれきの山、でありました。
 帰り、今度こそローカルボートです。乗ったとたんに1エジプシャンポンド、の声。とりあえす、1を渡して「歩き方」を見れば「だまされないで、50です」とかいてあります。ここで大ゲンカ。
「50ペセタでしょう。50返して下さい。うそを言うのは悪い」
「それはエジプシャンプライスだ」
「でも、日本人も50ペセタでのったと書いている」
「ねあがりした」
「川岸に着いたらツーリストポリスにいう」
 わたしはそっぽを向いて怒った顔をして黙っていました。 
 川岸近くなって、男は険しい顔をして煮染めたような50ペセタを返してきました。
 勝った!!
 ローカルボートに外国人プライスはないのです。たとえ、50ペセタであろうとこういうやり方はすごくいやなのです、わたしは。許したくないのです。

☆ ★ ☆ ★ ☆

 真昼の太陽は容赦なく照りつけます。あ、アツウイ・・昼寝だ・・スーク<市場>を歩きながらアタマがもうろうとしてきます。
 危ないか・・腹にくるかも・・と思いながら「サトウキビジュース」を飲みます。我慢できないモン・・うままい・。
 香辛料<複雑怪奇な香り>、ガラペーヤ屋、ジュース屋、食い物屋、果物屋、野菜屋、土産物屋、パピルス屋、肉屋<つるしてあるので臭いがすごい>等々。とにかくスークにはなんでもあります。
 客引きたちがたむろして通る人を引き留めます。
「ニホンジン? バザールデゴザール、ミテイッテネ」
 バザール デ ゴザール・・ねえ。
 小柄な男の子がそういって色とりどりの香辛料屋の店先から飛び出してきます。
「ヤスイヨ、ヤスイヨ」
 うまいジャン。
 要らないというとその子は「サラバジャ」。
 アハハハ、誰だ、こんなへんな日本語をエジプト人に教えこんだのは。

 その後わたしはひとつの値切り買い物合戦を展開しました。エジプト綿の涼しい上着とズボンセットを購入することにしたのです。草色のそれは、袖はひじのところまであってゆるく、風が通ります。首もしまっていなくて涼しそうで、Tシャツよりすごしよさそうなのでした。スークのテントのお店にかかっていました。
初めの言い値は「60エジプシャンポンド」
「高いねえ・・ジャいらない」
「いくらだったら、買うんだ」
「20エジプシャンポンド」
「安すぎる、50」
「要らない」<店をでる 彼、追いかけてくる>
「ジャ、40」<帰りかける>
「25」
「30」
「さようなら」
「わかった、25」
 やったね。でもまあ、売るということは彼も損はしていないはず。わたしも最初の言い値の半分にするというテーマは達成できたし、大成功。
 このお洋服セットは重宝しました、その後。何しろ涼しいし、洗面所で洗濯しても一晩で乾くのです。毎日着ていました。

☆ ★ ☆ ★ ☆
 3時半、ホテルの部屋は涼しくて、たっぷりと寝ました。
 エジプトの昼下がりは「やっぱり昼寝が一番ゴージャス」でしょう。




>>>>>>>>>1月2日 本日のできごと>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 
10時40分発の各駅停車で帰浜。水上、高崎と乗り継いで上野着15時36分。本が2冊読めた。昼寝もした。上越県境の美しい冬景色も楽しめた。大福も食べた。こういう旅が好きだ。青春18切符に感謝。

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