月の輪通信 日々の想い
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2008年02月20日(水) 暖かい手

深夜、突然に目覚めた。
嫌な夢を見たような気もするけど、思い出せない。
息詰まるような不安な思いに駆られて、眠れなくなった。

傍らには、早朝の窯詰めに備えて仮眠をとる父さんの規則正しい寝息。
明日は和歌山の展示会の搬入。
工房では、ぎりぎり滑り込みで持ち込む作品をまだ焼いている。
窯は夜昼問わず、フル回転。
その合間を縫って、父さんは家で短時間の仮眠を取る。
分刻みのタイマーを仕掛けて、目覚めればすぐに工房へ戻っていく。
その繰り返し。

何が苦しいというわけでもない。
それなのに時々熱病のように湧いてくる漠然とした不安。
黒く圧し掛かる想いを一人では抱えかねて、眠っている父さんの側に添う。
静かな寝息を聴きながら、胸の上に置かれた父さんの手にそっと触れてみた。
眠っているはずの父さんの手がゆっくりと動いて、遠慮がちに触れた私の手を暖かく包んだ。
「しまった、起こしてしまったか」とも思ったけれど、規則正しい寝息のリズムはそのままで目覚めたような気配はない。

疲れ果てて熟睡しているときでさえ、私はこの人に守られているのだな。
眠っている父さんの暖かな手を通して、私の中に静かな力が満ちてくる。
怯むことはない。
この人がそばに居る限り、多分明日も大丈夫。
満たされた思いで父さんの寝息の数を数えながら、いつの間にか私も眠りに落ちた。

それだけのお話。


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