<投手分析> 先発……井川、久保田、下柳、藪、福原、伊良部、藤田、筒井、前川 右中継ぎ……安藤、リガン、金澤、藤川、石毛 左中継ぎ……吉野、三東、竹下、中村泰 クローザー……ウィリアムス、モレル 昨期のチーム防御率3.53は12球団トップの数字。完投15こそリーグ3位の数字だったが、無点勝ちはリーグトップの12。勝ち試合は絶対に逃さないという集中力が、1年を通じて切れなかったという印象がある。当然、この時点での予想では層の厚さを感じる陣容だ。 先発の軸は20勝左腕の井川で文句無し。被安打率、四球率、防御率が軒並み前年より悪くなったが、あと一歩のところで土俵を割らないしぶとさと集中力を身につけて、「負けないエース」の座を不動にした。2年続けての20勝は難しいだろうが、大きな故障さえなければ安定して勝ち星を稼げる存在であることは間違いない。 勝ち星でそれに続くのは昨年13勝の伊良部だが、シーズン終盤や日本シリーズの投球を見る限り磐石の信頼は置きにくい。10勝の下柳にある程度の計算は立ちそうだが、昨期終盤に復帰して味のあるピッチングを見せた福原、右肘の状態次第だが1年目で5勝した剛球右腕の久保田らに勢いがあり、左の先発候補で筒井、前川といった候補が立ったのは強調材料。藪も含めたベテラン勢が失速しても手当てはできそうで、逆のケースならベテランが力を発揮してチームを支える陣容はできている。 防御率1点台の3人を抱えるリリーフ陣は強力の一言。影のMVP的な活躍で終盤を支えた安藤に安定感と勢いがあり、シーズン途中で合流したリガン、3.27の防御率以上に打たれていないイメージの吉野、ロングリリーフ可能な金澤がブルペンを厚くし、サイド左腕のウィリアムスも見事なクローザーぶりを披露した。吉野以外で手薄だった左では三東に化ける気配があり、1イニング任せられる竹下を横浜から金銭トレードで獲得。新外国人モレルは未知数だが、仮に機能しなくても勝ち試合はしっかりものにできる磐石の陣容だ。 診断……先発、リリーフ共に絶対的な軸が立っている事実は単純に大きい。勝ち試合を拾うパターンが確立されていることで、先発陣の負担もそこまで大きくならない筈だ。強いて弱点を挙げれば、ウィリアムスが五輪期間中に抜ける可能性が高いこと。安藤をクローザーにもってきたとき、ジョーカー的な役割は全員で賄っていくことになりそう。 <野手分析> 1(二)今岡 2(中)赤星 3(左)金本 4(右)濱中 5(三)鳥谷 6(一)アリアス 7(捕)矢野 8(遊)藤本 9(投) 控え 捕手……浅井、野口 内野手……片岡、八木、沖原、久慈、関本 外野手……桧山、中村豊、平下、葛城、キンケード チーム本塁打が141本でリーグ5位ということ以外、あらゆる部門で1位に君臨した昨期のチーム打撃成績。終盤失速したとは言え.287のチーム打率はリーグ最多打点695と繋がりも抜群で、盗塁115、二塁打242、三塁打32、四球417も全てリーグ最多。打って走って繋いでというスタイルは、98年に日本一になった横浜ベイスターズのマシンガン打線の凄まじさを想起させた。 隙のない打線で、はっきり言えば選手が余ってしまうほどに顔触れは充実している。片岡と桧山をベンチスタートで考えたのは、単純に入れるポジションがないから。鳥谷とキンケードの加入がその競争をさらに激化させそうだが、いきなり鳥谷をスタメンスタートで考えたのは、濱中を除いた中軸打者の高齢化に対する手当てはいまから始めておくべきだと考えた為。 鳥谷に近い将来の主軸打者として期待をかけるなら、ある程度は実戦の場でプレッシャーを味あわせておいた方がいいと思う。どうしようもなくなったときの手当てとして片岡や桧山が控えていれば、チームとしての手当ては取り敢えず可能。大きな期待をかけられている現状の鳥谷だが、鳥谷のプロとしてのスケールを決めるのは1年目の今年。ここで下手に藤本と「8番・ショート」を競わせると、実際に「8番・ショート」の打者になってしまう可能性がある。それならば、年齢的にもサードに置いてクリーンナップを任せる、というのも一興のような気がする。 濱中の右肩の具合も気になるが、体調さえ整えば4番は濱中以外には考えにくい。昨期は濱中離脱後の4番を桧山や片岡が立派に果たしたが、4番というイメージでは濱中に及ばなかったのも事実。上位打線に安定感があるだけに、その後ろを濱中で固められればさらなる得点力アップは可能。 診断……選手層の厚さは12球団随一の大充実状態。正常な競争倫理が働けば層の厚さは何よりの強みだが、選手のモチベーションを維持することの難しさもある。星野前監督はそのカリスマ性もあって、選手の人身掌握には抜群の手腕を発揮した。岡田新監督にとってこの仕事は結構重たいかも。 <総合分析> 流石に昨期ぶっちぎりでリーグ優勝を達成しただけあって、投打共に戦力は非常に充実している。昨年も濱中や今岡の離脱、片岡の出遅れがありながら勝ち進んだだけあって、ちょっとやそっとでは揺るがないだけの戦力は充分にあると見ていいだろう。 鳥谷と藤本のポジション争いばかり注目されているが、戦力の充実は投打あらゆるポジションで競争の激化をヒートアップさせる筈。正常な競争原理の中で分厚い戦力をそのまま発揮できるかどうか、これが意外に難しいことは歴史が証明していること。圧倒的な戦力層が逆にチームの足を引っ張る可能性もあるが、強いて言うなら不安材料はそのぐらいで、100%の力を発揮できれば死角らしい死角は見当たりにくい。
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