DEAD OR BASEBALL!

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Vol.112 2002年ドラフト総括(ロッテ編)
2002年11月29日(金)

 毎年のシーズン前ではここ数年ずっと「台風の目」に挙げられるロッテだが、「台風の目」から抜け出せない現状は一言で言って停滞傾向。そこそこの戦力から抜け出せないからには、ファームからの輩出かドラフト、どちらかで劇的な効果が欲しいところ。



 投手力は悪くない。エース黒木知が長期離脱で1試合も登板がない中、ミンチー、清水直、加藤の3人が規定投球回数に達し、揃って二ケタ勝利。シコースキー、小林宏、川井が勢い溢れる中継ぎを形成し、小林雅が33連続SPという絶対的な働きで終盤を締める。中盤のパターンは西武に負けない磐石さを誇った今年のロッテ。

 小野や渡辺俊の低迷が、勝ち星を上積みできなかった要因。今年の3本柱の星勘定を計算すると40勝40敗でプラマイゼロ、ローテーションを1年守った働きは評価できるにしても、そこから貯金を作り出せる先発が何人か出てこない限り、ロッテが「台風の目」から抜け出すことは難しい。高木、薮田、長崎の先発繰り上げがあっても貯金は望めず、黒木知と小野の先発ローテーション復帰はAクラスへの命綱。

 それが望めないならば、トレードかドラフトで即戦力の投手を獲得して層を分厚くするしかない。トレードの目が波留や垣内に向いた以上、手段はドラフトになるのが自然な考え方。ただ、難しいのは黒木知や小野が先発に復帰できた場合は即戦力投手が余剰戦力になる目もあるということで、黒木知の存在の大きさが戦力編成の判断を難しくしているのも恐らく事実。

 地元の逸材である浅間を上位で獲得し、下位で即戦力投手を3人獲得したのはベターな判断というところだが、高校卒2人に即戦力2名の指名でもよかった気がする。元々ロッテのファームには高校卒投手の数自体が少なく、小林宏を除けば田中良1人が突出して若いというイビツな構成。この若さ枯渇寸前の状態に浅間1人では若さは注入しきれない。即戦力3人の活躍の場は黒木知、小野の復帰があれば途端に狭められる状況で、中継ぎにも入れるか微妙なところ。トータルで見れば充実期に近い投手陣だからこそ、高校生投手の指名がもう1人はあってよかったかも。



 野手に目を向ければ、とにかく現有戦力では絶対数自体足りないというのが正直なところ。明るい材料を探せばサブローが規定打席到達でようやく一人立ちというぐらいで、前年首位打者の福浦、遊撃職人小坂の成績も右肩下がりとかんばしくない。致命的なのは長距離砲の不足で、ボーリックや初芝の耐用年数を迎えるまでに新たな主砲を準備できなかったという印象。メイの23本塁打90打点がやけに目立つ現状は、得点力不足が慢性化しつつある状況を描き出す。元横浜ローズの獲得も爆弾要素が強く、信頼できるか怪しさが拭えない。

 次代の備えがファームにいない訳ではない。外野手転向を果たした寺本を筆頭に、喜多、今江というのが候補だが、澤井、渡辺正のドラ1コンビが全く殻を破れず、大塚、立川が若手と言える年齢をとっくに脱した現在、ロッテのファームに活気があるのか本当に疑問。ファームでの足踏み期間が長い上に、一軍の野手陣、特に主軸の年齢層が上がっている現状を考えれば、即戦力・高校生問わず野手はいくら獲ってもいいのでは?という感覚になる。

 ファームに素質豊かな高校生を多数送り込んで活気を戻し、一軍にも即効性の戦力を注入して若手輩出まで戦力をもたせる。こういう時期のドラフトは本当に難しいが、高校生野手3人の指名は少な過ぎる気がする。西岡の1巡目指名は昨年の今江に続く高校生野手上位指名で、ロッテフロントの意気込みを感じる指名ではある。若さ不足とレギュラー不在の捕手陣に金沢を送り込む指名も理に適ってはいるが、それでも少ないというのが正直な感覚。

 早坂を含めた3人をファームに送る計画かも知れないが、西岡は高校生でもかなり早い時期に一軍でやれるポテンシャルがある。こういう選手は1軍に置いてバシバシ鍛えた方が伸び率が高いのだが、ローズが来る以上はファームでの熟成期間を課せられる。確かにファームの刺激剤としては納得できるが、ローズ、波留、垣内の獲得が一軍に恵みと若手抜擢までの時間的猶予をもたらすか、ちょっと危ない。

 鞘師智也(東海大→広島4巡目)、紺田敏正(国士舘大→日本ハム6巡目)、竹原直隆(城西大)、平石洋介(同志社大)は若さの欠けつつある外野に活気を与える好素材で、特に鞘士と竹原の長打力は今のロッテには旨味のある戦力。地元千葉の長田昌浩(東海大望洋→巨人4巡目)、瑞慶山浩士(所沢商)ら高校生長距離砲の総獲り計画は面白かったかも。若さと即効性を同時に要する難しいドラフトだったのは確かだが、野手より投手の方が指名人数の多かったことにはちょっと疑問符がつく気も。            



ロッテ
1巡 西岡 剛 二塁手 大阪桐蔭 右左 180・75 回転軸が全くブレないスイングは力強く、金属バットの反発力に頼った打ち方をしていないのですぐにプロのバッティングに移行できる筈。大きなストライドで魅せる走塁に強いスナップスロー、高レベルで三拍子。
3巡 浅間 敬太 投 手 敬愛学園 左左 177・75 腕の振りが抜群で、とにかく投球フォームが美しい。肘のしなり、膝の送り方、体重移動とフォームにケチをつける要素がほとんどなく、左右の違いがあれど中里(中日)級のセンス。縦のカーブにスライダーのキレ、制球力も◎。
4巡 神田 義英 投 手 川崎製鉄水島 右右 179・72 高校時代からピッチングの斬れ味には定評があった。鋭いスライダーとフォークを駆使してなかなか崩れないしたたかさ。
5巡 鈴木 貴志 投 手 王子製紙 左左 176・73 球持ちの長いMAX143kmのストレートは球速以上に打ちづらい。速い腕の振りから投げ分けるスライダーも強烈な武器。
6巡 金沢 岳 捕 手 矢板中央 右左 178・72 抜群の地肩と柔軟な体捌きを兼ね備えた“動ける捕手”。俊足と振り抜けるヘッドスピードも持ち、外野手転向も一考の価値。
7巡 酒井 泰志 投 手 いすゞ自動車 右右 178・78 147kmの快速球にスライダーで攻める投球が持ち味だったが、社会人で覚えたフォークが意外にキレる。崩れないフォームの安定感◎。
8巡 早坂 圭介 遊撃手 横浜商工 右左 176・63 一言で言って野球センスの塊。軽快なフィールディング、俊足と一つ先の塁を常に窺う積極性、鋭いスイングと高次元で三拍子で高橋慶彦(元広島)を彷彿。
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