開幕前の春季キャンプでいきなりローズが帰国、波乱の幕開けとなった今年のロッテだが、終わってみればギリギリ勝率.500を割る4位で、8年連続Bクラスに沈んだ。来期はその最後のAクラス入りを果たしたボビー・バレンタイン監督が再び指揮を執るが、長年言われ続けたまま解消されていない投高打低傾向を修正しない限り厳しい戦いが予想される。 今年も大エース黒木知は復帰できなかったが、今年はきっちり貯金を作った先発陣には一定の水準以上の力量がある。リーグ最多の204回1/3を投げて15勝を稼いだ清水直と14勝のミンチーが二枚看板で、シーズン途中から先発に回った小林宏が規定投球回数に達して10勝と頑張った。それに続いた渡辺俊も規定投球回数到達、9勝ながら貯金を5つも作って主戦級の働きぶり。小野が不振から脱せず、貴重な先発左腕の加藤も1勝5敗と全く戦力にならなかったが、これに酒井や鈴木が加わればまだ数年は計算できる陣容。 今年はやや苦しんだが小林雅というリーグを代表するクローザーがいて、それでも勝ちパターンに持ち込めなかった要因に、間を繋ぐリリーバーに安定感がなかった点がある。昨年開花の兆しを見せた川井にキレが見られず、戸部・神田・舩木・藤田も苦しい場面を任せられるだけの信頼感を勝ち取れなかった。勢いを感じる投球で唯一安定した数字を出したシコースキーの解雇はどうしても解せず、ドラフトで捕強するのかと思いきや指名した投手は5人全て高校生という極端さ。 黒木知を含めた先発5人の平均年齢が30歳ちょうどで、5年後を考えれば確かに次代の備えが必要な時期。加えて若手と言える若手は来期20歳の浅間と22歳の田中良ぐらいだから、確かにいまのロッテに高校生投手は必要な人材。本来はもう少し中継ぎを任せられる即戦力投手を獲ってほしいのだが、指名した選手はどれも将来のエース候補と言っていいポテンシャルがある。ここまではっきりやられればかえって見えてくるスカウトの信念、やや暴走気味にも映るが、それならば5年後を楽しみにしたい。 中継ぎ投手以上にチームの足を引っ張ったのが、得点力不足を今年も解消できなかった打線のひ弱さ。ローズの代わりの4番候補として急遽獲得したフェルナンデスは.303、32本塁打、100打点と立派な数字を残したが、その周囲を固める選手層の薄さはどうしても解消できない。 .303を打ったショートが退団し、今年絶好調だった堀も来期35歳、年毎のムラが大きいタイプでアテにはしにくい面がある。福浦は.300を堅守して計算できる数少ないバッターだが、クリーンナップにある程度の格好がついたところでリードオフマンが固定できなければ得点力は上がらない。1番に期待されていたサブローが伸びきらず、井上純や小坂辺りで今年も持ち回り状態。喜多が足踏み状態に入り、次の候補が共に来期2年目の西岡とイースタン盗塁王の早坂だから、とにかく打てる野手、層を考えれば内外野問わず欲しいところだったが、フタを開けてみれば野手の指名は捕手の田中だけ。これはいささかわからないところ。 なかなか正捕手が固まらないが、打力でレギュラー奪取が見えるところまできた里崎、強肩の清水、インサイドワークの辻と、30歳以下で競い合う状況は整っている。その後の世代を整備する為に高校生捕手を、というならわかるが、チーム状況からして打てる野手に比べれば田中の指名は優先順位に疑問が沸く。比嘉寿光(早稲田大→広島3巡目)、中村公治(東北福祉大→中日5巡目)、片岡昭吾(JR東日本)辺りのパワーヒッター、本当は何人指名してもいい筈なのだが。 6人中5人が高校生投手だから、ロッテがどういうベクトルをこのドラフトに置いていたのか、それははっきりと見えている。だが、矛盾する言い方になるがそれだけにいまの戦力状況をどのように捉えているのか、それが全く見えてこないドラフトだったというのも実感としてある。5〜6年後に大投手王国ができていれば今年のドラフトは必ずピックアップされるだろうが、野手は投手よりも猶予期間がはっきり少ない状況。 現状は新外国人選手やトレードで凌ぐのだろうか。ここ数年は停滞傾向にあるロッテファームにも不安はある。現時点で回答を出すのは難しい状況だが、目に見える危機が実際に目の前に現れてから手を打っても遅い。5年後、楽しみも大きいが、現時点では不安もそれ以上に大きい。
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