月の輪通信 日々の想い
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2007年11月03日(土) 火事

数日前、義母、入院。
骨粗しょう症による骨折。
工房仕事も立て込んでいて、父さんも義兄も不眠不休の毎日。
老人宅の家事や介護に、義母の入院先への面会の仕事も増え、毎日ギリギリいっぱいの日々。

朝、オニイやゲンはそれぞれ剣道の稽古。
車でゲンを道場まで送って、とんぼ返りでデイサービスに出るひいばあちゃんの身支度の手伝い。
たまたま地域の公園清掃の時間が重なっていて、そちらのほうはアユコとアプコが母に代わって出動してくれた。
頼りになる娘たち。

公園清掃のときにアユコが大人たちの話を小耳に挟んで帰ってきた。
数日前、同じ校区の古い神社で火災があったようだ。そういえば珍しく遠くでサイレンがなり続けていた夜があった。

この神社は校区のはずれの山の中にある古い神社で、ゲンが獅子舞を務める若宮神社もこの神社の宮司さんの管轄内。宮司さんちの長男はアユコと同級生だ。
宮司の奥さんは、子どもたちの小中学校への登下校を毎日車で送り迎えしておられる。「山奥住まい」同士のよしみで、しょっちゅう「私たち主婦は、誰かの送り迎えばかりで人生の時間を費やしていくのね」と愚痴を言い合って笑う仲。
舅姑を抱え、跡継ぎとなる息子たちを育て、伝統を継承する夫の仕事を支えて、町から離れた不便な生活環境を笑って楽しむ。そんな自分とよく境遇に、お互いなんとなく親密な気持ちをもってお付き合いしてきた。

火事は社務所を全焼したが、住まいやご神体などはなんとか無事だったとか。うちの子どもたちがお宮参りした本殿は、焼け残ったのだろうか。
うわさでは、いつも焚いていたお灯明のろうそくの火が原因らしいという。古くから代々お守りしてきた伝統ある社殿を、自分たちの不注意で焼失させてしまった宮司さんたち御家族やご高齢のお母様の心中の痛みはどれほどのものだろう。

そういえば我が家だって、工房の2階は3人の老人たちの生活の場として大方「養老院」状態だけれど、もしも何かの不注意で火災でも起こったとしたら、命の心配はもとより、住まいや仕事場とともに、窯元としての歴史や信用も一瞬に失ってしまうことになる。
昔から「陶器屋は、火事を出したら終わり」といわれるそうだ。多分花火職人や鍛冶屋など、火を扱う仕事場はどこでもそんなふうに言われてきているのだろう。
他人事ではない。気を引き締めてあたらなければと思う。

アユコと同級生の長男君は、小学校の卒業文集で「将来宮司の勉強をして、父の後を継ぐ」と立派に宣言したしっかり者。これから、お父さんと一緒に社殿の復興という大きな重責を担っていくのだろうか。
「おかあさん、大丈夫やろうか」と同級生を気遣うアユコに、応えてやるすべがない。
一日も早い御復興をお祈りする。


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