巨人と同率3位に終わったが、印象的にはもう少し勝っていてもいいような感覚がある。優勝を逃した年は決まって主力の故障者で泣いているが、今年もご多分に漏れず野手では岩村が手首骨折で半年リタイア、投手ではエース藤井が開幕直後に肘の手術で長期離脱。中継ぎの中心である石井もリタイア期間がありながら、それでもAクラスに留まった反発力は毎度見事と言うしかない。 前述したようにエース藤井を4月に欠いたが、石川が190イニングを奮投し12勝。チームで唯一規定投球回数に到達し、実質1枚看板でローテーションを引っ張り続けた精神力と体力は素晴らしいの一言に尽きる。開幕直前に獲得したベバリンが前半戦に活躍して8勝、故障リタイアがなければ2ケタは確実だっただけに左右の両輪はこの2人。 前年最多勝のホッジスは自滅を繰り返して帰国、最後までローテーションは石川頼みだったが、高校卒ルーキーの高井が1年間を一軍でほぼ通して5勝、鎌田が安定感ある投球で6勝と芽吹いてきたのは大きい。終盤には石堂が角度と力のある速球を武器に4勝と急上昇し、坂元と館山まで計算できれば、藤井の穴を埋める算段が充分に立つ。不確定要素は強いが平均年齢が若いだけに、期待感の方が先行する陣容。 ただしそれを形にするには競争が不可欠である上、絶対的な球威で押せる投手が先発に欲しいというのも本音。自由枠で川島を獲得したのは、その要求両面に応えれる指名で文句ないところ。2巡目指名の山田・5巡目指名の吉田も豪腕型で、数年後のローテーションはいい意味で混沌としそう。 リリーフ陣はロケットボーイズという左右の両輪が確立していて、それを河端・山本・花田・山部がカバーする安定感充分の顔触れ。FA宣言でメジャーを目指す高津の去就は気になるが、仮に残留しても近年の投球から絶対性は完全に薄れていて、本格的に後継は考えなければいけない時期。石井がクローザーに回れば大成しそうで、6巡目指名のサイド左腕・佐藤を石井の抜ける左のセットアッパーに据えられれば、穴は目立たなくなる。それを見越した指名なら食えないところ。 リーグ2位のチーム打率を記録しているように、現状で打線に穴らしい穴はない。ペタジーニの抜けた4番は恐ろしい進化を遂げたラミレスがしっかり埋め、鈴木がセ・リーグ移籍を期に中盤まで首位打者を争う大爆発。宮本・古田・稲葉らが繋ぐ打線は数字以上の得点力を感じさせたが、5年後を考えると一線で残っていそうなレギュラーは岩村ぐらい。これはここ数年言われ続けていることだが、レギュラーが固定化されていただけに安定した強みはあったが、それだけに次代の備えは遅れ気味だったのが現実的な心配のタネになっている。 外野は宮出が台頭の気配を見せ、志田・久保田・ユウイチ・内田がいて、4巡目指名の青木で何とか備えられそうだが、内野の特に二遊間はかなり不安な要素。来期34歳の宮本に頼る面が大きく城石も31歳、三木と野口が頭打ちで、梶本や大原はまだまだ時間がかかるタイプ。ドラフトで手を打っておかなければならないポジションだが、内野手の指名はゼロ。これはちょっと解せない。三木や野口の尻を叩く意味でもある程度の即効性が求められるので、鈴木隼人(旭川大)、岩館学(東洋大→巨人5巡目)、矢尾倫紀(青山学院大)辺りの大学生内野手にはトライしてほしかった。 いい加減に古田の後継者を用意しなければならない捕手も指名ゼロ。古田の存在感が大きすぎるのは百も承知だが、捕手は使っていかなければ成長できない特殊なポジション。将来的に10年正捕手を任せられそうなスケールを持っているのが米野1人で、米野を英才教育するにしても競争意識は必要。堀口圭介(水城)、小宮山慎二(横浜隼人→阪神5巡目)といった高校生捕手の指名は必要だった気がする。古田からの移行をうまく運ばないと、古田引退後に捕手が逆にアキレス腱になる可能性が現実的に出てくる。 投手は来期以降の伸び代が非常に楽しみだが、逆に野手は充実期のいまだからこそ積極的な手当てが待たれる状況。来期以降の補強でも何とか間に合いそうではあるが、それにしても野手の指名がたった1人というのはどうしても疑問として残る。5年後の目線が欠落しているとは思いたくないが、投手と野手に存在する年齢層ギャップはかなりはっきりした状況。危機が訪れてから手を打ち始めても、一度深みにはまると中々抜け出せない。そろそろヤクルトのフロントは勝負に出るべきでは。
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