月の輪通信 日々の想い
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2007年09月13日(木) 役割

夕方、工房での仕事を終えてエプロンをはずす。
釉薬で汚れた手をざぶざぶと肘まで洗う。
今日仕上げた仕事は5板分。
ずらりと並べた作品を乾燥庫にしまう。
「ああ、おなかすいた。もう5時やね」と熱心に絵付けをしている父さんの背中に声をかける。

今日は一日、父さんもずっと座り詰めで作業をしていた。
襲名に向けての作品作りが山積みで、毎日追われるように土に向かう。
昼間は電話や来客など制作以外の雑用が結構多くて、今日のように丸一日土を触っていられる日があると、父さんはそれだけでほっとしたように延々と続く制作の仕事にのめりこむ。
今日も夜遅くまで仕事を続けるつもりだろう。

夕方5時には作業を終えて、先にうちへ帰れる「パート職人」のあたしは幸せだ。
一休みして、子どもらと一緒に虫養いのおやつを食べて・・・。ちょっと気楽な一休みが待っている。
「悪いねぇ、父さん、先に帰るよ。まだまだ、仕事する?」
絵付け仕事に熱中する父さんは、左手に作品、右手に絵筆を持ったまま、肘だけでバイバイと手を振って、返事をする。

「父さんの仕事はエンドレスだねぇ。エライエライ。私にはとてもとても勤まらない」
とからかうと、
「いやぁ、それほどでも・・・」と父さんは笑う。
「それよりも、毎日毎日何年も、『今日は何を作ろうか』って、晩御飯の献立を考えて料理する主婦の仕事のほうが、エンドレスだと思うけど。
僕にはとてもとても勤まらない。」
「あら、そう?じゃあ。ほめて、ほめて。」
「ああ、エライエライ」

ありがとう、父さん。
毎日毎日、寝ずに仕事をしてくたびれて、それでも主婦の当たり前のルーティンを「エライエライ」と褒めてくれる。
ゆるゆると嬉しい気持ちのままうちへ帰り、いつもよりも力を込めて夕飯の米を研ぐ。


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