月の輪通信 日々の想い
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アユコとアプコを車にのせて地域の文化祭へ。 アプコは小学校の合同制作の作品を、アユコはクラブの華道の先生の作品を見に。
華展の一角で、子どもたちにいけばな体験をさせてくれるコーナーがあって、アプコは毎年それを楽しみに出かけている。近所のいろんな流派の華道教室の先生方(ほとんどがかなり高齢)が、一人ずつついてフラワーアレンジの真似事をさせてくださる。
今日、最初にアプコについてくださった先生は、たまたまその中では一番偉い先生だったらしい。途中からそばにいた別のおばあさん先生を呼びつけて、「この子はあなたが見てあげなさい」と交代を命じられた。 おばあさん先生は恐縮して「私なんかより先生が見て差し上げたほうが・・・」と言われたのだけれど、偉い先生は「私は顧問ですから、やりません」と言い放って、どこかへ行ってしまわれた。 そのくせ、おばあさん先生がアプコに教え始めると戻ってきて、「茎は斜めに切っておいてあげなさい」とか、「あなたが活けるんじゃなくて、子どもさんにやらせてあげなければ」とか、横からいちいち茶々を入れる。 そのたび、おばあさん先生が縮み上がって謝っておられるのが痛々しかった。
横で見ていたアユコ。 「あの先生、こわ。」とそっと耳打ち。 デモね、お茶やお花のお教室では、ああいう物言いをする人も結構居るよ。長幼の序とか、師弟関係の上下とか、そういうことをとても重要視する世界だからね。 」 「お茶やお花は好きだけど、そういうのは嫌だな」 というアユコ。
その後、ゲンを迎えに剣道の道場へ ちょうど稽古が終わって、ゲンは先生方に順番に挨拶に回っているところだった。 アユコはゲンの道場での稽古姿を見るのは久しぶり。 体格のいい大人の剣士たちに混じって、くるくると独楽鼠のように走り回っているゲンの姿を目で追う。
「見てごらん。剣道にも、段位の高い先生とか年長の先生とか、暗黙の序列があって、ご挨拶するにも手合わせを願い出るにも、ちゃんと決まりごとがあるんだよ。 ゲンは大人稽古では、入りたてのペーペーだから、あちこち雑用に走り回って、たくさんお辞儀をして大変だけど、でもある意味そういう上下関係を重んじることで道場内の秩序は守られていくんだろうねぇ。」 アユコにそんなことを話した。 「ふうん」と頷くアユコ。 あちこちにぺこぺこ頭を下げて回る剣道着姿のゲンを見て、何か思うところがあったようだ。
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