星野阪神に2年連続勝ち越しと地力は見せたが、それが1年通じて持続しなかったのが2位に終わった要因。投高打低の傾向は変わらないが、「現状で行ける所まで行ってしまえ」というその場凌ぎで行き当たりばったりな戦術も目に付いた。山田監督がシーズン途中で解任され、来期は“オレ流”の落合博満が指揮を執る。猛毒か特効薬か、色々な意味で目が離せない来期の中日だ。 川上と朝倉を故障で欠き、バルデスが期待を大きく裏切り、野口もムラの強さが出て借金2つ。シーズン開幕当初の思惑からはだいぶかけ離れた戦いを強いられた先発陣だが、それでもリーグ防御率2位というのは立派の一言。移籍1年目の平井が12勝を稼ぎ代替エースと呼ぶに失礼な活躍を見せると、シーズン中盤から先発に固定された岡本が勝ち星にはあまり繋がらなかったが安定感充分の投球をし、崩壊寸前だったローテーションを力強く支えた。大ベテランの山本昌はチーム最多の156イニングを投げて9勝、山本昌と同じ39歳の紀藤が谷間を埋めて7勝と、このメンバーでもローテーションを作れた事実は、中日投手陣の層の厚さを改めて知らしめたというところ。 川上と朝倉が故障から復帰し、野口が本来の力を取り戻せば、山本昌や紀藤の年齢すら気にならなくなる強力な布陣。ローテーションの5〜6番手辺りは平松や久本、まだ山井にバルデスがいて、それに4巡目指名の佐藤まで考えれば熾烈な争いが繰り広げられることは必至。今年のように故障者がいてもある程度のローテーションが組めそうな上、長峰・高橋聡・さらに復帰すれば大きい中里という若い層も万全。現状ではまだ先発陣に目立った補強は必要ないという結論になる。 中継ぎのジョーカー岩瀬が中心のリリーフ陣は今年も磐石を維持。落合にいい時期のキレと体力が戻り、遠藤や山北はコントロールで進歩し自滅することが少なくなった。正津が一軍から姿を消せば同じサイドハンドの川岸を補強と妥協を見せず、中日がいかにリリーフ陣にしっかり補強の目を向けているかがよくわかる。唯一の不安要素は大塚の抜けるクローザーだが、3巡目指名の石川はクローザーとしてうってつけの素材。恐らくシーズン中から大塚の穴を埋めることは考えていただろうが、外国人補強ではなくてドラフトで速やかに手を打ってくる辺り、中日のフロントは意外に腹をくくってきたのかもしれない。 充実した投手陣に比べれば、4番打者を含めた和製大砲不在という弱点がはっきりしている野手陣だが、明確な弱点と言えるのは実際にそれぐらい。ただ、その唯一の弱点を解消するのに、現状ではまだ時間がかかりそうなのが困ったところ。開幕4番のアレックスに1年を4番で通す安定感がなく、2年ぶりの日本球界復帰となったクルーズは阪神時代と変わらぬ大型扇風機で解雇。2年連続で立浪に4番を任せることになったのは他に候補がいないという事情だが、それは森野・高橋光らと瀬間仲・櫻井の間の世代で候補を獲ってこなかったフロントの失策。 現状では新外国人か福留ぐらいしか候補がいないので、なんとか新外国人で凌ぎつつ、向こう2〜3年で和製の4番を据えていきたい。前述の瀬間仲と櫻井は間違いなく左右の候補だが、時間をかけても用意された座では伸びきらなくなる恐れがあるので、候補をぶち込んで競争を活性化させることは必要。1巡目指名の中川と6巡目指名の堂上もその競争に入るポテンシャルはある。1年やそこらで不安が払拭できるものではないが、この中から2人出てくれば弱点を解消する目処は立つ。それだけの期待感を持たせる指名であったのは確か。 アレックスと福留が右中間を固める外野に大きな弱点はないが、左右のツープラトンで埋めた大西と関川のレフトは年齢的に備えが土谷ぐらいしかおらず、長距離砲候補が見当たらない。5巡目指名の中村は守備と走塁なら即一軍レベルで、荒削りだが当たれば大きい長打が魅力。打撃で進化すれば蔵本と激しい争いが見られそうで、底上げには充分な指名。捕手は現在の谷繁と21歳の前田の間の層が帯に短し襷に長しで、候補が田上ぐらい。全体的な底上げの為に小川を指名したのだろうが、絶対数を考えれば富岡拓也(鳥栖商)のような高校生捕手の指名もあってよかったか。 相変わらずのバランス型指名だが、立浪を4番に据え続けたことに象徴されるように、「自前で4番候補を作っていこう」という意地のようなものも透けて見える。地元志向の向きも今年は強かったが、基本的には適材適所という形で理に叶ってさえいれば地元志向は強力な武器。 今年で取り敢えず自前4番候補の備えはできた感があるので、今後の課題は現在磐石の投手陣になる。補強すべきところを見定めた上でのバランス指名か、意地が先行した漫然とした指名だったのか、その答えは来年あたり出てきそうな気もするが、果たして。
|