DEAD OR BASEBALL!

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Vol.111 2002年ドラフト総括(ダイエー編)
2002年11月28日(木)

 過去4年の成績を見れば、日本一→リーグ優勝→2位→3位。上位安定と言えば聞こえはいいが、実際の感覚はだんだん勝ち切れない消化不良が先行するようになってきた。一言で言えば、右肩下がりのジリ貧状態。

 戦力的なバランスで言えばリーグトップクラスと言われながら、ここ2年は特にシーズンの山場での勝負弱さが目立つような気がする。戦力的に問題はないのだが、親会社のゴタゴタが浮上してきてから、チームの雰囲気にリーグ連覇を果たした時程の活気が薄れつつあるように思えることがある。まさか「勝ち慣れ」ということではないだろうから、空気が緩んでいるとしたら問題は根深いかも。



 投手陣の弱さがこの2年の突き抜けられない最大要因だと思うが、今年はさらに若田部がFAで横浜に移籍し、規定投球回数に到達した先発は田之上ただ1人になる。ラジオも退団し、クローザーのペドラザも抜け、普通の球団なら『大丈夫か?』となるところだが、全くそういう不安を感じさせない布陣が整っているのがダイエー投手陣の非凡なところ。

 星野と田之上を筆頭格にして、山田、杉内、小椋といった本格派投手が控え、怪腕寺原だって周囲の不安をよそに6勝を上げた。本格派の有望株がズラリと顔を揃えた先発陣に今年は大学球界No.1左腕の和田、沖縄産天然豪腕の新垣が入り、ポテンシャルと若さを備えた顔触れは12球団屈指のもの。中継ぎには復調の気配ある篠原を筆頭に、吉田、岡本、渡辺と若干高齢化を感じるが力量的に申し分ない。

 山村、松、田中総といったドラフト上位組の低迷が気にならないと言えば嘘だが、彼等が機能しない中でこれだけの先発陣を揃えられること自体、ダイエーがいかに貪欲なドラフトをしてきたかが分かる。岡本がクローザーに回るとやや中継ぎが手薄になるが、永井、飯島、倉野、水田でカバーは可能。

 溝口、田中をファームに送り、殻を破りきれない小椋やドラフト上位組にプレッシャーを与えることも忘れていない。「乱獲」「金持ちドラフト」などの批判も飛んでくるが、ここまで見事に戦力を構成されると文句を言う気も失せてくるというのが正直なところ。投手陣に関しては、マイナス要因を探せと言う方が難儀する。



 ここ数年ほぼ磐石なオーダーを組んできたダイエー野手陣だが、今期は磐石の主力が故障離脱したことで、逆に控え層との力量差を感じたのも事実。井口と城島が故障で長期戦線離脱し、秋山の引退が現実になったことで、そろそろ若返りの機運が高まり出してもいい頃。こうなると小久保、松中の慢性的な故障も気になり始めてくる。

 城島27歳、井口29歳、柴原29歳、松中30歳、鳥越32歳、小久保32歳だから、まだ危機的状況という年齢構成ではなく、むしろ円熟期。こういう時にこそ次代の備えをしておかないと、今年のように主力の戦線離脱が同時多発的に襲ってきた時に対処不能になる。円熟期にこそ慢心せずに着々と将来性重視の補強を重ねることが、長期政権を築くチームの補強戦略。

 幸いにもダイエーには川崎、吉本、田中瑞、中村、荒金、高橋ら期待の戦力は控えている。この中で川崎に一本立ちの気配があり、長年のアキレス腱だった遊撃の後継候補で一歩抜き出た感がある。

 ただ、冷静に考えてみれば長距離砲の後継が不足していることは気になるところ。吉本がその筆頭だが、足踏みが長く、「ポスト小久保」には程遠い現状。ドラフト1位で獲得した高校生長距離砲が低迷すると、その後のドラフト上位で同じようなタイプの選手に食指を伸ばさなくなるのが、ドラフト戦略の「悪しき伝統」。吉本に対する期待の大きさと言うより、高校生長距離砲の上位指名は吉本で懲りたという雰囲気が、ダイエーのフロントから漂っている気がする。

 城島に向こう10年弱は正捕手安泰の気配があり、城島が抜ければディフェンスに定評ある的場、代打の切り札的存在の坊西がいる。こういう球団が、高校生長距離砲に向かわずに大学No.1捕手の大野に向かう。この戦略はちょっと疑問。今のダイエーはとにかく素質豊かな次代の長距離砲が欲しい。

 九州だけ見渡しても、山本光将(熊本工→巨人5巡目)、千代永大輔(九州学院)、吉村裕基(東福岡→横浜5巡目)、川本竜二(創成館)ら逸材が目白押し。瀬間仲ノルベルト(日章学園→中日7巡目)は、外国人に頼らずにチーム作りができているダイエーが一本釣りするべきだった超目玉。



 ここ数年のダイエーのドラフト戦略は、「とにかくいい選手を獲る」「九州志向」という2点に尽きる。上位では豪腕を駆使してその年のトップクラスの選手を獲り、下位では九州に縁のある素質豊かな選手を片っ端から指名する。九州という豊穣な野球所を存分に生かした手法で、パイプの強さは目線と信念が間違っていなければ強力な武器になるという好例。

 だが、表向きは強力打線で弱い投手陣を支えたここ2〜3年だが、今補強すべきなのは次代の長距離砲のような気がしてならない。これはほとんどの球団に当てはまることではあるのだが、大砲をあまり上位で指名したがらないのが最近のドラフト。「理屈抜きにいい選手を獲る」がダイエーのドラフトなら、吉本に喝を入れる為にも高校生長距離砲の指名があってもよかった気がするのだが……。           



ダイエー
自由 新垣 渚 投 手 九州共立大 右右 188・85 全身故障だらけで、満足に1シーズンを投げたことがないのが不安要素。それでも150kmを投げられるのは素質の証明。まだまだ底を見せていない段階だが、意外にスライダーがキレる。
和田 毅 投 手 早稲田大 左左 179・74 秋季リーグで江川卓の持つ六大学通算奪三振443に挑む。全く打者にボールを見せない卓越した技術に凄み。腕の振りからボールが遅れて出てくる一瞬の間で打者に勝負をさせない、今年No.1左腕。
4巡 溝口 大樹 投 手 戸畑商 左左 177・75 昨夏に西日本短大付を破った左腕が1年で大きく飛躍。天性の肘の柔らかさから繰り出すMAX147kmのストレートはキレがあり、一躍高井(東北)に並ぶ高校生の目玉左腕に台頭。
5巡 大野 隆治 捕 手 日本大 右右 186・90 既に肩の強さと送球のスピードはプロでも上位レベル。大型の体に不釣合いな大人しい打撃は課題になるが、持ってる潜在能力は鍛える価値十二分。
6巡 森本 学 遊撃手 シダックス 右右 175・72 俗に言う三拍子タイプの遊撃手。軽いフットワークで見せる走塁・守備と大学時に首位打者経験のある打。
7巡 田中 直樹 投 手 沖学園 右右 178・72 体の線は細いが、肘の使い方が抜群に上手くよくしなる。全身のバネ抜群で、投げては145km、打てば抜群の長打力。運動能力の高さ◎で、投手か野手か。
8巡 稲嶺 誉 遊撃手 東農大生産学部 右左 170・66 闘志溢れるヘッドスライディングが持ち味。亀山(元阪神)や波留(ロッテ)を彷彿とさせる元気者。
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