DEAD OR BASEBALL!

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Vol.162 2003年ドラフト総括(広島編)
2003年11月29日(土)

 主砲の金本をFAで失い、その金本を獲得した阪神がリーグ優勝。江藤が巨人にFA移籍したときも同じ現象が起きており、いまに「広島からFAで選手を獲得すれば優勝できる」という願掛けが定着しそう、というのは悪い冗談だが、その損失を埋め合わせるまで若手の成長が追いついていないのがBクラスに沈み続けている要因かも。端境期に入り込んだまま抜け出せなくなっている、そんな悪いイメージが定着しつつあるのが気のせいであればいいのだが。



 先発陣の力量は安定している。黒田というエースが強固な軸として確立し、高橋と佐々岡の両ベテランがその脇でローテーションを固め、ブロックもボーク癖を我慢して使ううちに安定してきた。シーズン途中で加入したデイビーが素晴らしい安定感で5勝したのが非常に大きく、2勝10敗と大誤算だった長谷川も終盤に復調の気配を感じさせた。ようやく様になってきたドラ1左腕の河内、2年目でプロ初勝利を挙げた大竹も飛躍の期待がかかる。ベテラン、中堅、若手の年齢バランスが取れ、苫米地・玉山・横松らの若手が控える構成は標準以上。

 毎年言われているが、リリーフはそれに比べると二枚も三枚も落ちる陣容。長年中継ぎの中心だった玉木が安定感を欠き、昨年30セーブを稼いだ小山田も昨年程の勢いがなく失速。2年目の天野が49試合登板で防御率3.00と踏ん張り、ルーキー永川も25セーブを挙げてクローザーに固定できそうなのは好材料だが、西川とニューマンが全く戦力にならなかった左腕は菊地原を勘定に入れても死屍累々の惨状。当然ここは積極補強ポイントで、5巡目指名の仁部は確かにドンピシャリの指名だが、仁部だけでは全然足りない。

 若い左腕は国木や大島といった先発型なので、中継ぎ強化にはできるだけ早く使える人材が欲しかった。野村宏之(近畿大→オリックス5巡目)、石井裕也(三菱重工横浜硬式野球クラブ)といった左腕はもちろん、桟原将司(新日鉄広畑→阪神4巡目)、松田克也(三菱重工神戸)、田中敬人(JEF西日本)らの即戦力右腕も積極的に補強すべきだったのでは。



 4番に座った新井の大不振は確かに痛かったが、それを差し引いて考えても今年は得点力に決め手がなかった印象がある。要因は何といっても打線の繋がりが悪かった点。前田と緒方のベテラン外野手は一定水準の成績を残し、シーズン途中から4番に固定されたシーツはシーズン前の「守備の人」というイメージを覆すほどよく打ったが、それが単発に終わることが多く、メンバー表程の恐怖感はなかった。江藤や金本がいた頃は強力打線のイメージがあったが、野村や前田がまだ一線を張っている現状を考えれば、そろそろ大胆な世代交代を推し進めて繋ぐ野球を取り戻していきたい。

 外野は層が厚い。廣瀬・鞘師・末永・田村・天谷と候補が揃い、いずれも守備走塁にも長けた広島カラーの選手。緒方と前田の耐用年数を迎えるまでに準備は整いそうで、浅井や木村拓も立派な戦力。うまく試しながらシフトしていければ、思ったよりも穴にならないだろうと思われる。

 手薄なのは内野で、シーツの活躍で長年の課題だったショートが埋まり危機感は払拭されたように見えるが、シーツが近い将来メジャー復帰することを計算に入れるとかなり手薄な状態。東出が完全に壁にぶち当たり、若手では栗原ぐらいしか芽吹く気配がないことを考えれば、スケールも人材の絶対数も足りない状態。3巡目指名の比嘉は新井と栗原がレギュラーに入れば候補がいなくなる大型内野手で、4巡目指名の尾形はショートを埋める人材としては申し分ない好選手。来年以降の継続補強は必要だが、人材のチョイスとしては的確な指名と言っていい。

 西山・瀬戸からうまく石原に世代交代が進んだ捕手だが、控え候補が木村一と大ベテラン西山ぐらいしかおらず、石原より下の年齢は来期20歳の山本翔だけという状況はちょっとヤバい。白濱は捕手としてのスケール的に申し分無く、石原を追いかける人材としてはうってつけ。年齢差6歳は捕手の絶対数を考えればいいタイミングだ。



 全体的に本格的な世代交代を先送りし続けてここまできた感のある広島だが、低迷が続いている状況を考えれば、そろそろ動き出さないと手遅れになっても仕方ない時期。少数精鋭型の指名が2年続いたが、手当てするべき個所は細かいところで山積している状態だけに、そろそろ思いきったアクションは起こしていきたい。

 今年を見れば、やはり投手の指名が仁部だけでは現状を打破できない。黒田の完投敗戦に象徴されるように、中心選手に負わせる役割が重すぎるきらいがあるのはこのチームの危ない体質。チーム全体・選手保有枠70人フルに使って戦うという姿勢を考えないと、この苦境を脱する光明は中々みつからない。



広 島
1巡 白濱 裕太 捕 手 広陵 右右 180・73 キャッチャーとしてのたたずまいに美しさすら感じる高校球界No.1捕手。昨夏から4大会連続で甲子園に出場し、打者を手玉に取る頭脳的なリードでエース西村健太朗(巨人2巡目)を引っ張った。甘い球を許さない強打も出色。
3巡 比嘉 寿光 内野手 早稲田大 右右 185・83 キャプテンとして沖縄に初の甲子園優勝を持ち返ってから4年、あの鳥谷敬(阪神自由枠)を差し置いて早稲田の4番でやっぱりキャプテン。だんだんインサイドアウトで振れるようになり、迫力すら感じさせるサード守備も絵になってきた。
4巡 尾形 佳紀 内野手 ホンダ 右左 176・70 駒澤大時代から天才の呼び声高かったが、故障で本領発揮できず。社会人で復活、開かずに軸回転でヘッドを走らせる打の技術に一層の磨きがかかり、バッテリーが嫌になるほどの俊足も健在。即戦力度◎。
5巡 仁部 智 投 手 TDK 左左 166・64 東北学院大時代に連勝街道驀進中の東北福祉大を止めた“小さな大エース”。上背がない体格なのに角度を感じる斬れ味はやや低迷しているが、独特の縦に切れ込むカーブの威力でお釣りがくる。真っ直ぐが戻れば左のセットアッパー候補に。




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