月の輪通信 日々の想い
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午後から工房で仕事。 昨日やり残していた釉薬掛け、CMC作り、洗い物、黒無鉛釉の調合などなど。 新しい釉薬をあわせるたび、父さんは細長い端紙に計量する釉薬の量をメモして渡してくれる。私は作業が終わると、そのメモを仕事場用の大判の手帳にはさんで保管している。 もう、かなりの種類の釉薬の調合を経験したから、メモの数も増えた。 ちゃんとまとめれば、ちょっとした釉薬帖ができる数になったはずだ。 釉薬の調合比は一応門外不出の企業秘密。だから調合の仕事は窯元の主婦の仕事で、家族以外の者にはさせないことになっていたらしい。 ペラペラの端紙のメモは、いわば機密文書のようなものなのかもしれない。
「もし、父さんと別れて出て行くようなことがあったら、私はこれを持って息子を一人もらって連れて出て行こうかな」と笑う。 「釉薬だけ作れたって、うちのやきものを他で作る事なんかできないよ。」と父さんも笑う。 釉薬や窯が揃っていても、作る人の技術や経験がなければ作品は出来ない。 代を継いで仕事をしていくということは、家族がその技術や経験を受け継いでいくということ。一緒じゃなきゃ駄目なんだ。
夕飯はキムチ鍋。 今までうちではアプコが小さかったので、辛いお鍋は控えていたのだけれど、「私も辛いの、食べてみた〜い」と言うので、今日がアプコ、キムチ鍋デビュー。 辛い辛いと大騒ぎしながら、アプコが一番最後までお鍋を突付いていた。 ちびっ子アプコもちょっと「大きい人」の仲間入りか。
で、辛いお鍋のあとは甘いデザート。 生協で買ってあった「特盛アイス」という、カップ麺の丼のような入れ物に入った大盛りアイス。これにスプーンを一本だけ添えて、家族みんなが交代にグルグル隣へ送りながら一口ずつ食べる。 「あ、こぼした!」とか、「一口なのに、多すぎ!ずるい!」とか、大騒ぎ。たった一個のアイスでまぁ、賑やかなこと。
「これやってると、うちの家族ってやっぱり仲がいいんだなぁって、なんとなく思っちゃうよ」 とアユコ。 ホントにね、楽しいね。 アユコもそういう嬉しさ、わかるようになったんだね。 これもちょっと、大人の仲間入り。
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