DEAD OR BASEBALL!

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Vol.156 2003年ドラフト総括(日本ハム編)
2003年11月23日(日)

 ヒルマン監督が就任し、そのヤンキース仕込みの采配に注目されたが、結局は何が何だかはっきりわからないまま昨年に続き5位、という印象でシーズンを終えた。投打共にもう一つ強烈に突き抜ける感覚がなく、「悪くはないんだけど」という状況がここ数年ずっと漂っている気がする。来年は札幌移転元年、そろそろ大きな発破をかけてもいい頃合だ。



 やっぱり悪くない先発陣だが、絶対的なエースはいない。開幕投手だったミラバルが193回2/3を投げて16勝と荒稼ぎしたが、防御率は規定投球回数到達者13人中最下位の4.65と、勝ち星ほど過信できなくなってきた。ミラバルに続く金村も10勝したが防御率は11/13の4.23と、大事なところでポカが多いタイプ。変則左腕の吉崎が前半戦で獅子奮迅の活躍を見せ8勝したのは大きいが、後半に疲れが出たのか失速し規定投球回数には届かず終い。今年にエースの期待がかかった昨年の新人王左腕・正田も、今年は5勝15敗と大きく負け越し飛躍できなかった。

 先発候補は江尻・隼人・関根といるので、壊滅的なことになる可能性は低いが、力量的には貯金を稼げるほどの上がり目にも過剰な期待は寄せ辛い。何より、半本格・半技巧派とも言うべき投手の揃った先発陣にスケールを感じなくなってきたのが、そこそこのイメージを脱せない要因。

 即戦力の期待は寄せ辛いが、自由枠で獲得した未完の150km右腕・糸井はそんな日ハム先発陣に骨っぽさを加味するにはうってつけの存在。4順目指名の押本も低目に集められる馬力型即戦力で、この2投手を指名できたのは単純に大きい。須永と金森は3〜4年後に訪れる投手陣再編のキーマンで、時期的にはドンピシャリ。意中の球団はあるだろうが、須永にとっては大暴れできるいいチャンス。入団してほしい。

 中継ぎ候補は現状でそれなりに安定したメンバーのせいか、ピンポイントの指名はなし。建山と伊達に安定感があり、立石に芝草のベテラン組、左は高橋・加藤・清水がいて、磐石とは言えないまでも大崩れはなさそう。佐々木・武田・山口まで数えて、伊達・建山・井場の誰かがクローザーで固定できれば充実度と厚みが出てくる。



 小笠原という絶対的な軸が中心に座る打線は、移籍で復活した坪井の大爆発と木元の成長でだいぶ格好がついてきた。4番を任されたエチェバリアも31本塁打と次第点の成績を残し、中軸は固まった格好。問題はその周囲をどう固めるかで、下位打線はどの選手も帯に短し襷に長しの状態。田中賢や森本と言った若手がなかなか伸びず、田中幸や奈良原に頼りっきりの状態からいい加減に一歩踏み出さないと、打線も結局「悪くないんだけど」の上を行けない。

 井出と石本が安定しないセンターには恐らく新庄剛志(前メッツ)が入ることになりそうで、金子がセカンドに入るにしてもショートに入るにしても、センターラインの守備力は計算できる。新庄が下位打線で阪神最終年ほどの打棒を発揮できれば言うことないのだが、20代中盤の外野手層がスッポリ抜け落ちている以上、ここはドラフトで補強しておきたかった。それだけに外野手の指名ゼロはちょっとわからない。

 ショート候補で指名した稲田は1年目から即ポジションを取れそうな力量があり、チーム事情的にもピンポイント指名だが、同様に外野のテコ入れもしておきたかった。新庄を計算に入れたのだろうが、それでも絶対数が少なすぎる。森本や紺田の尻を叩く意味でも、濱村大和(北海道尚志学園)、深山悦男(修徳)、鈴木雅巳(日大三島)辺りは下位でも狙い撃ちできた逸材。

 高橋信が打力で正捕手に近付いた捕手は、高校生捕手の渡部を指名。横浜からトレードで中嶋を獲得しているが、打力に進歩の見えないドラ1捕手・實松に喝を与える意味ではいいタイミング。高橋信や中嶋から盗めるものはゴロゴロしている筈だ。



 ドラフトの外でも効果的な補強をしている今年の日本ハムだが、ドラフトでも要所要所のツボを抑えた指名で、須永を口説き落とせれば悪くないどころか充分な補強ができそうだ。野手の層の薄さは解消されきっていないが、それは新庄の活躍以上に来年のドラフトにかかる部分が大きい。来年のドラフトでも「悪くないんだけど」の上を行けるか、真価が問われる04年になりそうな感。



日本ハム
自由 糸井 嘉男 投 手 近畿大 右左 186・80 肩を故障して、実質投手生活は3年秋から。なのに実戦1年で自由枠までこぎつけたのは、それだけ素材自体が凄いから。MAX151kmのスケール感と遠投120m・50m6秒を切る抜群の身体能力でこれからの伸び代は末恐ろしい。
2巡 須永 英輝 投 手 浦和学院 左左 180・74 2年夏に甲子園で見せたきらめきが、今年の県大会では肩の故障で発揮できず。右打者のインコースを容赦なく崩す速球に、全く同じ腕の振りからスライダー、カーブ、スクリューと散らして並の高校生では手も足も出ず。
4巡 押本 健彦 投 手 日産自動車 右右 180・85 春のスポニチ大会、対松下電気戦で延長15回をゼロに抑えた集中力とスタミナには度肝を抜かれた。馬力の乗ったパワフルな直球を低目に集め、縦に鋭く割れるカーブで打者のタイミングを壊す。
5巡 稲田 直人 内野手 JFE東日本 右左 177・75 駒澤大時代から注目された天才遊撃手にとってはプロ指名が遅過ぎた感も。カン所の優れた守備の嗅覚、深い位置から簡単に刺してみせる強肩、快足で塁上を描き回す走力、対応力に優れたスプレーヒッティングと限りなく即戦力。
6巡 金森 敬之 投 手 東海大菅生 右右 182・81 指のかかりが出色の速球は、140km台をコンスタントに集められムラがない。下半身が強靭で体の使い方を知っているから、どのコースでもきっちりカウントが取れる。牽制にベースカバー俊敏、投手としてのセンスが体中に詰まっている。
7巡 渡部 龍一 捕手 札幌一 右右 171・83 手首がやたら強いのか、詰まったような打球が左中間に右中間にグングン伸びて、ワンバウンドしそうな低い送球がベース手前でもう一伸びして走者の手元でタッチアウト。インサイドワーク鍛えれば一軍の正捕手も近いミスターキャッチャー。




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