DEAD OR BASEBALL!

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Vol.113 2002年ドラフト総括(日本ハム編)
2002年11月30日(土)

 今期首位打者を獲得した小笠原ばかりがクローズアップされるが、力そのものは決して低くないチームだと思う。ビッグバン打線のイメージが残影のようにチラつくが、今の日本ハムは機動力と投手力を押し出すチームに変貌するまでの過渡期にあり、ここをうまく乗り切れば2〜3年後の上位復権は現実的に想像可能。そういうイメージが涌きにくいのは、ここ数年で主力の顔触れがガラリと変わりつつある為で、本社の不祥事によるイメージダウンの為ではないと思う。



 かつての3本柱である岩本、関根、下柳のうち、下柳が阪神へのトレードで球団を去り、岩本と関根は今後も戦力として考えるのが難しくなってきた。しかし安定感ある金村、新人王の正田が規定投球回数に達し左右の両輪を形成し、シールバックも規定投球回数到達で勝ち越し。先発転向1年目のミラバルは前半獅子奮迅の快投を重ね、隼人もローテーション投手として機能。正田22歳の若さが円熟期を迎えつつあるローテーションを若々しく見せるのだから、この構成自体は地味だがなかなかのものがある。

 弱いと見られがちなリリーフも、佐々木の足踏みが気になる程度で悪くない顔触れ。軸が固まらない中で建山と芝草が終盤を締め、井場も3点台後半の防御率の割に被安打と奪三振は圧倒的な数字を残し、来期のクローザー固定は現実的な視野。これに江尻や山口、伊達の参入があれば厚みも出てくる。

 確かに悪くないのだが、落ち付いて見てみれば絶対的な軸がいないことに気付く。1巡目指名では予想を覆し高井の指名から撤退したが、高井レベルの超大物の存在は今の日本ハムに不可欠。金村や隼人はエースとして見るには苦しい存在だが、2〜4番手ぐらいのローテーション投手なら途端に輝いてくる投手。高井がエースとして活躍できる現実的な算段は1〜2年後。その頃はまだ今のローテーションは充分機能できる。鎌倉は完全に将来を睨んだ人材で、武田は恐らく中継ぎのテコ入れ。自由枠を行使しなかったのなら、残った超大物は高井のみ。高井の抽選を外した後でも尾崎には向かえたと思ったのだが。

 金村の故障がちな体質を考えれば、即戦力で先発を任せられる投手の指名が一人ぐらいあってもよかったかも。候補は三東洋(ヤマハ→阪神6巡目)、酒井泰志(いすゞ自動車→ロッテ7巡目)、堤内健(日本大→横浜9巡目)というところ。館山昌平(日本大→ヤクルト3巡目)が上位で獲れたら最高だったのだが。



 小笠原の存在が抜けている野手陣だが、ここ数年でビッグバン打線の様相はガラリと変わり、今は重量打線から機動力野球に転換する端境期。フランクリン、ウィルソン、オバンドー、片岡が抜けたオーダーを眺めると、つくづくビッグバン打線というものは外国人の力に頼ってきた打線。それはそのまま耐用年数の短い打線ということを表し、ここ2年の低迷は外国人に中軸を任せてきたツケが出たもの。田中幸の衰えも考えなければならない以上、小笠原の神通力に“ビッグバン打線”の冠名を委ねたところで看板倒れは免れない。

 捕手(實松)、一塁(小笠原)、二塁(金子)以外のポジションはどこも流動的。内野は田中賢、外野は森本という赤丸の期待株がいるが共に殻を破れず、内野の木元、奈良原、阿久根、古城に爆発力は期待薄。坪井の加入は外野陣に大きな刺激を与えるが、安定感に乏しい井出、上田、石本、クローマーでは誰一人レギュラーがいない状態と言ってもいいぐらい。

 人はいるがポジションが埋まらない状況というのは、チームが端境期にドップリとハマりこんでいる時がほとんど。この中で重点補強ポイントは、極端に若さのない外野とポスト片岡が埋まらない大物三塁手、そして實松以外に頼れる選手のいなくなった捕手と、細かいところで山積している状態。尾崎はもしかしたら外野で使われることがあるかも。

 5巡目より下でバランスよく選手を指名したのは、なかなか巧い指名だと思う。小谷野は守備より打撃に持ち味があるタイプで、パワーが増せば田中幸の後継三塁手として意外に早く出番が回ってくるかも。紺田も今の手薄な外野陣なら充分割って入る余地はある上、スピード感は森本に劣らないレベル。池田は小笠原安泰の一塁手だが時間がかかりそうなタイプで、年齢差11歳ならいいタイミング。鶴岡はオバンドーの後の指名打者候補なのか、それとも捕手強化なのか、ちょっと読めないところ。

 これで高井が獲れていたら……という指名ではある。ややこまごまとした印象はあるが、取り敢えず手当てするべきところに手は打ったかなという感じ。悪くない指名であったが、チーム事情もドラフトも「悪くない」「そこそこ」の段階から脱せないことが心配になる。札幌移転を機に田中賢や森本の本格化が実現しれば、「そこそこ」から脱せそうな気もするが、特にフロントはもっともっと貪欲になってもいい。



日本ハム
1巡 尾崎 匡哉 遊撃手 報徳学園 右右 181・73 総合力抜群、華のある大型ショート。投手も器用にこなせる均整の取れた柔軟な体で、崩れても強い送球を送れる力強さ。甲子園で特大バックスクリーン弾を打った打力に長足の進歩。
3巡 鎌倉 健 投 手 川之江 右右 189・80 今夏甲子園を大いに涌かせた快速大型サイドハンド。内外角に投げ分けるコントロールと出所の見にくさ、ベースの角を切り取るようなスライダーの斬れ味に凄味。
4巡 武田 久 投 手 日本通運 右左 170・68 140km台前半と驚くほどの速さはないが低目のコントロールが抜群で、フォークも交えて低目で出し入れできる安定感。
5巡 小谷野 栄一 二塁手 創価大 右右 177・83 大学選手権であの和田毅(早稲田大→ダイエー自由枠)から4安打を放ち注目を集めた。軸を崩されない抜群のミートセンスが光る。
6巡 紺田 敏正 外野手 国士舘大 右左 183・78 大学2年に投手から外野手に転向と野手経験は浅いが、50m5秒台の快足と肩の強さは東都リーグでも出色の存在だった。3年秋に首位打者を獲得した打力もシュア。
7巡 池田 剛基 一塁手 鵡川 左左 184・90 堂々たる体格から漂う風格は大物スラッガーの色。北海道トップクラスの長打力と馬力はプロでも遜色ないレベルだが、緩急に脆い弱点をどう克服するか。
8巡 鶴岡 慎也 捕 手 三菱重工横浜硬式野球C 右右 175・73 高校時代から強肩で注目されていたが、パンチ力とシュアに捕らえられる打力を生かして社会人では主に指名打者だった。
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