月の輪通信 日々の想い
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2007年04月21日(土) こいのぼり

久しぶりの休日。うららかな好天気。
朝から、「そうだ!こいのぼりを出さなくちゃ!」と言うことになって、父さんとゲンが工房の庭で作業を始めた。

金属のパイプを地面に打ち込み、よいこらしょと支柱を立てる。
オニイが生まれたとき、「鎧兜はいらないから、とにかく大きなこいのぼりが欲しい」と実家の父母に買ってもらったこいのぼり。
ずいぶん色あせて、昔はキラキラと輝いていた矢車の飾りもすっかり赤錆色になってしまったけれど、今年も上げる。

はじめてこいのぼりをあげたとき、ハンマーを振り上げて支柱の杭を打ち込んだのは義兄と父さんだった。支柱を立てるときには、そのときにはまだ腰も曲がっていなかった義父も加わってえいやっと持ち上げた。
真新しいベビーカーにオニイを乗せてキラキラ輝く矢車を見上げる私は、ヒラヒラのエプロンをつけた初々しい新米ママだった。
真鯉のお腹に輝かしく染めこまれた家紋を指差して、「立派な鯉が上がった」と、ひいばあちゃんが手を叩いて喜んでくださった。

今日、ハンマーを振るう父さんや義兄の労働を気遣って、ゲンが始めてハンマーを握った。
アプコが父さんたちの間をちょろちょろ走り回って、工具を手渡したり小さなねじを集めたりして、忙しく立ち働いている。
支柱を持ち上げる役には、ゲンとすっかりくたびれたおかあちゃんになった私が加わって、セーノで持ち上げる。
義母がひいばあちゃんの手を引いて、作業の見える2回の窓に導いた。ほとんど耳が聞こえなくなったひいばあちゃんに、身振り手振りでこいのぼりを指差す。

庭の樹木が大きくなって、せっかくこいのぼりを上げても鯉がゆうゆうと泳げる空は小さくなった。吹流しや鯉の尻尾が木の枝に引っかかったり、支えに張ったロープに絡まったりして、下ろすのに苦労することも多くなった。
子どもたちも大きくなって、「もう今年で終わりかな」といいつつ、末っ子アプコがもうちょっと大きくなるまでは・・・と頑張ってこいのぼりを上げる。
子供たちのためというよりも、年老いた義父母やひいばあちゃんが「やぁ、今年もこいのぼりがあがったよ。」と喜ぶ顔を見るために。

いつも、毎日のこいのぼりの上げ下ろしを手伝ってくださっていた義父は、数日前、家の中で転倒して骨折、入院。
要手術の事態となった。
82歳の高齢のため、術後の回復や歩行機能の維持に心配が残る。
子どもたちは大きくなり、年寄りの老いは進む。
若い樹木のみずみずしい成長と、年を経て色褪せていく鯉のぼりの対比に、しばし物思う春の空である。




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