スポーツ新聞の野球記事というものは、大体は好意的に書いているもの。系列の新聞なら尚更で、報知新聞なら読売の、中日新聞なら中日の、デイリースポーツなら阪神のキャンプリポートは、殆どが希望に満ちた記事で埋まっている。実際に(映像でも)見ればその感覚とは大いにズレがあることが明白で、その意味ではスポーツ新聞とは、野球に関して言えば正確な情報収集源には成り得ないのかも知れない。 戦力診断もラストスパート、第11回は熱狂的応援団で有名な千葉ロッテ編。 <投手分析> 先発・・・黒木知、ミンチー、小野、渡辺俊、加藤、薮田、シコースキー、小林宏 右中継ぎ・・・清水直、吉田、和田、長崎、戸部、黒木純 左中継ぎ・・・藤田、川井 抑え・・・小林雅 先発の軸はしっかりしているだけに、やり繰りによっては充分に強力な投手陣である。中継ぎに心許なさはあるが、ゲームを作れない程に弱いメンバーでも無い。 先発3本柱は黒木、ミンチー、小野になる。黒木は絶対的なエースだが、ここ2年は故障で1年間フル回転していない。体調さえ万全なら何も心配は無く、チームの精神的支柱でもある彼の活躍はチームの浮上には絶対に欠かせない。ミンチーは昨年度の最優秀防御率投手。年齢による衰えが若干不安になってきたが、長身から繰り出される落差の大きいカーブとカッターは健在で、中4日で回せるのもベンチにとっては大きい存在。気がつけば抑えているというタイプの選手で、今年もある程度は計算出来る。小野もノラリクラリと抑えるタイプ。2年前にシュートをマスターしてから大化けし、スライダーを交えながらベースを広く使う投球術は破綻が少ない。 3本柱に続くのは超アンダーハンドの渡辺俊と左腕の加藤。渡辺俊は地面に手が擦るんではないかという程の、本物のアンダーハンドピッチャー。球速は無いが、地面から浮き上がってくるようなストレートのキレ味は本物で、昨年はダイエーの強力打線相手に完封勝利も上げている。加藤は昨年9勝を上げて2年目のシーズン。右打者の懐をつくクロスファイヤーに威力があり、スライダーを交えて三振を取りまくるピッチングは魅力充分。共に2年目の飛躍が期待出来る素材だ。その後の谷間のピッチャーに不安は多いが、ローテーションはしっかりしているだけにどうにかやり繰り出来るだろう。 中継ぎは左腕が若干少ないがコマは豊富でそこそこ信頼していい陣容。勤続疲労が出てきた藤田は心配だが、安定感ある吉田と和田を筆頭に、速球派の長崎と戸部、スライダー命の川井、日本ハムでは抑えも経験した豪腕・黒木純もいて面白いメンバー。注目は清水直で、セットアッパーならかなり信頼できる。速球にキレと威力があり、勢い一本で通用するセットアッパーが彼の適任。 抑えは小林雅で何も問題無かろう。後半はアップアップになり防御率は4・33まで落としたが、5月25日〜6月20日にかけて達成した11試合連続セーブの実力は本物で、150キロを越えるストレートとベースを鋭く切り取るスライダーは今年も抑えとして猛威を振るう筈だ。 <野手診断> 1(中)サブロー(喜多) 2(遊)小坂 3(一)福浦 4(指)ボーリック 5(右)メイ 6(三)初芝 7(左)大塚(佐藤) 8(捕)清水将(橋本) 9(二)酒井 控え 捕手・・・里崎、福澤 内野手・・・渡辺正、澤井、堀、天野、信原 外野手・・・立川、大村、諸積、平井 意外と言っては失礼だが、かなり中軸はしっかりしている。それでも昨年の得点力が低かったのは、ひとえに1、2番の出塁率が低かったせいだ。そこを改善出来れば、得点力は飛躍的に増す可能性がある。 と言っても、1、2番は昨年と敢えて変えなかった。サブローは昨年の開花を予想したものの伸び悩み、ベンチの期待を大いに裏切ってしまった。しかし持っている身体能力は高く、特にその俊足は小坂にも負けないだけのものがある。打撃がもうワンランク上に行けば、うってつけのリードオフマンになれる。もしサブローの打撃がにっちもさっちもいかなければ、ドラフト1順目指名の喜多を使うのも面白い。しかし、守備力を考えればサブローのセンターは捨て難い。小坂はもっと走っていい筈。32盗塁は小坂の走力を考えれば不満で、.262の打率ももう一声という感じ。塁上を縦横に駆け巡ってこそ小坂で、その為にはやはり.280は打ってくれないと打線が生きない。 昨年リーディングヒッターの福浦から続くクリーンナップはバランスが取れている。ボーリックは昨年も31本塁打に101打点と主砲の役割はきっちりこなしている。107個の四球はリーグトップで、それだけ選球眼も良く、.279という数字以上に相手投手に恐れられている打者。メイも31本塁打に91打点とポイントゲッターとしては上々。飛ばすだけの打者だと思っていたが思ったよりもバッティングがシュアで、無駄なクセも無いので、今年も主砲として計算していい。外野守備も心配無い。 初芝はそろそろ底が見えてきたか。しかしその長打力はやはり捨て難い。代打というタイプでも無いので、下位打線の一発屋として存在感を示してほしい。7番レフトには期待を込めて大塚。足も意外に早くパンチ力もあるので、下位打線のトップバッター的な役割を期待したい。捕手は恐らく併用。強肩の清水将か、バッティングの橋本か。セカンドには守備力を考えて酒井。小坂との二遊間はソツが無い。 控えには期待の若手の渡辺正・澤井・天野・信原や、ベテランの堀・諸積・平井がいて層は厚い。主軸がリタイヤしても、一応の手当ては可能だ。 注目はやはりサブローと喜多のリードオフマン争い。シュアな打撃なら喜多だが、器の大きさや守備力・走力ならサブローになる。山本監督の起用法に注目だ。 <総合分析> 投手陣は黒木知さえ万全なら充分に戦える。先発3本柱の力量は、西武のそれにもヒケをとっていない。問題はやはり得点力アップ。そこに尽きる。それにはやはり1、2番がどれだけ塁上を賑わせることが出来るかどうかにかかっている。 主軸が外国人頼みなのは少しアキレス腱だが、内野には期待の若手が豊富に揃っているので、彼等が一皮剥ければかなりチームにスケールは出る。特に渡辺正・澤井のドラフト1位コンビは今後のチームの命運がかかっている。そろそろ結果がほしいところだ。
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