DEAD OR BASEBALL!

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Vol.171 2004年プロ野球戦力診断 オリックス編
2004年01月31日(土)

<投手分析>
先発……具台晟、金田、ムーア、本柳、ユウキ、小倉、マック鈴木、フィリップス、松村
右中継ぎ……萩原、谷中、小林、戸叶、加藤
左中継ぎ……山本、歌藤、野村、岩下
クローザー……大久保、山口

 一昨年はリーグ2位の防御率を擁した投手陣だったが、昨年はあらゆるワースト記録を更新して木っ端微塵になった。チーム防御率5.95、完投数はリーグ最少の5、チーム総失点記録も過去最悪で、よくもここまで崩壊してしまったものだと、違った意味で感心してしまう凄まじさだった。

 規定投球回数に達した投手が1人もおらず、チーム最多の125回1/3を投げた小倉が4勝13敗7セーブ。チーム最多勝が具台晟の僅か6勝と、先発陣に軸は不在と言い切れてしまう状況。マック鈴木、吉井の逆輸入組が軒並み調整の遅れと故障で力を発揮できず、金田、小林、川越といった実績組も低迷状況を脱せず終い。一昨年に救世主的存在になったユウキが故障で登板なしとくれば、救いは戦力補強に求めないと仕方ないという状況。

 松村を始めとした新興勢力にとってはチャンスの時期だが、阪神から自由契約になったムーアにかかる期待は大きい。2年連続で夏場に失速して印象を悪くしたが、それでも2年連続2ケタ勝利を挙げた地力は現在のオリックス投手陣では上位。阪神時代に猛威を奮った打棒でオプション契約を結んだようだが、ここは本職の投手としてエースの座を奪うだけの力を見せてほしいところ。

 実績組に故障持ちが多く、それが主力投手の続けて活躍できない要因になっているようだが、具台晟、小倉は大きな故障がないだけに、体調さえ万全に調整できればいい数字を残せる力は残っている筈。ただしスタートは横一線。実績組×新興勢力の図式がはっきり出てくれば、名前は揃っているだけに昨年ほどひどいことにはならないだけの力はあるだろう。

 大久保と山口を故障で欠いたリリーフ陣も死屍累々の惨状。阪神からトレードでタフネス右腕の谷中を獲得したのは大きいが、この2枚看板を欠いたままだとすれば計算が全く立たない。昨年は加藤が1年目から9セーブを挙げたが、防御率5.17ではクローザーとしては心許ない。せめてどちらかに目処が立てばリリーフの設計図はできるが、数不足のサウスポーではルーキーを計算に入れないといけない現状も含めて、かなり危ないブルペンになる危険性が大。

診断……散々だった投手陣の中でも、先発陣は名前の額面通りに働けばという条件付きで格好は何とかつけられそう。リリーフ陣は大久保と山口が帰ってくるかに全てがかかっていると言ってもいい状況。この2人がブルペンに入れるかどうかで、先発陣まで含めた顔触れはガラリと変わってくる筈。



<野手分析>
1(右)村松
2(三)大島
3(中)谷
4(左)ブラウン
5(二)オーティズ
6(一)塩谷
7(指)山崎
8(遊)後藤
9(捕)日高

控え
捕手……三輪、前田
内野手……斉藤、塩崎、平野、嶋村
外野手……相川、早川、竜太郎、由田

 リーグ2位のチーム打率.276を記録したように、昨年は打線の復調ぶりが目に付いた。ただ、それでもチーム打点はリーグ最下位の622。リーグ最多の55盗塁死、逆にリーグ最少の424四球も含めて、それぞれの選手はよく打つが打線として機能しないという場面が多々あった。これは石毛監督や後任を務めたレオン監督が打順をコロコロ動かし、それぞれの選手に役割を固定化できなかった面が大きいと思われる。

 裏を返せば、選手の力があるのだからそれをうまく機能させれば得点力は一気にアップする伸び代もある、ということである。それを考えれば、ダイエーからFAで獲得した村松は、オリックスの得点力を上げる起爆剤として期待充分。リードオフマンとして申し分ない選手を1番で固定できれば、主軸にある程度の破壊力は計算できるだけに得点パターンが組み上がる算段が立つ。伊原監督が打順をどう組んでくるか、これも注目ポイントになるだろう。

 その主軸だが、右打者で昨期12球団最高の打率.350を記録した谷はともかく、ブラウンとオーティズの両外国人が今年も機能するかどうかにかかっている面が大きいのが懸念材料。昨期初の規定打席到達で.307を打った塩谷に遅咲きの感はあるが、それでも両外国人のどちらか、或いは両方がコケたときの手当ては万全ではないというのが正直なところ。2人とも選球眼は悪くないだけにさらに上積みする可能性もあるが、守備に難があるタイプだけに指名打者候補の山崎との兼ね合いもある。

 打棒にムラがある村松がリードオフマンとして充分に機能しなかった場合、守備力を犠牲にしてでも中軸を厚くする必要が出てくる。そのときにどのようなオーダーを組むか、という手当ては混沌としている状況。内野に守備力のある控えは揃っているが、リードオフマン候補は見当たらない状況でもある。ある意味で、村松の活躍が最大の分水嶺なのかもしれない。

診断……あらゆる部分で「額面通りに」という言葉が付き纏う、その重さがオリックス打線の場合は特にある。その言葉を気にせずに済むのは谷ぐらいだが、コケたときの手当てがはっきりと見えないという事実が暗い影を残しているのも事実。予測の上限と下限の幅が大きいのは難で、それは安定化の乏しさを表してもいるが、上限にいった時の楽しみが最も大きい打線という感があるのは確か。



<総合分析>
 投手は横一線からの建て直し、野手は役割の固定化というのが当面の課題。一昨年は打者のあまりの貧弱さに投手が泣かされ、昨年は投手の完全崩壊に打者が割を食わされた感がある。つまり、投手も野手もいい数字を残せるだけの地力はあるということ。一昨年の投手成績と昨年の打者成績を同時に残せれば上位への進出は可能だ。

 それが両立しない面やリーグ2位のチーム打率でリーグ最下位の打点を記録するなど、チーム全体に漂う効率の悪さと言うか、うまく歯車が機能しない部分は気になる。その歯車をうまく機能させることができるか否かは、長期的に見れば伊原監督の手腕よりも中村GMに依るところが大きいかも。



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