川崎がFAで中日に移籍した年は優勝、石井一がドジャースに移籍した今年は2位と、毎年のように主力を失いながら上位に留まる反発力は見事。川崎が抜けた年は藤井が最多勝の活躍、石井一が抜けたら石川が新人王と、主力が抜ける度に新たな戦力が台頭してきた。 好意的に見れば崩れない強さをヤクルトを持っているが、主力は段々無理のきかない年齢に差しかかっていることがここ数年の不安材料。今年は主力投手の退団はないものの、ペタジーニが巨人に移籍することは大きな痛手。4番が抜けた途端に他の選手の高齢化が気になるのは、松井の抜けた巨人と同じジレンマだが、その引き金になった主砲が松井の穴埋めとして巨人に移籍したのは何とも皮肉。 現有戦力の上に戦力を積んできた訳ではないだけに、悪いメンバーではないもののもう一つ選手層の薄さに悩まされてきたのが今年のヤクルトだった。投手陣で見れば、石井一の穴を石川が埋めたと言っても、それはマイナスを食い止めただけで、プラスを積む結果を出すにはもう何枚か戦力の上積みが欲しい。 とにかく先発投手陣が手薄。ホッジス、藤井、石川まで名前が出ても、あとは一年働けるだけの地力に乏しい。若さに期待するなら今年台頭した坂元だが、大事なところでポカが多いタイプで、まだ全幅の信頼は寄せられない。鎌田は一年投げる体力に乏しく、戎は故障明け。前田や山部にこれ以上の働きを求めるのは酷。 そうなれば石井や五十嵐を前に持っていきたくなるが、今年のヤクルトはこの2人を絶対的な中継ぎエースにして中盤を固め、勝ち星を拾ってきた。17勝をあげたホッジスが完投ゼロという数字を見れば、いかに石井・五十嵐→高津のパターンにヤクルト先発陣が頼ってきたか分かる。裏を返せば、このパターンを手放すことはリスクの方が大きくなるということ。先発陣をなんとかやりくりして5回までゲームを作り、後は石井・五十嵐に頼るというパターンを、若松監督は手放したくない筈だ。高津の衰えを考えれば、石井・五十嵐のリリーフ固定はますます譲れないところ。 そうなれば、即戦力投手の獲得は必須事項。高校No.1左腕の高井を1巡目指名し、近鉄との競合で交渉権を獲得したが、高井は高校生と言えど即戦力扱いしていい大器。3順目の館山も故障さえなければ自由枠クラスだったバリバリの即戦力投手で、吉川、小森という技巧派即戦力も確保。坂元や五十嵐、岩村など、仕上がり早く選手を輩出するファームには泉、片山という高校生の豪腕を送り込み、単純に良い指名をしたという印象。ここ数年スマートな印象のあったヤクルトのドラフトだが、今年は随分と貪欲に投手を獲得した印象がある。 ペタジーニの退団は、前述のようにラミレス29歳、岩村24歳以外に20歳台のレギュラーがいない年齢層の高さを浮き彫りにする。今年は古田、ペタジーニ、岩村、稲葉、宮本、ラミレスの6人が規定打席に達し、これは巨人と広島に並んでリーグトップ。安定感はあるが、2〜3年後を睨むと非常に不安になる様相。 とにかく内外野共に若さがなくなった。若手に目を向けても、三木、野口、畠山、志田、内田といるが、三木や志田は突き抜けるだけの爆発力に乏しく、畠山や内田はまだ時間がかかりそう。それでも若手を抜擢しなければならないチーム事情が、もしかしたら思いもよらぬ成長を促すかもしれない。そういう期待感はあるが、手当てが急務という現実は動かない。絶対的な数が足りなければ、ファームの若手の爆発を促すことは難しいからだ。 補強ポイントは二遊間と外野で、特に二塁は慢性的な人材不足から即戦力を欲する状態。ペタジーニの抜けた一塁には畠山を抜擢できるが、特に外野はそもそもの人数自体が少ない。25歳以下の外野手は、内田(19歳)、ユウイチ(23歳)、志田(24歳)のみ。久保田は即戦力の意向に沿った獲得だが、人材自体がいないのなら1名のみの外野手指名は少ない。内野手も、大原は守備力を考えれば三塁で使いたい選手。三塁には24歳の岩村が安泰。どうするつもりだろう。 鞘師智也(東海大→広島4巡目)や竹原直隆(城西大)といった右打ちの大物外野手には食い込みたかった。投手獲得の貪欲さに比べれば、やや淡白な感が否めない野手獲得だったように思う。
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