おひさまの日記
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2010年10月03日(日) ばいばい、お父さん<昇華編>

父が亡くなってつらくなったけれど、
それは、父がいなくなって悲しいからではなかった。
全然違う理由で胸が苦しくなったり、泣いたり。

父の死を介して起こった出来事で色々な感情があぶり出された。
幼い頃インプットされたであろう痛々しいセルフイメージが、
ここぞとばかりにぶわーっと吹き出した。

お父さんに嫌われている。

お父さんに許してもらっていない。

お父さんに必要とされていない。

父がいなくなることによって、
それまで何かの引き金がないと飛び出してこないそうした想いが、
遠慮なくがっつり出てきたのだった。
遺影までが自分をにらんでいるような気がした。

abuは、私や母やアンナが何もしなくてもいいように、
影となり日向となり、常に私達を気遣って動いてくれた。
そんな彼を親戚のみんなも感じたのだ。
しっかりしてるね、心配りのできる素晴らしい人だね、たいしたもんだ、いい男だ、
親戚はみんなabuを絶賛した。

とてもうれしかった。
私もabuには言葉では言い表せないほど感謝しているし、
そのabuの素晴らしさをみんなが感じてくれたのが本当にうれしい。
普段は見ることのないabuの姿。
こうした時に人の本質を見るとはよく言うけれど、
こんな素晴らしい人がこの世にいたんだ、そう思ったほどだ。

でも。

逆に私には、
しっかりしなさいよ、
お母さんを守らなくちゃダメよ、
もっと気を使ってあげなくちゃね、
そんな言葉が飛んできた。

「お前はダメ」

そう言われているような気がして無性に泣けてきた。
私は私で頑張ってるんだよ、
葬儀の準備や手続きや打ち合わせ、色々なことしたんだよ、
私がしゃんとしてなくちゃって思って頑張ってるんだよ、
心の中でそう言いながら泣いた。

「誰かほめてよー、私をほめてよー、よくやってるねってほめてよー」

声なき声でそう叫びながら。

そして、そんな中冷静に思った。

「なんでお父さんがいなくなって寂しいんじゃなくて、
 こんな理由で泣いてるんだろ、ヘンなの、ヘンなのー。
 あぶり出しみたいにこんな気持ちばっかり出てくる」

頭では、起こった出来事や言われた言葉が、
まんま私が感じた意味の通りだとは思っていない。
けれど、そうした理解とは別の場所にあるインナーチャイルドの叫び。
潜在意識の奥の奥の方までかき回して全部集めたものをごっそりと感じたような、
そんな数日だった。

ふと…今、心の大そうじをしているのかもしれない、そんな気がした。
私がずっと持ち続けてきた痛いもの、
それが、その原因として存在していた父を亡くすことにより、
別の形になっていくような、そんな気が。
そして、心だけじゃなく、人間関係、環境、
私達を取り巻くそんなものすべてが動いているような、そんな気が。

父の死と、それを介して起こった出来事を通して、
私と私の家族は、自分達が好きで心地よいものだけを
自分達の世界に取り入れる選択をする機会も得た。

大そうじ、と言うか、
うーん、そう、今まであったものがみんな昇華していくような…
そう、昇華、その言葉がぴったりだ。
上手く言えないんだけど、強くそう感じてる。

人の死は多くの贈り物を与えてくれると聞いたことがある。
今まさにその言葉の通りだと感じている。
体験の中でつかんだ尊いものだけを残して、
父はみんな空に持っていってくれる。

お父さん、ありがとうね。ありがとう、本当にありがとう。





でも、私、うんと踏ん張ったんだよ。
本当は今もほめてほしい。

お父さん、恵美はよくできましたか?
誰もほめてくれなかったんだ。
だから、恵美は自分で自分をほめてるよ。

「よくやったね、偉かったね」

って。
お父さんも空の上からほめてください。


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