DEAD OR BASEBALL!

oz【MAIL

Vol.175 2004年プロ野球戦力診断 ヤクルト編
2004年02月04日(水)

<投手分析>
先発……石川、ベバリン、鎌田、坂元、石堂、高井、館山、マウンス、川島
右中継ぎ……五十嵐亮、河端、佐藤秀、花田、成本
左中継ぎ……山本、山部、佐藤賢
クローザー……石井

 開幕早々にエース藤井とリリーフの切り札石井を欠き、開幕投手のホッジスが絶不調で計算できないという圧倒的な逆風下、それでもチーム防御率はリーグ3位の4.12。規定投球回数に達したのは石川1人で、リリーフポイントはリーグ2位の80.35と、ブルペンの踏ん張りが目立った投手陣だった。

 先発の頭数は揃っているが、現時点でその座が確定しているのは昨期190回を投げて12勝の石川のみ。開幕直前に獲得したベバリンが前半踏ん張って8勝したが、中盤から捕まる傾向が目立ち始め、故障も含めて考えれば横一線の争いに組み込みたい状況。安定感ある鎌田、終盤に4勝して一気に頭角を表してきた石堂、高校卒1年目から102イニングを投げて5勝の高井、三振の取れる坂元と、伸び代に余裕のある先発候補が揃い、新加入のマウンスと川島まで含めれば、近年とは全く違う先発ローテーションを確立させる楽しみはある。

 気になるのは、完投能力を持っている投手が絶対的に不足していること。昨期のチーム完投数は石川3、鎌田2の計5で、これは一昨年の8を下回るリーグ最下位。完封に至っては鎌田の2のみで、1試合を全て任せられる投手がいないのは現実的な悩みのタネ。外国人投手は6回100球までというタイプが伝統的に多く、期待の若手も慢性的な故障や体質の弱さを抱えた選手が揃っている。自由獲得枠の川島も右肩を痛めており、状態次第では完投を望めない候補がまた1人、ということになるかも。

 そんな先発陣の煽りをモロに受けているのがリリーフ陣。昨期は石井が前半離脱したことで五十嵐亮が孤軍奮闘、66試合で74イニング登板は相変わらずの回転率だが、防御率3.89と肝心なところでのポカが目立った。石井は復帰後36試合登板で6勝1敗、防御率1.99と力を発揮したが、今年は高津の抜けたクローザーに回る公算が大きく、中継ぎの層をどれだけ分厚くできるかが勝負になる。

 右では花田、河端らに計算が立ちそう。石井が後ろに回る左は山本、山部と安定感ある投手が揃い、そこに今年は即戦力候補の佐藤賢が加わり、質・量ともに戦う態勢は整いそう。今年もブルペンにかかる負担が大きそうだが、ここがヤクルト投手陣の生命線。その働き振りがそのまま順位に直結するほどの大きな要素だ。

診断……先発の頭数は揃っているが、リリーフにかかる負担は今年も大きそう。これまでは高津がブルペンを引っ張ってきたが、五十嵐亮、石井は緊急時にクローザーに回ったときの成績は良くなかった。高津の役割はどちらかがこなすことになりそうだが、プレッシャーに押し潰されて本来の力を発揮できなければ算段が大きく狂う。



<野手診断>
1(右)稲葉
2(遊)宮本
3(三)岩村
4(左)ラミレス
5(一)鈴木
6(捕)古田
7(中)真中
8(二)城石
9(投)

控え
捕手……福川、米野
内野手……土橋、野口、三木、度会
外野手……宮出、志田、青木、マーチン

 ペタジーニが抜け、開幕戦で岩村が手首骨折し夏までリタイア。それでもチーム打率.283、チーム打点649は共にリーグ2位とよく打った。三振907はリーグ最少と、各打者が繋ぎの意識を捨てずに状況に応じたバッティングをしながら、長打率.438はリーグトップと、油断すればドカンと花火が上がる野球偏差値の高さは去年も健在だった。

 新戦力の加入はルーキー青木、新外国人マーチンぐらいで、特に目を引く加入はない。今年も4番にはラミレスがドッシリと座り、その脇を岩村、鈴木、古田で埋める中軸は隙がない。土橋に切り札としての怖さが甦り、どこからでも点を取れる抜け目のなさは今年も存分に発揮しそうだ。

 安定感はあるが、それと引き換えに今年も若さの注入が気がかりな点として残る。外野は宮出が剛柔備えたバッティングで一皮剥けた感があり、早稲田黄金期を支えた青木も即戦力としての期待は充分だが、内野は岩村以外の若さが今年も不足している。

 チームの大黒柱である古田も含めて、まだ今年はこのオーダーでもつだろう。だが、昨期カムバック賞を獲得した鈴木の大爆発が、逆に野手全体に足りない若さという要素を更に色濃くしたのは何とも皮肉。まだギリギリで時間的な猶予は残っているこの段階、スタメンが実力派揃いで決断に勇気はいるだろうが、そろそろ数年先のビジョンに目を向けてもいい頃合だ。

診断……現時点の主力に安定感はある。この状況下で次代の備えを進めていく難しさは、これまでのツケと考えるしかない。今年1年を見れば強力な打線であることは間違いないが、いい加減に肉を斬らせて骨を断つような選択肢は考えていかねばならない。若松監督にとっては難しい1年になりそうな気がする。



<総合診断>
 投手は計算の難しい投手を競わせる楽しみがあるが、それと背中合わせのギャンブル性もある。野手は逆に、安定した戦いができそうな安心感があるが、それと背中合わせの危機感が近い将来に転がっている。投打共に両立させねばならない面があるということで、現状ではキャンプ、オープン戦の期間が極めて重要な意味を持ってきそう。

 どちらにも共通しているキーワードは、「使いながら試す」ということ。その意味では、名前以上に不確定要素の強いシーズンになる可能性もあるが、これは決して二律背反ではない。投手なら佐藤賢、野手なら青木のルーキーコンビがいきなり頭角を現せば、チーム全体の空気がガラリと変わる起爆剤になるかも。



BACK   NEXT
目次ページ