DEAD OR BASEBALL!

oz【MAIL

Vol.148 「日本代表」を読む
2003年09月30日(火)

 9月29日、野球の日本代表編成委員会はアテネ五輪地区予選を兼ねたアジア選手権(10月31日〜11月7日・札幌)の日本代表22人を発表した。選出された選手は以下の通り(成績は9月29日現在)。



◎投手(9名)
 ・上原浩治(巨人・28) 26試合 15勝5敗 3.18
 ・木佐貫洋(巨人・23) 24試合 10勝6敗 3.19
 ・石井弘寿(ヤクルト・26) 30試合 5勝1敗1S 2.45
 ・岩瀬仁紀(中日・28) 56試合 5勝2敗4S 1.03
 ・安藤優也(阪神・25) 50試合 5勝2敗5S 1.65
 ・黒田博樹(広島・28) 25試合 11勝8敗 3.24
 ・松坂大輔(西武・23) 28試合 16勝7敗 2.80
 ・和田毅(ダイエー・22) 22試合 13勝5敗 3.51
 ・小林雅英(ロッテ・29) 42試合 0勝2敗31S 3.00

◎捕手(2名)
 ・谷繁元信(中日・32) 105試合 .249 14本 60打点 3盗塁
 ・城島健司(ダイエー・27) 136試合 .335 32本 117打点 8盗塁

◎内野手(5名)
 ・二岡智宏(巨人・27) 137試合 .301 28本 66打点 14盗塁
 ・宮本慎也(ヤクルト・32歳) 130試合 .289 6本 38打点 11盗塁
 ・井端弘和(中日・28) 105試合 .267 5本 27打点 5盗塁
 ・松井稼頭央(西武・27) 136試合 .303 31本 80打点 13盗塁
 ・小笠原道大(日本ハム・29) 124試合 .361 30本 98打点 8盗塁

◎外野手(6名)
 ・高橋由伸(巨人・28) 115試合 .325 26本 68打点 3盗塁
 ・福留孝介(中日・26) 132試合 .319 32本 91打点 9盗塁
 ・赤星憲広(阪神・27) 135試合 .311 1本 34打点 57盗塁
 ・木村拓也(広島・31) 119試合 .289 13本 37打点 14盗塁
 ・和田一浩(西武・31) 122試合 .344 29本 87打点 8盗塁
 ・谷佳知(オリックス・30) 130試合 .342 18本 85打点 8盗塁



 長嶋茂雄監督の言うように、基本的には20代の若いメンバーを中心に選ばれた。チーム最年長の谷繁は32歳、この構成は恐らく韓国や台湾よりも若くなったと思われる。

 このメンバーでチーム編成を考えてみた。報道などを加味して考えた上で、投手編成とスターティングオーダーを予想してみよう。



先発……上原、黒田、和田毅
右中継ぎ……木佐貫、安藤、松坂
左中継ぎ……石井、岩瀬
クローザー……小林

1(一)小笠原
2(遊)松井
3(右)福留
4(捕)城島
5(左)高橋
6(指)和田一
7(三)二岡
8(二)木村
9(中)赤星

控え
捕手……谷繁
内野手……宮本、井端
外野手……谷



 投手から見てみる。先発は過去の例に加え、計3試合という事情から3人で回転させることができるので、上原、黒田、それに和田毅の三本柱。和田毅は実際には中継ぎで起用されそうだが、ある程度長いイニングを投げることで持ち味が出るタイプなので、先発で期待してみた。

 松坂をリリーフに回したのは暴挙かもしれないが、先発が崩れたときのロングリリーフとしてフル回転できるのは松坂しかいない。と言うのも、和田毅はともかく上原や黒田は典型的な先発完投型。こういう投手が短期決戦でリリーフに回るのは、正直言ってリスクの方が大きく感じる。長年染みついた先発用の調整とリリーフの肩の作り方は決定的に違う。松坂をリリーフに回したい、と言うよりも、こういう投手陣を選んだ以上、上原と黒田には先発以外任せにくいというのが本音。

 先発がゲームを作れれば、松坂は今年不安定さが目立つ小林と並んでダブルクローザーに据えることもできる。使い方さえ間違えなければオールマイティーに活躍できるのが、松坂のスタミナとセンス。ジョーカーという意味で松坂をベンチに置いてみたいのだが、どうだろう。

 木佐貫も本当は先発完投型だが、東都リーグで連投やリリーフの経験は揉まれている筈。大学卒1年目、何とか対応してほしい。似たタイプだった安藤が今年リリーフに回って、阪神優勝の陰のMVPとして大車輪の活躍をした。二人とも狙って三振が取れる上、エンジンのかかりも割と早いタイプ。木佐貫にもリリーフの適性はありそうな気がする。

 左でスタンバイの石井と岩瀬に、クローザーを任される小林は、リリーフのスペシャリスト。岩瀬は中日リリーフ陣で入団以来ずっとジョーカー的な役割を全うしてきた、文字通りの切り札。三振も内野ゴロも狙えるタイプで、接戦になれば「困ったときの岩瀬頼み」という場面がありそう。投入のタイミングが最大の問題になる。

 考えようによってはバランスを何とか取れる投手陣に比べ、野手はバランスの悪さが気になる構成となった感がある。内野手5人中、小笠原を除いた4人は所属チームでショートを任せられている選手。名手揃いであることは間違いないが、ショートのポジションは一つだけ。どうやって選手を割り振るのだろう。

 今岡誠(阪神)、井口資仁、松中信彦(ダイエー)らの辞退、中村紀洋(近鉄)の絶不調が大きく響いた格好だが、チームと言うよりも選手の寄せ集めという印象になったのは確か。広島でセカンド経験の豊富な木村を内野に回して考えたが、本来木村は内外野兼用のユーティリティープレイヤーとしての選出の筈。

 報道では二岡をサード、宮本をセカンドに回すと伝えられている。横よりも前の動きに強さのある二岡はサードの適性も確かにありそうだが、急場凌ぎの感が拭えないのも事実で不安は残る。宮本も確かにショートの職人だが、逆の動きが多くなるセカンドで本来の守備力を発揮できるかどうか、これも不安はあるコンバートだ。

 そもそも守備固めがいないのも気になる。井端も内外野こなせるが、サードというとイメージが沸きにくいタイプ。ファーストには数年前に公式戦で守備経験のある谷か和田が入り、サードには今年ファーストからコンバートされるも無難な守備を見せた小笠原を入れる、というのも一案かもしれない。

 その小笠原を敢えて切り込み隊長にもってきたのは、その驚異的な対応型バッティングに裏打ちされた圧倒的な打率も当然あるが、今年阪神で猛威を奮った2番赤星→3番金本のラインを再現してみたかった為。塁上の赤星が金本の打撃で盗塁を助けられ、金本が得点圏に進んだ赤星をきっちり返すという抜群の相乗効果は、今年の阪神を象徴する驚異的な繋がりと流れを生んだ。

 このコンビがセ・リーグ5球団のバッテリーをとことん悩ませ苦しめたのは、周知の事実。赤星の圧倒的な盗塁数は、金本とのコンビがなければここまでの数字になっていた保証はない。金本は読みで打つタイプだが、小笠原の対応力なら赤星の盗塁を最大限に生かす驚異の流れが生み出せる可能性があると見る。

 捕手は結局、古田敦也(ヤクルト)が選ばれなかった。今年38歳の年齢と慢性的なヒザの故障は確かに気になるだろうが、正捕手を予定されている城島は4番の打棒も求められる状況の上、10月末まで日本シリーズが入っている為、対戦国の研究はどうしても遅れる筈。そういう意味でも、配球の研究とアドバイスができる古田をベンチに入れておくことはプラスが大きかった気がする。

 短期決戦における打者の洞察力に抜群の冴えがあり、強烈なキャプテンシーも持っている古田が代表に選ばれなかったのは、メンバーの確定したいまでも不可解である。韓国、台湾チームとの戦い方を過去の国際大会で経験し、よく知っているのも強みの一つ。

 捕手2人体制では控え捕手がいなくなることもあり、城島を指名打者などで併用できなくなる恐れも確かにある。しかし、松中や中村が選ばれていない以上、城島をファーストで起用し、古田にもしものことがあれば城島をファーストから持ってくるという方法もあった(指名打者で出場の選手は試合途中から守備につくことが不可)。捕手経験のある和田一や木村の選出は、もしかしたら捕手2人体制における保険を兼ねているのかもしれない。

 チームバランスという点では、100点を与えることのできるチーム編成ではない。しかし、その要因は先にも述べたように相次ぐ辞退選手の存在にあるとも言える。出場辞退選手の中にはケガや故障を言い訳に、敢えて五輪を蹴ったかのような選手もいる。事実、その選手は調整さえすれば五輪予選には間に合うと言われているが、それだけの労力をはたくに見合う価値や名誉を、五輪代表からは感じなかったのかもしれない。

 “ドリームチーム”を掲げて出港した全日本チームだが、船出から躓きがあった感があるのは余計な心配だろうか。その原因が選手側の考え方に根差しているとしたら、“ドリームチーム”が看板倒れになるどころか、ファンの注目すら集められない可能性も出てくる。

 結果はやってみないとわからない。勝つことは可能なメンバーが集まったという見方はできるが、国際舞台軽視という病理が選手の側にも深く侵食しているとしたら、この国に住む一介の野球好きとしては少し寂しいものがあるというのも、漠然とした実感ではある。



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