月の輪通信 日々の想い
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2007年06月17日(日) 政治家

これもゲンが剣道へ向かう車の中で話してくれたこと。

一年生の生徒会役員の選挙が行われたらしい。
ゲンはクラスの別の役職をもらっているので立候補はしなかったが、小学校からの友人のA君が立候補しそうな雰囲気だったのだという。
ところが、クラスのなかで発言権の大きいB君が、何故だか「Aには票を入れるな」とあちこちにふれまわったせいで、A君は立候補を断念したらしい。
替わりに押し上げられたのは、どちらかというと大人しくて人前に立つのも苦手そうなC君。しどろもどろの候補者演説の末、C君が役員に当選したのだという。

「それって、イジメとかそういうんじゃないの?」
と、訊いてみたら、
「そうかも知れんけど、実質はどうなんか僕にはわからん。」
という。
A君が立候補を断念したのも、C君が立候補したのも、最終的には本人の意思。B君がどんな発言をしていようと、2人が自分の意志を通す余地はあったわけで、必ずしもB君の発言が立候補の成否を動かしたわけではない。
「で、そういうことがあったってこと、担任の先生は知ってるの?」
「いや、多分知らないと思うよ。でも、生徒会は『自治』だからね、先生に訴えたところでどうにもならないと思うよ」
ほう、大人の発言だねぇ。

中学校の生徒会選挙は、まだまだ人気投票とかお祭騒ぎとかの空気があって、チョコチョコとこういう裏工作やら策謀やらが見え隠れすることもあって、オニイもアユコも一度は苦汁を飲まされた経験がある。
「生徒会やってると、入試のときの内申点に有利らしい」という噂も子ども達の中には流れていて、3年生になって急に意外な子が立候補の手を挙げたりすることもあるようだ。
こういう幼い「選挙ごっこ」の中から、良くも悪くも子ども達は民主主義のシステムを学んでいくのだろう。

今回私が意外に感じたのは、子ども達の選挙にそういう裏工作が存在しているということではなくて、普段のほほんと一人で自分の好きなことだけに没頭しているように見えるゲンが、クラスの裏側で行われている策謀や力関係をそこそこ把握していて、彼なりの政治観を持って見守っているのだという事実。
中学生になって、ゲンはいきなりクラスの代議員の役職に手を挙げた。
学活の話し合いを取り仕切ったり、学年で行う行事の企画や運営を行ったり結構積極的に働いているらしい。
小学校ではそういう人前にたつ役とは無縁で過ごしたゲンだけにそのこと自体も私には唐突な感じを受けたのだけれど、彼は彼なりに自分の身の回りの状況を把握して、微妙な人間関係のなかにしっかりと自分の立ち位置や姿勢を確立していっているということなのだろう。
あいも変わらずメダカの水槽を眺めたりクワガタ取りのシーズン到来に胸躍らせたりする野生児ゲンが、意外な政治家として育ちつつあることがちょっと面白くもあり、頼もしくも感じた。

「ところでさ」
選挙の話題に飽きたゲンが稽古後のおにぎりを頬張りながら、母に言う。
「稽古のあとのおにぎりには、やっぱり梅干しがいいね。」
政治家ゲンの笑顔はまだまだ幼い。


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