その時すべてがそこにあり、今すべてがここにない。手が届き、手が届かない。激しい雨と雷。こんな夜、私は誰でもなくなる。誰でもなくなって、雨風をしのぐ枝を探す夜鳴き鳥になる。漆黒の闇に吸い込まれたくなる夜があることを、自分に許してあげたい。