DEAD OR BASEBALL!

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Vol.163 2003年ドラフト総括(横浜編)
2003年11月30日(日)

 「森じゃ勝てんワ」とばかりに電撃的な森前監督の解任劇で幕を閉じた昨年が49勝86敗5分け、生え抜きの山下新監督が指揮を執った今年がそれをさらに下回る45勝94敗1分。一時騒がれたシーズン100敗だけは何とか免れたが、落ちるところまで落ちてしまったなという印象が拭えない。監督人事は確かにチームにとって大きなファクターだが、「監督を変えてもそれだけでチーム状況が好転する訳もない」という当たり前の事実を、ファンもフロントも痛感した1年だったのではないだろうか。



 2ケタ勝利に届いた投手が1人もおらず、規定投球回数に到達したのもドミンゴとホルトの両外国人のみ。このうちホルトはシーズン途中で既にウェーバーにかけられ、ドミンゴも11月21日に自由契約が発表された。かつての日本一を支えた斉藤・三浦・川村の実績組は揃ってリタイア。最大の誤算は開幕戦で先発勝利を挙げた吉見で、全く球威とキレが戻らないまま度重なる二軍降格、3勝10敗で防御率8.38と全く戦力にならなかった。FAで獲得した若田部も全くアテにならないまま故障で姿を消し、実績組は軒並み枕を並べて討ち死に状態。堤内・後藤・秦という若手に期待はかかるが、実績らしい実績がまだなく、期待先行というのが現実。この辺を勘定に入れないとどうしようもないのだが、先発陣の姿は現時点で極めて不透明な状態。近鉄からトレードで獲得した門倉を入れたぐらいでは、全く不安は小さくならない。

 吉見に目処が立たない以上、左腕全体の少なさは壊滅的なレベル。自由枠獲得の森にはサウスポーエースの期待をかけられるが、社会人生活3年で故障に泣かされ続け、実績は昨年のベーブルース杯MVPぐらい。素材重視の先物買いというのが実際で、2〜3年は鍛えたい投手。岡本や飯田はまだ時間がかかりそうだが、ドラフトで補強がなかった以上はこういうところにかかる負担が必要以上に大きくなる。麻生徹(旭川大)、山下永吉(大阪学院大)、高宮和也(徳山大)ら即戦力左腕の総獲り計画があってもよかったぐらいで、フロントの目線がどこにあるのか本当にわからない。

 リリーフに目を向けても左腕の壊滅状態は深刻。ともかく候補が稲嶺と富岡ぐらいしかおらず、河原は制球力が相変わらず改善されず信頼できない。森中の解雇はともかく、なぜ竹下を阪神に金銭トレードで放出し、ドラフトで補強しなかったのか理解に苦しむ。加藤と木塚が軸になれる右は、田崎とデニーが何とかいけそうで、4巡目指名の牛田も入れれば格好が付く。とは言え、仁部智(TDK→広島5巡目)辺りの指名は最低でもないとおかしい状況で、どうしても疑問符ばかり先行する。

 ホワイトサイドが使い物にならなかったクローザーは、デニーや加藤を取っ替えひっかえした挙句、中日からウェーバー公示されたギャラードを獲得して何とか格好をつけたが、これは急場凌ぎの感が強すぎる。自由枠獲得の吉川は大学でもクローザーを務めて結果を出しており、広島が永川を1年目から後ろで固定したように腹をくくればピッタリはまる筈。



 野手にはそこそこ明るい材料がある。ウッズが40本塁打でキングを獲得したことも嬉しい誤算だっただろうが、ルーキー村田が25本、古木が22本とチームに長打力を根付けた実績は思ったよりも大きい。両者とも打率には随分と悩まされ、特に古木は小ブレイクした昨年に比べると大きな苦しみを味わったが、この経験を無駄にはしたくない。山下監督は種田・小川といったベテラン起用で目先の1点、目先の1勝にこだわる方針が目立ったが、チームを本当に変えたいのならこの2人と心中するぐらいの覚悟は求められる。この2人は故障がない限りスタメンで使い続けたい。

 内野は石井の予想以上の不振が大きく響いたが、内川に打力で一本立ちの気配がり、終盤に高校卒ルーキーの吉村がプロ初本塁打を含む印象的な活躍を残した。北川や木村という打力のある左打ちの内野手が控え、大砲候補の七野に大化けがあれば内野全体でケアはできている状態。5巡目指名の呉本はこの辺の争いに組み込まれそうだが、村田がサードで固まっているもののファーストはウッズの後が七野1人で底上げにはなる。

 外野手の指名はゼロだったが、もともと守備と走塁に定評のあった多村が打力でほぼ一本立ちし、かつての首位打者だった金城も長打力を身につけて復活したことで軸は安定しつつある。鈴木尚と古木がポジション争いをしそうな充実度があり、田中充・小池・田中一らがその下で虎視眈々。この辺りはこれまでの高校生路線の賜物だが、現時点で無理な補強の必要はないというのも納得できるところ。捕手も指名がなかったが、相川と小田嶋が激しい正捕手争いを繰り広げ、西崎・渡辺・武山がそれを追い、中村が後見役という顔触れは現時点では悪くない。



 とにかくドン底の成績が2年続いただけに、このままでいい筈がないチーム状態。野手にはある程度の厚みはあるが、左腕を中心にした投手陣の底冷え模様は如何ともし難いところ。竹下を金銭トレードで出しながらドラフトで補強しなかったフロント陣に真っ当な危機感があるのか、どうしても疑いたくなるところ。

 左右にこだわらないスケールの大きなチーム編成ができれば、そんな細かいことを言う必要はない。現在の横浜は村田と古木を中心にスケールを出す時期だが、だからと言って明らかな弱点を補強しなくていい道理もない筈。トータル4人の指名自体少な過ぎるが、これだけチーム状態がヤバければ、自由枠以下に高校生・大学生・社会人問わずズラリと左腕だけを並べるような極端な指名があってもいい。“少数精鋭”という響きは確かにカッコいいが、そういうことを気にしている場合じゃないというのが自然な考え方。変わる為にはこれまでにない何かをする必要もあると思うのだが。

     
横 浜
自由 吉川 輝昭 投 手 日本文理大 右右 185・94 豪快なガタイから豪快なピッチングだったが、昨年辺りから低目に球を集める為のいい意味での抜き方を身に付けてきた。ボールを叩く感覚で投げて低目に集め、そこからフォークとスライダーが落ちれば黒木知宏(ロッテ)の迫力。
森 大輔 投 手 三菱ふそう川崎 左左 180・87 七尾工時代にはMAX148kmの速球と高速スライダーで3年夏に1試合23奪三振を達成し、一躍プロ垂涎の的になったが、腰痛を理由に社会人入り。ここでも肩や肘の故障に悩まされたが、手元で微妙に軌道がズレるストレートとスライダーにさらなる磨きをかけて自由枠入団。
4巡 牛田 成樹 投 手 明治大 右右 188・87 角度を生かした速球とフォークの威力は充分で、この2つが低目に来ているときはまず手が付けられない。登板毎の調子の波を抑えることができれば、佐々木主浩(マリナーズ)去りし後に悩まされ続けてきたストッパーでいける。
5巡 呉本 成徳 内野手 明治大 右右 180・80 ガツンと当たれば一発長打を秘めた大型内野手。気持ちを前面に押し出したプレーでチームの雰囲気を盛り上げる。




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