月の輪通信 日々の想い
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暑い日が続く。 仙台での展示会の搬入日が近い。 相変わらず、窯も乾燥機もフル回転。 工房は、仕事場だけでなく、荷造り場も階段も窯の熱気を含んで、ジワジワと熱い。 年寄り達の居室とPCのある事務所とお客様を迎える玄関の展示室は、クーラーで強制冷却。 あちこちパタパタと移動しながら仕事をしていると、だんだん体が温度変化に追いつかなくなってくる。 おまけに昨夜、自宅の押入れで面倒な探し物をしたものだから、例によって埃のアレルギーが出て朝から鼻水くしゃみが留まらない。 どうにも冴えない1日。 それでも、怒涛のように荷造り仕事。 嗚呼!
面倒な探し物というのは、他でもない。 アユコとアプコ、二人分の浴衣。 今夜、父さんが二人を京都の祇園祭に連れて行くという。 去年特訓して、一人で浴衣が着られるようになったアユコと、兵児帯ではない「オトナの結び帯」が嬉しくてたまらないアプコ。 二人分の浴衣にアイロンを当て、小物類揃えて、夕刻を待つ。
毎年毎年、忙しくて、「どうしようかなぁ」と首をひねりながらも、必ず祇園祭に出かけていく父さん。 去年まではアユコ一人だったが、今年はアプコも京都デビュー。 両手に花の賑わいだ。 「仕事を兼ねて」とは言いながら、きりりと浴衣を着付けた娘らを連れて、京都の夜をそぞろ歩く事が、嬉しいのに違いない。 仕事のときとは違う、明らかに緩んだ笑顔の父さんが嬉しい。 「はいはい、せいぜい楽しんでいらっしゃい。」 ワクワクドキドキの娘らとともに、軽自動車に詰め込んで、駅へと向かう。
アユコ、この17日で17歳。 花開くように娘らしくなり、大人びた物言いが多くなった。 あと何年、父さんと行く祇園祭を「嬉しい」といってくれるのだろう。 「今年はちょっと」と別の男性のエスコートで出かけていくようになるのは、いつなんだろう。 カラコロとなれぬ下駄の音を気にしながら、小走りに父さんの背を追う姿はまだまだ少女の初々しさ。 もう少し、時間はあると、思いたい。
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