<投手分析> 先発…井川、ムーア、藪、伊良部、川尻、藤田、藤川、安藤 右中継ぎ…谷中、金澤、杉山、(福原) 左中継ぎ…下柳、中村泰、吉野、佐久本、三東 クローザー…ウィリアムス、ポート 昨年と比較すると、半数近くの顔触れが変わったような印象を受ける。今オフ、ベテランを中心に大量の戦力外通告を出したが、新戦力を除外して考えてもそれなりの顔触れで、土台自体はなかなか期待を抱かせる構成ではある。 先発陣は井川が若く絶対的なエースとして君臨し、ムーア・藪・伊良部・川尻の実績組と、昨期揃って初勝利を挙げた藤田・藤川・安藤のドラ1トリオ(安藤は厳密に言えば違うが)が残りの椅子を争うという格好で、非常に面白い争いが繰り広げられそう。日本球界復帰の伊良部にマスコミの目線は集まっているが、若い3人が今年殻を破れば、向こう10年は磐石なローテーションが約束される。その意味で藤田・藤川・安藤は、近い将来の阪神投手陣の命運を握る存在と言ってもいい。 リリーフ陣は、昨年シーズン前の想定とほぼ100%顔触れが入れ替わった。右の柱的存在だった福原が肩の故障で大幅に出遅れる以上、その間はある程度手を変え品を変えで繋いでいくことになりそうだ。 現時点ではドラフト4巡目指名の中村泰の評価が高い。ちょうど星野監督が中日監督時代に、1年目の岩瀬を見出して球界最強のセットアップサウスポーに仕立てたように、もし中村がリリーフ陣の救世主的存在になれば、やりくりはグッと楽になる筈。中村泰に限ったことではないが、顔触れが入れ替わってもリリーフの軸的存在はいない状態。誰がその競争から抜け出すか、楽しみと言えば楽しみだが、反面怖さもつきまとう。 クローザーは昨年同様で新外国人に頼ることになりそう。変則サウスポーのウィリアムス、バルデス以上のムービングボールに鋭いフォークを操るというポートの2人だが、意外に面白そうなのがウィリアムス。サイドハンドから繰り出されるストレートのキレ味は、全盛期の田村勤を彷彿とさせる。 診断…先発陣は、絶対的な井川を軸に実績組と新興勢力が居並ぶ多士済々の顔触れ。新戦力が並ぶリリーフ陣は競争熾烈だが、軸ができなければ一気の崩壊という脆さもあるか。 <野手分析> 1(二)今岡 2(遊)藤本 3(左)金本 4(中)濱中 5(右)桧山 6(三)アリアス 7(一)片岡 8(捕)矢野 9(投) 控え 捕手…野口、浅井 内野手…関本、秀太、沖原、八木、上坂 外野手…赤星、平下、中村豊 スポーツ紙等で一般に報じられているのが上記のオーダーであるが、正直言って濱中を1年中堅手で使うのはかなりのリスクを伴う。金本も桧山も決して外野守備は下手ではないが、名手というほどの巧さはないし守備範囲も中の上というところ。個人的な考えを述べれば、1年というスパンで見たら赤星の中堅固定は絶対に欠かせない。この守備力で左右される試合が、少なくとも10試合はあると思う。 FA移籍の金本を外す訳にはいかない以上、桧山か濱中のどちらかが外れなければならない。しかし新旧生え抜きの主砲、濱中の将来性も、桧山の勝負強さとリーダーシップも、本音を言えばどちらも外せない要素。そこで私の提案は、濱中の本格的な三塁コンバート。 1(二)今岡 2(中)赤星 3(左)金本 4(三)濱中 5(右)桧山 6(一)アリアスor片岡 7(遊)藤本 8(捕)矢野 9(投) 中堅の爆弾が三塁に移っただけだと言われるかも知れないし、捲土重来を期す片岡を1年で見限ることになりかねないオーダーだが、金本を獲得してしまった以上、濱中を主軸として使うにはこういう方法しかない。かなり現実味のないオーダーではあるが、今年の阪神は戦力層こそ厚みを増したものの、当たりのないクジを引かされ続ける運命にあることは事実。どうやっても大きなリスクを伴う選択肢しか選べない状況にあるのだ。 仮にこのオーダーを組んだところで、上昇気配に太鼓判が押せる関本や平下の入り込む隙間は、アリ1匹潜り込む余地もない。確かに戦力は増したが、不確定要素が強いのも事実で、上昇度という面では正直低い。今年戦えたとしても、それ以降を考えると、結構不安。 ちょっと注目したいのが“代打の神様”八木の打棒。昨期は19安打で24打点という圧倒的な数字。チャンスに出番の多い代打屋といえど、この勝負強さは尋常じゃない。八木が出てくると一気にスタンドが盛り上がる気持ち、よく分かります。 診断…戦力は確かにある。金本の加入で厚みは出た。しかし、それに伴って赤星の中堅は? 濱中の立場は? 桧山の扱いは? 増えた難問に解消されぬ遊撃日照りが、イビツな構成を炙り出す。 <総合分析> 戦力アップは間違いないが、悪い意味で戦力の飽和を感じる。投手陣は数は揃ったが未知の要素が強く、野手陣はバランスを考慮するのにとことん難儀するという具合。 実は12球団で最も上昇カーブに期待がある球団だし、個人的には今年最も注目したい球団である。爆弾要素が多く、今年も阪神ファンは一喜一憂を迫られる可能性が高いが、不安要素が出ないうちにあれよあれよと勝ち進む可能性もゼロではない。 もちろん、雪崩をうったように転げ落ちていく怖さもまた、ゼロではない。正直言って、今年の阪神は読めない。読めないからこそ楽しみ。
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