月の輪通信 日々の想い
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日記「月の輪通信 日々の想い」は、現在のまま http://www.enpitu.ne.jp/usr5/56450/diary.html で、続けていきます。
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熱がでた。 先週の金曜日のこと。 一晩、寝たら下がるだろうと、グダグダゴロゴロしていたら、結局三日三晩、39度の熱の海を漂っていた。 夏風邪だそうである。 膀胱炎でも腎盂炎でも新型インフルエンザでもなかったらしい。
講習や部活で外出の多いアユコやゲンに替わって、アプコが実によく働いてくれた。 学校のサマースクールやプール通いの合間に、洗濯物を干し、みんなのお昼ご飯を用意し、米を研ぎ、皿を洗った。 ドロドロと眠ってばかりの母のところへやってきては、「お水、いる?」「アイス、食べる?」と、世話を焼く。 買い物に行けば、「あっちのお店の方が安かった。」としっかり値段もチェック。 これまで一人では取ったことのない外からの電話にも、きちんと応対できた。 挙句の果てには、疲れて帰ってきた父さんの靴下を脱がして洗濯機に入れる徹底した主婦ぶり。 天晴れであった。
いつまでたっても「末っ子姫」と呼ばれ、しっかり者のアユコの補佐役という居心地のいい役割に甘んじてきたアプコ。 いつの間にか一人前に、母の不在を補うことが出来るようになっていた。 子どもの成長というのは、思いがけなく速い。 有難い事だなぁと思う。
さて、 「自然治癒力」というものを盲目的に信奉している私は、少々発熱したくらいでは、なかなか医者にかからない。 寝て、寝て、寝倒して、次に目覚めればきっと熱は下がっているはずと、悶々と熱と闘う。 心優しい父さんは、そんな私の強情を知っているから、「医者、行ったほうがいいよ。」と何度も言うものの、強引に私を医者に連れて行くことは出来ないでいる。 子ども達ももちろん、心配はしているものの、しゃあないなあと頑固な病人を呆れて見守る。 実家の父母には、「アンタもエエ歳なんやし、ちゃん診てもらわなあかんで」と叱られた。それでも、愚かモンの娘は「ま、熱も下がったことだし、今度はちゃんと診て貰うかも・・・」と、あいまいに頭を掻く。 たまに寝込むことがあっても、数年に一度。 大きな怪我も持病もなく、頑強な体。 そんな風にして、私は40ン年、この肉体と付き合ってきた。
今回の母の霍乱の知らせを聞いて、京都のオニイが二晩続きで電話をかけてきたらしい。 こちらからのメールの返事すら気まぐれにしか帰ってこないオニイにしては殊勝なこと。 熱の下がった朝に「今朝からほぼ復活。ご心配かけました。」と短いメールを打ったら、こんな返事が返ってきた。
「調子悪くなったらすぐ病院行ってくれ みんな心配しとる 余り肝冷やさせんといて欲しい」
お、怒られてもうた! オニイに! 息子に!
ちょっとビックリして、 ちょっと嬉しかった。
多分、将来、私が年をとって、強情で頑固ないじわるばあさんになったとき、 「こら、たまには若いモンの言うことに従え」 と、私を叱ることが出来るのは、心優しい父さんではなく、ぶっきらぼうで理屈屋のオニイなんだろうなぁと思う。 多分、アイツに怒られるのが、年老いた私には一番こたえるに違いない。 悔しいけれど、そんな気がする。
最終的には、オニイに叱られたからというわけではなく、近所の医者にかかった。 その診断の結果が、心配していた膀胱炎でも腎盂炎でもなく、ましてや新型インフルエンザでもなく、ただの夏風邪だったいう、なんの面白いオチもない結末。 「ほら、みてみ、なんともなかったやん。」 と、得意気に「自然治癒力」を鼻先にぶら下げて、快復をアピールする愚か者が一名。
馬鹿も風邪を引くらしい。
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