シーズンでは86勝を上げ他球団を寄せ付けない強さを見せつけ、日本シリーズでもシーズン90勝の西武を相手に4戦全勝。原新監督は稀代の名監督と評価され、V9時代に並ぶ圧倒的な戦力は黄金時代の到来を想起させるが、現在の戦力分布を冷静に見てみると、黄金時代どころか持続しない強さのようにも見えてくる。それがV9時代との大きな違いだ。 松井秀喜が抜けたのは、確かに痛いの一言では済まないほどのダメージに違いない。しかし、昨年の高校生重視のドラフトを考えるならば、松井の抜けた穴を転換期にするだけの準備を整えているのだなと思った。そしてその転換期を軌道に乗せる為には、今年のドラフトが持つ意味は決して小さくない。 全体的に高齢化が目立ってきたのが昨今の巨人。特に投手陣は、今年規定投球回数に到達した投手が上原、高橋尚、桑田、工藤と4人揃い万全の布陣だったが、現実的に来期を考えれば工藤40歳、桑田35歳、前田33歳、入来31歳、河原31歳と軒並み30歳台超え。上原と高橋尚も28歳で若手と言える年齢ではなく、真田19歳のみが突出して若いというイビツな年齢構成。 昨年は真田、鴨志田、十川雄、林と素質豊かな高校生投手を片っ端から獲得し、即戦力志向のドラフトから一歩脱した感があったが、まだまだ若さが足りない。今年は木佐貫、久保という大学球界トップクラスの即戦力右腕を2人自由枠で獲得し、一応即効性の若さを取り入れた格好だが、木佐貫も久保も3年すれば中堅選手。磐石の態勢で臨めた年のドラフトだからこそ、高校生投手に向かってよかったんじゃないの?というのが私の本音。 木佐貫と久保は、1年目からバリバリ投げられるだけの完成度と力量を持っている。二人の獲得は絶対に無駄にならないが、昨年と打って変わって高校生投手に見向きもしなかったことには疑問。昨年4人の高校生投手を獲ったからと言ってここで高校生獲得の手綱を緩めれば、数年後にはまた若さを感じない投手編成になる可能性が高い。 条辺や真田が台頭した年数を考えれば、ここにきて巨人のファームは勢いを取り戻しつつある。この好循環を促進するには、やはり高校生投手の獲得が必要だったと思う。 野手に目を向ければ、やはり20歳台の主力は高橋由28歳、阿部24歳、二岡27歳ぐらいで、若手と言えるのは阿部1人。清原、江藤の衰えも顕著。切り込み役の仁志が今年規定打席に届かず、来期32歳の年齢が現実的なネックになってきた。主力の衰えは若手台頭の機運を高め、それが前年までベンチウォーマーだった斉藤、福井、川中、宮崎らの抜擢と台頭の下地になった。原監督は長嶋前監督のお家芸だった空中戦よりも、個々の打者を線で結ぶことに腐心し、その結果が清水の一番固定であり、清原の穴を完全に埋めた斉藤の大活躍。 選手の年齢層が下に向かったことは確かで、こういう機運は間違いなくドラフトに好循環をもたらす。つまり、下位指名で素質豊かな高校生野手を指名して若さを促進する機運の高まりである。長田クラスの遊撃手を4巡目で獲得できたのは、囲い込み戦略によるところも大きいが「いいとこ獲り」のドラフト。5巡目の山本も同様だ。 手当てが必要になっているのは、一塁(清原)、二塁(仁志)、三塁(江藤)、そして松井の抜けた外野の4つ。予想通りと言えるペタジーニの獲得は若手輩出の機運をしぼませる重大要因になるが、そもそも内野には若手と呼べる年代の選手自体がいない。現レギュラーの耐用年数を考えれば、ここで必要なのは高校生野手。その意味で、長田と山本の指名はビンゴと言っていい。長田と二岡が8歳差、高橋由と山本が9歳差というのもいい構成。 ただ、長田クラスの選手が4巡目まで囲われた状況は、球界全体から見たら明かなマイナス。そこは長田自身が考えなければならない問題だが、他球団の上位指名より巨人の4位指名がいいという精神力は、今後徹底的に鍛え直すべき。 下位で捕手を2名獲得したが、向こう10年間は阿部が正捕手を譲らないことを考えれば、二人に求められた役割は阿部の控え。阿部以外の捕手が完全に飛車角落ちの現状を考えれば、二人に求められている役割は決して小さくないということを肝に銘じておいてほしい。チャンスは必ずある筈だ。
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