僕の、場所。
今日の僕は誰だろう。
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『……君の事も大好きだし…』 言えずに飲み込んだ言葉を君は知らない。
ただとりあえず好きだといった本の話題にばかりに合う焦点。 「ね、だってここの猫博士の台詞が秀逸なんだよね〜」 嬉しそうな君。ちょっと上目遣いに微笑んで、子供みたいに。 「だろ?しかも先のこの情景とリンクしてるんだからな。さすがだよな」 ま、そりゃ俺もこの本好きだけど。 詩的な君に憧れて、君が好きだと言った本は全て読んでみた。 君の好みと、そして君の思慮が少しだけ分かった。 俺も少しだけ文学的になれた気がする。気のせいだろうけど。
「でも良いの?これ買って貰っちゃって……。高いんだよ」 ぱたん、と閉じて両手で抱えて。 高くて買えないから本屋に通う君を、俺は知っている。 確かに、それはページ数にしては値が張る。 ……確かに、俺の財布はきつくなった。 「良いんだよ気にすんな。欲しかったんだろ?」 「うん、でも」 「俺もそれ好きだったし。またここに来ればいつでも読めるじゃんか」
君も、好きだし。
「……うん、じゃあありがとう。大事にするからね」 「当たり前だろ」 嬉しそうな顔を満足げに眺めて、偉そうに頷いてみせる。 こんなささやかな時間、俺にとっては一番の宝。
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