最後までダイエーと優勝を争って2位に終わった格好だが、戦力層の差を考えれば大きな壁を感じる2位であったのも実感としてある。パ・リーグの安定勢力であることは間違いないが、チームの屋台骨だった松井がメジャー移籍を表明し、黄金時代からの正捕手・伊東が現役引退・監督就任。チームが過渡期にあることも間違いない。こういう時期のドラフトは、今後のベクトルの一端を示す重要な要素になる。 開幕前は12球団トップクラスの力量と思われていた先発陣だが、規定投球回数に到達した松坂と後藤以外は軒並み総崩れ状態に陥った。7年連続2ケタ勝利の西口が僅か6勝に終わり、石井貴もリタイアしてアテにできず終い。許銘傑・張誌家の台湾コンビも調整遅れが響いて足踏み状態に入った。11勝を挙げた貴重な先発左腕・三井も好不調のムラが激しく、磐石の信頼は置き難いタイプ。こうなると先発左腕の不足という要素が途端にクローズアップされてくる。 鳥谷部・小野寺・長田といった辺りに伸び代があり、石井貴や西口がまだはっきり後退する年齢ではないこと、さらに台湾コンビの捲土重来が現実的な点まで考えれば、まだ深刻に考える段階ではないことも確か。何より松坂という若さと力の絶対値に溢れた存在がいることで、周辺の手当てには余裕を持って臨めるという点が大きい。松川は左のエース格になり得る素材だが、線の細さとボリューム感の乏しさから3〜4年は最低見ておきたい素材。3〜4年後には西口や石井貴の手当てを現実的に考える段階。22歳以下の投手が竹内1人なので、杉山にも先発候補のチャンスはある筈。タイミング的には申し分ないところ。 崩れた先発陣を支えたのは、森→豊田の絶対的な継投が見せた相変わらずの安定感。ただし、終盤になって捕まる傾向が増えたのはここ数年のしわ寄せの影響もあるだろうが、土肥に安定感のなくなった左不足の負担がここでも気になる要素として出てくる。帆足はようやく形になってきたが、星野が伸び悩み、水尾が退団。右投手も森に繋ぐ流れが作れず、コマは何枚か補充したいところ。自由枠の山崎と6巡目の岡本は恐らく中継ぎ強化の意図がある指名だろうが、両者とも長いイニングを勢いで乗りきれるタイプなので、将来的には先発で使ってみたいところ。チーム事情から山崎は今年の長田のように便利使いされる可能性もあるが、どちらにしろ役割を固定した方が力は発揮しやすい筈。 松井の抜けた穴は走好守いずれの面で大きすぎる問題で、来期のチーム編成そのものを白紙に戻して考える必要のある一大事。最大の問題は、ショートという要のポジションを含めた内野の手薄い印象が、松井が抜けた途端にアキレス健に化けること。ポスト松井と呼ばれてきた中島も、経験と力量を考えればいきなり140試合ということは考えにくく、平尾や水田との併用でいく公算が大。松井の代わりは誰にもできないが、将来的には140試合守れるクラスの選手を据えていきたい。 黒瀬は中島に発破をかけるポスト松井第2弾だが、内野はどこも補強が必要な状態。カブレラの残ったクリーンナップに一定の水準以上の破壊力が残っていることを考えれば、矢尾倫紀(青山学院大)、岩館学(東洋大→巨人5巡目)、澤井道久(東海理化)辺りの守備に安心感のある内野手指名は欲しかったところ。西武は若手内野手の成長が遅く、守備面で安心して使えるスペシャリストにも乏しい。そういう現実をショート松井の圧倒的な存在感がうまく隠してきたが、時間的な猶予はもうないなというのが今年の印象。 大島がクリーンナップ候補として開花してきた外野陣だが、内野と同じように赤田や高山という若手が伸び悩んでいることを考えれば、戦力の絶対数は多くない。和田はDHで使われることも多いが、小関や柴田がもう若手と呼べない年齢であること、さらに爆発力の乏しさを考えれば、次代の備えは現実的に準備しなければならない段階だ。松坂は次代の外野手候補の中では高山と同じ右の長距離砲のテコ入れを狙った指名。外野守備で魅せる身体能力も高く、センターが固定されないチーム事情からもチャンスは意外に早くやってくるかもしれない。 伊東がいよいよ現役引退したが、正捕手争いは依然として混沌としている。若さと伸び代では細川に分があり、安定度では野田に一日の長があるが、伊東の神通力の影響かどちらもレギュラーと言うには不安の方が大きく横一線。馬力型のパワー系捕手・佐藤の指名は、2人と違うタイプだけに正捕手争いを引っ掻きまわす可能性もあるが、投手陣の為には細川か野田か、早いうちに固定したいところ。 投手は現状で欲しいところを抑え、野手はトータルなバランスを重視したという印象の西武。伊東新監督にとっては難しい時期に初のドラフトを迎えた訳だが、若干大人しいかなという感覚もある。西武は松坂以降に超大物の獲得にあまり乗り気ではなく、全体的に満遍なく指名というドラフトを展開しているが、根本陸男氏がフロントにいた時代は大技・裏技駆使しての豪腕が持ち味だった筈。 プロで4番やエースを張れる大物は、毎年そう何人も出るものではないが、もっと強欲に選手を集めて黄金期を形成したのがかつての西武の強み。そのときの主力を揃って放出した過渡期を乗り越えた先に松井や西口、松坂がいたが、選手起用も含めて言葉は悪いが場当たり的な方針が目についてきた最近の西武。この難しい時代を乗り越えた先のビジョン、それは今年のドラフトでもまだ明確には見えてこない。
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