病室の窓に掛かっているのは、クリーム色のカーテンだった。
軽い午睡の後に目を開けると決まってそのクリーム色に太陽の光が当たっていて、静かな部屋は全体的に淡い黄色に染まるのだった。窓を開ければ、風に遊ばれたカーテンがドレスの裾のようにふわりと弧を描いては揺れていた。夕焼けの時にはほんのりと赤みをおびる。月明かりに照らされれば、ぼうっと白く浮かび上がった。
天井と、壁と、シーツの白。リノリウムの床は灰色。殺風景だとさえ思わせる個室の中で、カーテンだけが外の世界と繋がって生きていた。
半分死んだように生きていた僕は、陽に透けるクリーム色が羨ましかった。そこに影を落とす木の葉や、揺らす風、染め上げる太陽、全てに焦がれた。病院という場所にあり、唯一つ僕が恋焦がれたのは、穏やかなクリーム色だった。