月の輪通信 日々の想い
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オニイ、試験初日。 アユコ、試験2日目。
午前中、工房で荷造り仕事をしていたら、試験を終えて帰ってきたアユコの姿がチラッと見えた。自転車を押して、誰かと一緒に歩いている。 あれ?オニイと一緒に帰ってきたのかな?と首をひねっていたら、友達と一緒に帰ってきたらしい。 「おかあさん、仕事場のコピー、借りていいかな?」 友達に試験にいるプリントをコピーしてあげるのだという。
一緒に帰ってきたHちゃん、去年同じクラスだったのだけれど、今年は不登校気味で、なかなか学校へ出て来れなかった。 アユコはHちゃんのことをとても気にしていて、休み中の授業のノートを家まで届けたり、「学校、おいでよ」と電話をかけたりしていたらしい。 幸い、今回の試験にはHちゃんもなんとか出席できたようで、まずは一安心。 「駅まで送ってくるよ」と再び自転車を押して出かけていくアユコの表情も明るかった。
夜、オニイが心配そうな顔でやってきた。 「今、友達から電話あったんだけど、なんか大変なことになってると言ってるんだ。」 何が大変なのかは言わないのだという。 中学のときの友達。別々の高校に進み、時々連絡を取り合っていたようだけれど。昨年末には、どうやら成績不振だか出席不足だかで留年の危機にあるときいて、オニイはえらく心配していた。 その友達から突然かかって来た不審な電話。ちょうど学年末試験の時期だけに、もしかしたらいよいよ留年決定かとオニイもいたたまれない想いでいたようだ。 結局、「大変なこと」の内容は不明で、どうやらオフザケの電話だったらしいのだけれど、「ハラハラして損したよ」と笑うオニイの顔には、まだ、心配の陰が残っている。 「どうすんだろうなぁ。あいつ・・・。」 自分自身は部活や勉強にと楽しんで高校生活を送っているだけに、どうしても気になる友達の窮状。心配な気持ちがなかなか相手に伝わらないもどかしさが、やりきれないようだ。
友達の心配ができるということは、自分自身の学校生活がそこそこ充実しているということか。 学年末試験をめぐって、たまたまオニイとアユコに重なった友達の問題。 その明暗をただただ見守るしかない母であった。
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