DEAD OR BASEBALL!

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Vol.176 2004年プロ野球戦力診断 広島編
2004年02月05日(木)

<投手分析>
先発……黒田、デイビー、ブロック、佐々岡、高橋、長谷川、河内、鶴田、大竹
右中継ぎ……天野、小山田、玉木、澤崎、林
左中継ぎ……仁部、菊地原、広池
クローザー……永川

 完封数は黒田、高橋で1つずつの計2だが、完投数はリーグ2位の18、無四球完投がそのうち8だから、1人で試合を作れる先発は揃っている。12球団トップの無四球完投4を挙げた黒田は13勝9敗と大勝ちできないタイプではあるが、防御率はリーグ3位の3.11と安定感で一枚剥けた感がある。この黒田を中心とする先発陣はある程度の計算が立ちそう。

 デイビー、ブロックの両外国人投手は2年目で上積みの余地が存分にありそう。ブロックは昨期リーグ最多の11ボーク、1試合で3ボークという試合もあった程のボーク癖があるが、昨期終盤にはそれなりに改善されていた。ピッチング内容も安定感が見え始め、ピッチングのテンポがいい点は評価が高い。佐々岡、高橋の両ベテランが脇を固め、残りの椅子を長谷川、河内、大竹らで競えば構成的なバランスも取れてくる。

 リリーフポイントチーム最多が天野の7.50という中継ぎ陣は、去年も不安を払拭できないままシーズンを終えた。広島のブルペンを支えてきた玉木にキレがなくなり、一昨年はクローザーとして頑張った小山田が完全に失速。左で仁部の加入は相当に大きいが、仁部1人でブルペンを回せる筈もなく、何人でも上積みが欲しい状況。ここ数年は2年続けて好成績を残す投手があまり出てきていないというブルペンのジンクスを考えると、天野の安定感にも今年は一抹の不安がある。全体で底上げして、個々の負担を細分化していかない限り、このジンクスは継続されていく可能性が高い。

 昨期ルーキーながら25セーブと頑張った永川は、今年もクローザーとして機能できそう。防御率3.89はクローザーとして不安だが、適性が高いのは間違いなく、2年目の今年は大きく化けてもおかしくないポテンシャルがある。永川が「ブルペン2年連続のジンクス」にはまらなければ、その前の遣り繰りはある程度楽になる筈だ。

診断……上積みの余地を残していそうな投手が多く、その部分は楽しみもある。先発の高齢化傾向は、備えができているだけに心配の要素より構成的なバランスの良さということでいい方向に捉えられる。不安のタネはやはり中継ぎ陣。左右ともに軸不在で、永川に繋ぐパターンをどう確立させるかが今年も課題になる。



<野手診断>
1(右)森笠
2(二)木村拓
3(中)緒方
4(三)新井
5(左)前田
6(遊)シーツ
7(一)浅井
8(捕)石原
9(投)

控え
捕手……木村一、西山
内野手……ラロッカ、岡上、栗原、野村、尾形
外野手……福地、廣瀬、町田、末永

 結果的には金本を失った煽りをモロに食らった新井の大失速、それが最後まで打線に暗い影を落としていた。中盤から4番に固定されたシーツは.313、25本塁打とその役割を充分こなしたが、“代役4番”というイメージが拭えなかったのも事実。チーム打点539はリーグ最下位で、チーム打率も最下位の横浜と1厘差ブービーの.259と、全体的に打線がうまく機能しなかった感がある。

 新井1人が泥を被るような格好になってしまったが、今年も新井を4番で期待したい、と言うよりも現状の広島で4番候補と言えるのは新井以外にいない。規定打席到達者ブービーの打率.236、規定打席到達者日本人リーグ最多の120三振、リーグ最多の16併殺打、規定打席到達者で最低の得点圏打率.193と、あらゆる部分でミソを付けた感のある昨期の新井だが、この経験と屈辱を全てバネにして、今年もう一度4番の座にトライしてほしい。少なくとも今年は“与えられた4番”にはならない筈だ。

 リードオフマンが固まらなかったのが、もう一つの悩みのタネ。森笠、福地、末永、木村拓と候補はいるが、帯に短し襷に長しという選手揃いでもう一つ決め手に欠けるというのが印象。どの選手も走力があり、木村拓を除く候補は打力で一皮剥ければ固定されるチャンスはある。昨期のチーム盗塁数80はリーグ2位で走る機運が上昇カーブの現状、走れる選手は揃っているだけに競争は激しくなりそうだ。

 一軍半の選手も含めて、全体的にはっきりした長所のある選手が揃っているチーム状況である。ただ、そのように期待感ばかりが先行して、実際に実った果実が現状の危機感に追い付いていないという現実もある。昨期の最大連勝がたった4で、これはいい状態を長く維持できない地力の弱さを表している。選手毎の役割をある程度固定していくのも、今年の大きな課題になりそうだ。

診断……全体的な層の厚さはあるが、それがなかなか地力に繋がらない不思議な状況に陥っている。今年はポジション争いの中で、ある程度役割を固定していった方がよさそう。緒方や前田の耐用年数はここ数年言われていることだが、現実的にそれを脅かす選手が出てきていないのは、チーム全体に“器用貧乏”というイメージが漂っている感。大袈裟に言えば、新井ぐらいに不器用な選手と心中するぐらいの覚悟があってもいい。



<総合診断>
 戦力的に致命的な不足があるのは中継ぎ陣ぐらいだが、連勝の少なさもあって大勝ちするイメージが沸きにくくなってきている感がある。FAで失った江藤、金本らの幻影はとっくに断ち切れているだろうが、その穴を埋めるのか新たなチーム像を確立していくのか、それぐらいはそろそろはっきりしてほしい。

 リーグ最多の92失策を数える守備の不安も払拭しきれていない。完投は多いが完封が少ない先発に象徴されるように、弱いイメージもないが強いイメージも沸きにくく、現状のままでは5位という順位だけがイメージに沿っている。投打共に、強さに芯を加えるという課題が大きく立ち塞がりそうだ。



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