シーズン中盤にも入らない段階で石毛監督が突然解任され、気の毒な時期に就任したレオン監督が火に油を注ぎ、最悪と言われた昨年の成績をさらに更新。ダイエー相手に1試合で29点を献上するなど、マイナス面での話題にはこと欠かなかった今年のオリックスだけに、ここから再浮上するのは生半可なことではない。 今年まで西武の監督を務めた伊原春樹を新監督に迎え、GMには元阪神監督の中村勝広氏を招聘。昨年はマック鈴木と吉井の逆輸入コンビで話題をさらったが、今年は違った方面から変えていこうという意欲がうっすら見えてくる。このチーム、変える必要があるのは選手よりも監督よりも、何よりもフロントなのだ。 昨年は具・金田・ユウキらを擁してリーグ2位の防御率を記録した投手陣が、どこをどう間違えたのか崩壊に注ぐ崩壊で完全に粉砕された。前代未聞のチーム防御率5.95は過去最悪、チーム総失点記録もあっさりと更新した。12球団で唯一規定投球回数に到達した投手が表れず、状況はまさしく死屍累々のように見えるが、取り敢えず来年の頭数は揃っている上、実績的に巻き返しの目が残っていない訳ではない。ユウキの故障の具合は懸念材料だが、具・小倉・金田らで組むローテーションはまだ見限れない力はある筈。本柳や相木辺りにもう一段、二段のジャンプアップは欲しいが、マック鈴木にフィリップスの巻き返し、そして自由枠獲得の歌藤や6巡目指名の松村の台頭があれば、総取っ替えしなければならないほどの絶望感はまだない。 徹底的に若さを嫌い高校生の上位指名を避けてきたオリックスだが、今年は2巡目で北海道の豪腕・柴田を指名。川口以来の高校生上位指名だが、指名が結局1人だけ云々ということではなく、久し振りにオリックスがこういう指名をしたという事実を変化の兆しと受け止めたい。柴田のポテンシャルはもちろん、来年以降に高校生不足を解消する指名の機運が高まれば、それだけで柴田を指名した意味は大きい。欲を言えば、新聞報道で指名が噂されていたグエン・トラン・フォク・アン(東洋大姫路)は是非指名したかったが、この辺の覚悟はまだ時間がかかるかもしれない。 リリーフ陣の崩壊も、元を正せば大久保と山口の故障離脱が原因で、この2人が帰ってくれば安定感は戻ってくる筈。ルーキーの加藤が4勝9セーブの活躍でブルペンを支え、阪神から連投可能な谷中をトレードで獲得。絶対数自体いない左のリリーバー候補には、クセ球左腕の野村を指名して応急手当をした。故障者の復帰待ちという前提はあるが、打つべき所に手は打った印象。萩原や嘉勢の復調があれば、来期は見違えている可能性もゼロではない。 投手陣を援護できなかった昨年と違い、今年のチーム打率.276はリーグ2位とよく打った。チーム本塁打も174本と倍増したが、それでも成績が落ちたのは、もちろん投手陣がそれ以上に吐き出したという事実が最も大きいのだが、場当たり的な打順編成を繰り返したことで一向に打線が繋がらなかった点も大きい。 「オーティズとブラウン両外国人が来年も機能すれば」という条件がつくが、伊原監督の仕事はまず打順毎の役割を選手に徹底させる意識の植え付け。リーグ最多安打で今年両リーグの右打者最高打率.350を記録した谷を中心に、ポイントゲッターには自身初の.300超えを達成した塩谷と両外国人をある程度固定していきたい。 守備に不安のあるオーティズをセカンドからDHに回すなら、二遊間も当然補強ポイント。ここは人材がある程度揃っているが、打力で一歩抜け出した後藤、守備と走塁で平野、実績で塩崎、阪神からトレードで古巣復帰の斉藤の争いで混沌としそう。4巡目指名の嶋村は、この中にない右の強打者タイプ。ここの争いは激しくなりそうだが、裏を返せば二遊間争いがオリックス内野陣全体を底上げする機運も高まりつつある。嶋村の指名は、その意味で結構重いかもしれない。 外野手は高校卒の小島、大学卒の由田を指名したが、葛城の去ったライトはダイエーからFA移籍の村松と年齢差10歳以上で、若い2人にとっては大チャンス。どのポジションもそうだが、とにかく若さがないので、高校生と大学生を同時に競わせても底上げには繋がる筈だ。チームにそもそも少ない長距離砲タイプで、外野にスケールを出す意味でもこの指名は旨味がある。 相変わらず高校生の指名割合が少ないが、それでもここ数年とは一味違った匂いを今年は感じる。これまでは明確な意図もなく、ただ大学卒・社会人出身の選手を場当たり的に獲得していた印象があるが、今年は例年よりは「弱点を解消してチームの底上げに繋げよう」という意思が見える。その点はもしかしたら中村GMの効果かもしれない。 本音を言えば、若さも強欲さもまだまだ足りない。チーム再建にもまだ時間がかかると思われる。しかし、一歩でも踏み出さなければチームは変わらない。後々になって今年がその一歩と言われるようなきっかけに、今年のドラフトを繋げていく責任と覚悟がフロントに求められる。
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