その昔名もないAV女優がいた。 AVすなわちアダルトビデオ。 隙間産業だったAVが バブルの波にのり 一大産業となり そのニーズに応え この不景気においても 年々成長しつづけているのだが 年々星の数ほどの女性がAVに出演し 年々星の数ほどの女性が業界から消えていく スターになれるのはほんのごくわずか。 たとえスターになっても その地位は長くてもわずか2年足らず。 それはプロ野球はおろか メジャーリーグよりも厳しい世界。 なんでも クラスに1人の割合でAVに女性が出てるのだ。 そんな日々新作がでてくるAVにおいて 限られた予算でAVを借りる。 これはもお 一期一会。 素晴らしい作品もあれば ちんこすら反応しないクソ作品。 みんなみんな 忘れられていく。 みんなみんな 一期一会。 いい思い出。 もお会えないかと思うと せつなくなることもあるけど。 ただ私は 激動の時代にAVの女性と出会えたことを そのわずか10数分を できるだけ楽しんであげる。 それが私にできること。 しかしごくたまに ずっと心に残っている名作もある。 これもまた事実。 「夏野菜」で思い出したので 今日はそれを紹介したい。
今から7〜8年ほど前 その名もないAV女優は キッチンにいた。 キッチンにある ありとあらゆる素材で責められていた。 ありがちな設定。 ありがちな場面。 あはは。残念だが私のちんこは そおゆうのでは興奮しないのだよ。あはは。 と苦笑して早送りをしようとした まさにそのとき 名もないAV女優は言った。 「なすびは・・・なすびは反ってるの」 なすびは反ってるの・・・。 なんか日本語がおかしい。 料理教室か? なすびを知らない人に教えているのか。 なすびは反ってるの。 あはは。ヘンな事をいうコだ。と思った瞬間 また彼女はあえぎながらつぶやいた。 「大根は・・・大根は太いの」 私は悟った。 彼女は野菜の実況中継をしているのではなく なすびは反ってる(のが気持ちいい) 大根は太い(のが気持ちいい) と教えてくれているのだ。 あたかも 不朽の名作の名言 「気持ち良かったら笛を吹いてください」 かのごとく ということからこの監督は あの村西御大を敬愛し影響を受け ソノリスペクトなのだ。と。 そしてまた 名もないAV女優も正真正銘の ベジタリアンなのだ。 下の口の。
それだけではない キッチンプレイはまだまだ続く。 次の素材はにんじん。 いっぽんでもにんじん。のにんじんである。 「にんじんは硬いの・・・」 間違いではない。なるほど。 そしてきゅうり ここでふと考えた きゅうりは一体なんなんだろうかと。 反りはあるものの 大根やにんじんよりも細くやわらかい。 はたして他の野菜に勝るとも劣らない 表現ができるものかと。 しかし 彼女は言った。 「きゅうりはイボイボ」 ・ ・ ・ やられた。 そりゃそのまんまやん。 とも思ったが ベジタリアンの彼女が言うのだ きっとイボイボがいいのだろう。 哀しいかな 男にはわからない。 だがしかし 私は道で外人に 「キュウリ ハ ドンナ タベモノデスカ?」 と問われたなら 確実に彼女のおかげで 「イボイボネ!」 と答えるだろう。 きゅうりはイボイボ。 名言である。 山頭火の俳句よりも アバンギャルドで それでいていい得て妙。 素晴らしい。 彼女は文系出身のコなのだろうか。
そしていよいよクライマックス。 トマト。 トメェイト。である。 まさかまさかである。 彼女は天にも昇るような声で叫んだ。 「トマトは入んないよお」 素晴らしい。 オチまでついていた。 緊張と緩和。 柔と剛。 わびさび。 座布団をあげたい。 山田君に運ばせたい。 一気に張り詰めていた空気が和んだ。 野菜に対する愛情。 野菜に対する想い。 飽食になり 肉食に成り下がった日本に 私はなんかやさしい気持ちになった。 私はなんかやさしくなれた気持ちがした。
名もないAV女優はそれ以来見かけない。
ただ今でも私は きゅうりはイボイボ。 私のアタマと心の中から 焼きついて 離れない。
きゅうりはイボイボ。 時代が変わっても それは変わらない。
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